Todos los capítulos de 魔女に呪われた“淫魔”達だけど、愛されたい!: Capítulo 11 - Capítulo 20

64 Capítulos

【第10話】「胃袋を掴むつもりが、掴まれた……」(カシュ・談)

「お風呂あがりましたー」 「丁度いいわね、こっちも用意が出来たわよ。すぐに食べられるかしら?」 「はい!」 お風呂から上がり、勝手に借りたドライヤーを敢えて使って髪を乾かしてみた。お風呂も、着替えも、ドライヤーも……ボクみたいな存在には全て不要なのだが、“人の真似”をするのはちょっと楽しい。魔力がほぼ枯渇していて何をするにもしんどいので、文明の利器に頼るのは何かと都合も良かった。「うん、スッキリしたわね」 ニコニコと笑いながら、華さんがボクの頭を優しく撫でてくれる。温かな彼女の手がとても気持ちいい。彼女の長い指と爪が微かに角にぶつかり、ちょっとくすぐったい。尻尾ほどではないが、角も触られると色々感じてしまうため、軽く愛撫されているような気持ちになってくる。(あぁ、ホントこのまま僕と結婚して頂きたい!) でも、そう言ってしまわないよう、ぐっと堪える。今は『押してダメなら引いてみろ』の『引いてみている』タイミングにしようと思うので、『結婚、結婚!』と言ってしまうと全てがおじゃんだ。「さぁ、食べましょうか」 そう言って、華さんはボクの髪を撫でるのもやめて、ローテーブルの前に腰掛ける。 手が離れる瞬間、少しだけ名残惜しそうな顔をしてくれたように見えたのは気のせいだろうか。もしボクの独りよがりな勘違いなどではなく、それが事実だったとしても、きっと、犬や猫を撫でた後程度の感覚なのだろうなぁと思うと、ちょっと寂しくなった。 ずらりと並ぶ料理の前に座り、ほぉと息を吐く。 昨夜必死に読み漁ったレシピ本をそのまま再現したのかと思う程のメニューが、ずらりとテーブルの上に並んでいる。鶏肉の香菜焼き、サーモンのクリーム煮、柚子の香りがするサラダ、海老チリとハンバーグが隙間なく視界を埋める。(どれも美味しそうです!) 人間の物を食べても空腹は少ししか満たされないが、でもまぁ無駄ではないので、「いただきます」と言って、ボクは箸を伸ばした。一口、二口と食べるにつれ、不思議とお腹が満たされていく。「……なんで?」 こんな事は初めてで、ボソッと疑問が口をつ
last updateÚltima actualización : 2026-08-01
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【第11話】夢魔(カシュ・談)

 食事が終わり、今は華さんがお風呂に入っている。 ハッキリ言って覗きたいです。不思議と、過去最高に魔力の余裕がある今なら“蛇”にだって化けられるし、空調部分からでも通って侵入したらバレないのではないだろうかと思うけど、『今は引く時期だ』と自分に言い聞かせて食器を洗う。覗きがバレて、追い出されるのが早まっては元も子もないので。(……でも、きっととても甘美な光景なのでしょうね) 服の上からでもわかるくらいのスタイルの良さなので、想像するだけでもう鼻血モノです。“ナニを”とは敢えて言いませんが、あの胸なら確実に挟めます。挟んでもらえるだけでも天国なのに、その上で舐めてとかもして頂けるでしょう。腰は折れそうなくらいに細く、お尻は小さめで、現代女性の憧れをそのまま形にしたようなスタイルで——(ソレが今、すぐ側で、全裸っ!) ボクが入った後のお風呂に入り、自己処理的な事をした、その空間で、今まさに裸を晒しているワケですね?って事は……全裸っ!なんという破壊力でしょう。あぁ……残り香とかで、やらかした事がバレないといいけど。……色々な意味で、ドキドキします。 食器を洗い終えるとボクは、無心になりながら、また家の中にある家電製品などの取扱い説明書を読み耽った。        ◇  華さんがお風呂から上がり、二人で一緒にテレビを観る事になった。 機嫌が悪い様子はないので、きっとバレてはいないとボクはほっとしながら隣に寄り添ってみた。ペッタリとくっつきたい衝動は頑張って耐えに耐え、ちょっとだけ隙間を開ける。それでも彼女の隣に居られるだけで嬉しくって、思わず頬が緩む。 いいなぁ、こういう何でもない時間って。 淫靡な夢で日々を喰い凌ぐだけの毎日だったから、余計にこういった幸せが身に染みる。 初めて満たされた腹、隣には一目惚れした愛しい人。 もう、この上ない幸福だ。 欲を言えばキリが無いが、今は満足しておこう。 ボクがそう思っていた時だ—— コツンッと頭に何かが、不意に寄りかかってき
last updateÚltima actualización : 2026-08-02
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【第12話】寝起き(華・談)

