「お風呂あがりましたー」 「丁度いいわね、こっちも用意が出来たわよ。すぐに食べられるかしら?」 「はい!」 お風呂から上がり、勝手に借りたドライヤーを敢えて使って髪を乾かしてみた。お風呂も、着替えも、ドライヤーも……ボクみたいな存在には全て不要なのだが、“人の真似”をするのはちょっと楽しい。魔力がほぼ枯渇していて何をするにもしんどいので、文明の利器に頼るのは何かと都合も良かった。「うん、スッキリしたわね」 ニコニコと笑いながら、華さんがボクの頭を優しく撫でてくれる。温かな彼女の手がとても気持ちいい。彼女の長い指と爪が微かに角にぶつかり、ちょっとくすぐったい。尻尾ほどではないが、角も触られると色々感じてしまうため、軽く愛撫されているような気持ちになってくる。(あぁ、ホントこのまま僕と結婚して頂きたい!) でも、そう言ってしまわないよう、ぐっと堪える。今は『押してダメなら引いてみろ』の『引いてみている』タイミングにしようと思うので、『結婚、結婚!』と言ってしまうと全てがおじゃんだ。「さぁ、食べましょうか」 そう言って、華さんはボクの髪を撫でるのもやめて、ローテーブルの前に腰掛ける。 手が離れる瞬間、少しだけ名残惜しそうな顔をしてくれたように見えたのは気のせいだろうか。もしボクの独りよがりな勘違いなどではなく、それが事実だったとしても、きっと、犬や猫を撫でた後程度の感覚なのだろうなぁと思うと、ちょっと寂しくなった。 ずらりと並ぶ料理の前に座り、ほぉと息を吐く。 昨夜必死に読み漁ったレシピ本をそのまま再現したのかと思う程のメニューが、ずらりとテーブルの上に並んでいる。鶏肉の香菜焼き、サーモンのクリーム煮、柚子の香りがするサラダ、海老チリとハンバーグが隙間なく視界を埋める。(どれも美味しそうです!) 人間の物を食べても空腹は少ししか満たされないが、でもまぁ無駄ではないので、「いただきます」と言って、ボクは箸を伸ばした。一口、二口と食べるにつれ、不思議とお腹が満たされていく。「……なんで?」 こんな事は初めてで、ボソッと疑問が口をつ
Última actualización : 2026-08-01 Leer más