 日曜日の朝となり、またカシュが朝御飯を作って私を起こしに来てくれた。エプロンを着け、片手におたまを持った格好をまたしていた。いったいどこから仕入れてきた“朝の光景”の知識なのだろうか?「おはようございます、華さん」 「おはよう。もしかして……ベッドまではカシュが運んでくれたの?」 「そうですよ」 にっこりと笑い顔を向けられ、ちょっとくすぐったい気持ちになる。 私と彼は三十センチ近い体格差があると思うのだけど、どうやって運んでくれたのかしら。“インキュバス”って“悪魔”は力持ち……なの?お話の世界でしか聞かない存在なので、イマイチ彼の出来る範囲の想像がつかない。“サキュバス”ならちょっと聞いた事があるけど、それの男性版という認識で間違っていないといいのだけど。(今度ちゃんと調べてみましょう。図書館がいいかしら。ウチの図書館は本の種類が多いし、きっとネットよりも詳しく書かれた本があるはずだわ)「ありがとう。重かったでしょう?」 「いいえ。羽のように軽かったですよ」 礼を言ったら、そう返された。中学生にしか見えない貴方に言われても実感はわかない。それと同時に、彼を放置してとっとと寝てしまった事に対し、申し訳ない気持ちになった。(カシュはちゃんと寝たのかしら?そもそも寝るの?夜はレシピ本を読み漁っていたりしたらしいけど、寝床は必要だったりする?)「華さんは——」「ん?」 「……昨日の残りを温め直したんですけど、朝ご飯は、それにしちゃっても問題なかったですか?追加で、別におかずも作ったりもしましたけど」 「えぇ、もちろん平気よ。ありがとう、カシュ」 「……いえ」 何となく、『本当にしたかった話題はコレじゃないんだろうな』とは思ったが、敢えて問い詰めはしなかった。話題を変えたという事は、何か理由があってのことだろうし。(さて、と。今日はどうしようかしら) 角や尻尾の生えているカシュと一緒では日課の散歩もしにくいし、家で出来る事を考えるしかないわね。でも昨日の一日で掃除は済ませたし、課題の作成も一昨日の夜で終わらせてあるから
last updateÚltima actualización : 2026-08-03
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【第13話】だらだら日曜日・前編(華・談)

 朝食を済ませて、片付けを終わらせる。朝ご飯の用意をやらせてしまったので、『片付けは私が』と言ったのにカシュは聞いてくれず、『一緒にやりましょう』と提案してくれた。 食器を彼が洗い、私が拭いて棚の中に片付ける。『揃って仲良く家事をやるって、何かちょっと新婚っぽいな……』と考えて、慌てて私は頭を横に振った。 縁側に二人で座り、庭に咲く桜を見上げてお茶を飲む老夫婦。 手を繋ぎ、仲良く坂道を歩いて行く時に得られる、ささやかな幸せ。 ……それらは、いつかは絶対に噛み締めてみたいし、憧れではある。だが、それはあくまで“入籍”の後に欲しいものだ。事実婚的なものではダメなのだ。(だって、私が結婚したい本当の理由は——)「——どうしました?華さん。ずっと食器なんか握りしめて。落としちゃいますよ?」 カシュに声をかけられ、ハッと我に返った。「ごめんなさいね、ちょっとぼぉーっとしていたわ」 「何か考え事ですか?」 「そうね。えっと……今日は、どうしようかなと思っていたの」 考えていた事とは違ったが、まぁいいでしょう。それに関しても悩んではいたんだもの。(丁度いいわ、カシュは何かしたい事はないのかしら)「家でのんびりしたいです!華さんの隣に居られたら、もうそれで」 恥ずかしそうに、体をもじもじとさせながら言われてしまい、こっちまで気恥ずかしい気持ちになる。(そうか……こういった感情は、伝染するのね。ちょっと勉強になったわ) この欲の無いリクエストはきっと、明日には出て行ってもらう予定だから。ならば応えましょう。全力でカシュに、のんびりダラダラした時間をプレゼントするわ。「いいわよ。じゃあパッと片付けを終わらせないとね。洗濯とかは明日にしておくわ。お昼もそうね……ピザとポテトでも頼む?炭酸系の飲み物も注文してしまおうかしら。そして、一緒に部屋で映画でも観ましょうか」 「はい!是非」 満面の笑みでカシュが返事をしてくれる。さらさらとした錦糸のような短い金髪を揺らして喜ぶ姿がとても眩しい。シトリンみたいな大
last updateÚltima actualización : 2026-08-04
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【第14話】だらだら日曜日・後編(華・談)

「……——あ、待って!そこはダメ。あぁっやぁ、ぶつか、あ、押しちゃったら出ちゃう!んぐっ」 「ダメですよ?手加減はしませんからね」 「カシュ、本当に初めてなの?そ、そうは、思え、な……やぁぁぁ!もう——」 「さぁ仕上げです!」 「あぁぁぁー!」 叫び声をあげ、私はコントローラーを持ったまま床に突っ伏した。「やった!またボクの勝ちですね!」「あーもう。カードゲーム以外はやったこと無いって言うから、『私でも勝てるかな?』って思ったのにぃ」 随分前に飲み会のビンゴ大会で当たったきり、クローゼットの奥に押し込んだままになっていた据置タイプのゲーム機を引っ張り出した。最初はDVDを再生する為だけだったのだが、私が借りてきた恋愛映画を二人で観ているうちに、どんな流れだったか『トランプを使わないゲームって何?』という話になり、再び外に出掛けて赤い帽子の配管工が主役のレースゲームを買って来たのだが……実際にやってみて、『この子本当に素人なの?』と思ってしまった。もっとも、私も普段ゲームはしないから上手い下手の比較対象なんか無いのだけど、それにしたってだった。「じゃあ……五回連続でボクが勝ったので、お願い聞いてくれます?」 ニッとした笑顔を向けられ、返答に困った。自分だってほとんどやった事がないくせに、こんな賭けはするべきじゃなかったわ。だけど『いいよ』と言ってしまったからには、口をへの字にしながらではあっても、頷くしかない。(いい女に二言はないのだ。……って、自分で言うとイタイわね)「来週まで、ボクを此処に置いてくれませんか?……お客さんが来る事があれば消えます。出来るだけ迷惑はおかけしませんから」 少し困った顔をしながら言ったカシュの言葉を聞き、胸の奥がチクリと痛んだ。 あぁそうか、私はこの子に『出て行け』と言っているんだものね。行くアテがないって言っていたのは本当なんだわ。「……そうねぇ」 口元に手をあて、ちょっと考える。 家事は手伝ってくれるし、私の嫌がる事だって全然してこない。『結婚しよう』の言葉も初日だけで、昨日からはすっ
last updateÚltima actualización : 2026-08-05
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【第15話】職員室にて(華・談)

 不可思議な週末が終わり、月曜日となった。 カシュを一人部屋に残し、スーツを着て職場である学校へと出勤する。『いってきます』『いってらっしゃい』だなんて家族や夫婦みたいなやり取りをし、また、くすぐったい気持ちになりながら、背筋を無駄に伸ばして一人通勤路を歩いて行く。 私の職場は私立清明学園の高等部だ。我が校は進学校として近隣では有名な学校で、いわゆるお金持ちのお子様達が集まる古参の学校でもある。今は理事長の方針で才能ある者全てに門を開いており、多種多様な生徒達が集まるようになった。おかげで勉強一辺倒だった校内が部活動やイベントごとも盛んになり、全体が活気付き、毎日が楽しい。「おはようございます」 「おはよー華せんせー」 朝練に行くであろう大きな鞄を持ったジャージ姿の生徒に声を掛けられ、「おはよう」と返す。そんなやり取りですら、“教師”としてはちょっと嬉しくなる。(あぁ、ウチの生徒はホントいい子だわぁ) そう思うと、口元が勝手に緩んだ。 ウチの学校は無駄に、無駄に広い。二度言うくらいに、無駄に。校舎もさる事ながら、体育館、グラウンドなど、どれもこれも巨大だったり複数あったりする。図書館に至ってはもう随分長い事増築工事がおこなわれていて、終わる気配が無い。(何をそんなに納める気なのかしら。全くわからないわ) でもまぁ私は国語の教師なので、様々な資料が増える事は大歓迎だった。        ◇ 「おはようございます」 職員室に入り、同僚である先生達に挨拶をする。「あぁ、おはよう。今日は遅かったんだな。なんだ、寝坊でもしたのか?もしかして、とうとう彼氏でも出来たか⁉︎」 時計を見ながら若干セクハラ寄りの発言をしてきたのは、理科教師である瀬田浩二先生だ。『遅い』といっても遅刻ではない。ただいつもよりはちょっと遅いかなくらいじゃないか。それなのに変な詮索はやめて欲しい。「簡単にできたら、苦労していないわ」 私が渋い顔を向けると、「ははっ」と笑い
last updateÚltima actualización : 2026-08-06
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【第16話】理事長室へ・前編(華・談)

 今日も授業がスムーズに終わり、準備室に戻って来た。 ウチは真面目に授業を聞く子ばかりで本当に助かるわ。無駄話をしていても注意したらすぐに止めるし、寝ている子も初日以外は一人もいない。あぁ、なんていい子達なのかしら! 使った資料を片付けて、明日の準備を始める。プリントをコピーしたり、回収した問題集の中身の確認もしておかないと。えっとそれから——と、机の前に座り、これからやらねばならない事を抜けの無い様にメモしていると、引き戸がノックされた音が聞こえた。「はい、どうぞ」 メモに目をやったまま返事をすると、入って来たのは同期の瀬田先生だった。手にはノートの山を抱えたままで、理科準備室に戻る前に立ち寄ったみたいだ。「あら、瀬田先生。お疲れ様です」 「お疲れ様」 大量のノートを持ったまま、首を横に倒して首筋を伸ばしている。肩こりでも酷いのか、しかめっ面をしながら首を回し始め、私はその様子を見ながら『……コイツは何をしに来たのかしら?』と思った。「暇潰しなら、他でやってもらえるかしら。まだ仕事が残っているから構ってあげる時間は無いわよ?」 「違う。理事長がお呼びだと言いに来ただけだ。丁度そこで会ってな。すぐ部屋に戻らないといけないから、代わりに呼んできてくれと頼まれたんだ」「……校長や教頭先生じゃなく、理事長が?」 持っていたペンを机に置き、訝しげな顔を瀬田先生に向ける。わざわざ理事長に呼ばれた理由がわからず、ちょっと怖い。「私、何かしたかしら……わかる?」 「俺が知るわけ無いだろ。彼氏でも夫でもないんだから、監視もしてないしな」 「『彼氏』や『夫』ワードの後に何故『監視』という言葉がくるのか気になるけど……訊かない方が良さそうね」 すくっと椅子から立ち上がり、机の上を軽く整頓する。ポケットの中に準備室の鍵がある事を確認すると、私はふぅとゆっくり息をついて気持ちを整え、廊下側へと歩き始めた。「ありがとう、瀬田先生。行って来るわ」 「おう。いってらっしゃい」 綺麗な口角を少しあげ、微笑みながら瀬田先生が送り出してくれる
last updateÚltima actualización : 2026-08-07
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【第17話】理事長室へ・後編(華・談)

「仕事中に突然呼んでしまってすまないね。どうしても君に話しておかないといけない事があって」 「あ、いえ。問題ありません」 不覚にも両開きをしてしまったドアをそっと閉め、理事長室の中へ入る。大学を卒業してすぐこの学校に採用されて、かれこれ勤続六年目になるのだが、この部屋には初めて入った。 何というか……貴族の私室?執務室ってこんな感じなのかしら、と思う程に豪奢な内装をしている。金色がやけに多く、差し込む夕陽で無駄に輝きを放っている。真っ赤なベルベット風のカーテンは重厚感があり過ぎてなんだか凄く重たそうだ。なのに成金っぽくないのはきっと、全てが本物の高級品だからなのだろう。 大きな窓を背にし、廊下側を向く形で大きな机が置かれ、机と廊下の間には応接セットが一式置かれている。そこには一人、ウチの学校の制服を着た金髪の少年が座っており、私は反射的に『生徒からの苦情か!』と眉間に皺を寄せてしまった。「まずは君も、そこに座ってくれるかい?」 「は、はい!」 背筋を正し、応接用のソファーに座る。緊張してしまうせいで心臓がうるさく、怖くて対面に座る少年の顔が見られない。「……緊張しているのかな?」 「い、いえ。平気です。どんな話でもしっかりと受け止めますので、お聞かせ頂けますか?」 真面目な顔をし、カミーリャ理事長へ視線をやった。背筋を正し、次の言葉を待つ。だが理事長はちょっと不思議そうな顔をしてから、すぐにくしゃりと顔を崩して笑い出した。「あははは!華先生は何か勘違いをしているね?大丈夫、生徒からの苦情とかでは無いよ。ね?黒鳥君」「えぇ、“華さん”に苦情なんか微塵も無いですよ」「……え?」 知ってる声が不意に聞こえ、私は顔をあげて正面に座る少年に視線をやった。「……カ、カシュ?」 今朝家で留守を頼んだはずのカシュが何故か目の前に座っている。ウチの学校の詰襟タイプの制服を着ており、履いている靴もちゃんと指定の上靴だ。「彼が今週中にはウチの学校に入学する事になってね。君のクラスに入ってもらおうと思うんだ。知って
last updateÚltima actualización : 2026-08-08
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【第18話】『瀬田浩二』という名の災難(ウルカ・談)

 一目惚れ。 そんなモノは無い。一五〇年生きてきたワタシが言うんだから間違いない。 あんなものは尺をどうにかするために、映画やお話のご都合で作られた虚構でしかなく、現実には起こり得ないお伽話の紛い物だ。そんなものが『あるかも』などと考える時間こそが無駄で、日々アンテナを張り、コツコツ誰かを好きになるように努めてこそ、恋愛関係を結ぶなんて奇跡を引き寄せる事が出来るのだ。 ……——なんて偉そうな事を信じ続けてきたというのに、今ワタシは、その考えを全否定出来る存在を見付けてしまった。 何だ、アレは。 一五〇年もの歳月を生き、色々なイケメン達に目もくれず、自らの持つ“サキュバス”としての本質は鳴りを潜めたまま生きてきたというのに……。       ◇ 双子の兄であるカシュが、昨日突然行動を起こした。 基本、私達は一緒には行動せず、たまに会って互いの報告をし合うだけの関係だ。これでもまだ仲が良い方で、他の同族には一度も会った事がない。そもそももう、我らの種族は『魔女の呪い』の影響であまりいないのかもしれない。 そんな関係性の兄を遠くから見守っていたワタシは、兄が意気揚々とやって来た高校へ侵入し、誰にも見付からないよう気配を消して木の上に飛び登った。生茂る葉っぱに隠れ、太い枝に座り、『カシュはどこ?』と目を凝らす。だがどんなに周囲を観察しても全然兄の姿が見当たらない。魔力を使って探す事も出来るが、そこまではしたくはない。魔力の元となる“精気”を補充する手段が人の“淫夢”を食べるくらいしかない今のワタシでは、日々魔力は節約し、いざという時のために貯めておかねば。 幸い視力は悪くない。あ、でも人が増えてきたせいでさっきより探すのが段々大変になってきた。どうして人は群れるのかしら。この中からたった一人を探す難易度が上がるから迷惑極まりないだけだわ、ホント。 『んー』と唸りながらワタシが頑張って金髪の少年を探していると、一人……やたらと目を惹く男性が、校門を通って歩いて来た。両サイドには紫陽花の花が咲きこぼれ、彼が通った瞬間だけ花も嬉しそうに輝いているように見える。朝日の当たった黒髪は烏の艶羽根みたいだし、薄茶色をした瞳はスモーキークォーツみたいで美しい。スタイルも良くて脚も長い。真ん中で前髪を分け、眼鏡の奥に見える眼差しは切れ長でちょっと怖い。(でも、それが…
last updateÚltima actualización : 2026-08-09
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【第19話】『瀬田浩二』という名の災難(ウルカ・談)

 夜になり、ワタシは今、大きなマンションの前に一人立っている。手には大きな薔薇の花束を持ち、服装や姿形だって綺麗に整えた。(でも、本当の自分の姿でプロポーズなんか出来ないわ……) そう思ったワタシは、長身でスタイルのいい女性の姿で挑む事にした。今までの人生の中でコツコツと貯めに貯めた魔力をフル動員して、ボンキュボンなナイスプロポーションになり、化粧もしてテンプレ的美人に大変身を遂げる。彼の好みを知れるような物が微塵も発見出来なかったのは手痛いが、男性など、異性が恋愛対象なのならば、きっとこんな感じが万人共通で好きなはずだ。 白い肌、赤い唇、すっと整った鼻筋、大きな瞳にはまつげを多めにし、服は全体的にセクシー仕上げにしてしまうよりは、ポイントを絞った方が効果的だと噂で聞いたので、胸元だけを寄せて上げて、露出範囲をギリギリまで攻めてみた。他の部分は敢えて長袖にロングスカートで隠し、スタイルラインだけは強調して妄想を刺激する。「これで堕ちない男はいないわね」 ふっと笑い、自分に酔いしれる。 “本体”と“この姿”がかなりかけ離れているからか、もうここまできたら照れも無い。ジワジワと減っていく魔力の残量にヒヤヒヤしつつ、ワタシは瀬田さんの住む部屋に向かうため、高級そうなマンションのエントランスへと入った。 彼の部屋は七階だ。さて、どうやって入ったらいいのかしら?人様のマンションになんかベランダからしか侵入しないから、開かない自動ドアを前にフリーズしてしまう。(『やったるで!』と思って来たのに、秒で罠に引っかかるとは……人類の文明はなんて恐ろしいの!) 首を傾げながらドアの前で困っていると、建物の中から人が出て来たので、ワタシは慌てて姿を消して隠れた。(う……また魔力が削られたわ。だけど、ここさえ乗り切ればもうこの先はトラップなど無いはず……よね?) 閉まってしまう前にそっと中へ入り、エレベーターを目指す。 姿を消す方へ魔力を使うのなら、最初から、自動ドアのくせに自動じゃなかったドアを通過する方へさっさと使うべきだったなぁと反省しつつ、ワタシは七階へと移動した。 彼の部屋は確か七一三号室だ。(あった、ここね) 廊下を進み、見付けた部屋番号の前に立つ。チラッと表札を確認すると『瀬田』とあり、ほっと息を吐いた。 この姿のおかげで万能感を抱いたままでは
last updateÚltima actualización : 2026-08-10
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