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【第19話】『瀬田浩二』という名の災難(ウルカ・談)

last update Date de publication: 2026-08-10 18:40:44
 夜になり、ワタシは今、大きなマンションの前に一人立っている。手には大きな薔薇の花束を持ち、服装や姿形だって綺麗に整えた。

(でも、本当の自分の姿でプロポーズなんか出来ないわ……)

 そう思ったワタシは、長身でスタイルのいい女性の姿で挑む事にした。今までの人生の中でコツコツと貯めに貯めた魔力をフル動員して、ボンキュボンなナイスプロポーションになり、化粧もしてテンプレ的美人に大変身を遂げる。彼の好みを知れるような物が微塵も発見出来なかったのは手痛いが、男性など、異性が恋愛対象なのならば、きっとこんな感じが万人共通で好きなはずだ。

 白い肌、赤い唇、すっと整った鼻筋、大きな瞳にはまつげを多めにし、服は全体的にセクシー仕上げにしてしまうよりは、ポイントを絞った方が効果的だと噂で聞いたので、胸元だけを寄せて上げて、露出範囲をギリギリまで攻めてみた。他の部分は敢えて長袖にロングスカートで隠し、スタイルラインだけは強調して妄想を刺激する。

「これで堕ちない男はいないわね」

 ふっと笑い、自分に酔いしれる。

 “本体”と“この姿”がかなりかけ離れているからか、もうここまできたら照れも無い。ジワジワと
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     広いエレベーターにちょっと緊張しながら乗り込むと、本多さんが胸ポケットから一枚のカードキーを取り出し、私の方へとそれを差し出してきた。「こちらをどうぞ。貴女専用のカードキーです。無くしてしまうと少し面倒な事になるので、大事にして下さいね」 「あ、はい。ありがとうございます」(……私、“専用”?) 疑問を抱きつつも礼を言い、カードキーを受け取る。名刺サイズのそれには、いかにもこれは『“魔法陣”だな』としか思えない絵が描かれており、発光物質でも含まれているのか、全ての線が不思議とうっすら光っていた。「こちらのパネルに、そのカードを当ててみてもらえますか?」と言って、本多さんが階数や開閉の指示をする為のボタンの並ぶ位置にある、一番下のタッチパネルみたいなスペースを指さした。「ここにですか?」 「はい」 このエレベーターは随分と最新式なのね、と思いながら指示通りにカードキーを当ててみる。すると、まだボタンを押して階数を指定してもいないのにエレベーターが勝手に動き出した。体感的に下へ向かっているみたいだが、階数の表示されるべき箇所にはエラーの文字が書かれていて本当に下へ向かっているのか確信が持てない。「あの……向かっているのは、下の階なんですか?」 そういえば、下層へ行くのはこれが初めてだ。各所に貼ってある館内図も一階から三階までしか描かれていないので、他の階は職員専用なのだろう。「えぇそうですよ。かなり下まで行くので、少しかかるかもしれません」 「……え。この図書館って、一体下は何階まであるんですか?」 現時点ですら体育館並みに巨大なウチの図書館は常に増築工事を続けており、終わりが見えない。上や横には土地的にも限界があるが、『下ならば』と更に拡張をしていると噂には聞いてはいたが、どうやらただの与太話ではなかったみたいだ。「……秘密ですよ、ふふっ」 白い手袋をした指先を口元に当て、本多さんが片目を軽く閉じる。可愛らしい悪戯っ子みたいな顔をされてしまってはもう、これ以上何も訊けなかった。       ◇ エレベーターは一分間にだいたい三十から六十メートル進むと言われている。……そしてもう、かれこれ五分から七分は経過している気がするんだけど、気のせいかしら。本当に大丈夫、なの?と段々不安になってきた。「あ、あの……一体、どこまで降りて行くの

  • 魔女に呪われた“淫魔”達だけど、愛されたい!   【第66話】図書館に眠る魔女の遺産①(華・談)

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    「さて、話を最後までは聞いてくれなかったから、コレはもう、カフェまでちゃんとお迎えに行かないといけないねぇ」 ニヤニヤと楽しそうに笑うカミーリャに対し、ため息のみで華が答える。失礼な態度と知りながらも、何か言い返す気力はもうなかった。「まぁ冗談はさておきだ」と言い、カミーリャが机に頬杖をついて、華へ真顔を向けた。それにより、華が身を引き締めて背を正し、ここからは仕事の話なのだなと気持ちを切り替える。「華先生は確か、今は“文芸部”と“漫画研究会”の部活顧問を担当しているんだったよね?」 そう訊きながらカミーリャは手元にある部活関連の資料をぱらっとめくった。「はい。他にも“アニメ同好会”と“イラスト研究会”も受け持っています。もっとも……“文芸部”以外は名前を貸して、鍵の管理をしているだけですけども」(それにしても、何故に漫画とイラストで別々に活動するのかしら?一緒に活動してくれると、仲間も多くなって楽しいだろうに) 心の中で、華がそっとぼやく。 それにしたってどうして私のところにはこうもオタク文化系のお願いが多いのかと軽く首を傾げる。恋愛小説や漫画が愛読書である事は、秘密にしているつもりなので不思議でならない。「……多いね。まぁ生徒が好きに活動していて、華先生に負担が無いのならいいんだろうけど」 「そうですね。ですが、好きな活動をして学校生活を楽しみたい子供達の笑顔は見ていて楽しいので問題ありません」 「そっか、うんうん」 模範解答とも言える返事をする華に対し、眩しいモノでも見る様な目をカミーリャが向ける。本心からそう思っているのだろうなぁと思うと、理事長としては嬉しくもあった。「そんな華先生に追加で頼みたい部活があるんだけど……出来るだろうか?」「ものにもよりますが……。指導が必要なものですと、専門知識の問題がありますので」 「まぁそうだよね。だから、僕的にはもう華先生にしか頼めないなと思って呼んだんだ。元々は別の先生が引き受けてくれていたんだけどね、生徒と一緒に真面目に部活動に励んでいるうちに、『奥深い世界に興味が湧いたので、ちょっ

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    「そのうち絶対に何かやるだろうなぁとは思っていたけど、まーさーか、転入初日の自己紹介時にやらかしてくれるとはね。思い付きで行動する私でも、流石にコレは想像出来なかったなぁ、あははは!」 相変わらず『此処は貴族の部屋か?』とツッコミを入れたくなる程に品のある豪奢な一室で、清明学園の理事長であるロイ・カミーリャが声をあげて笑っている。 そんな彼の座る席の正面に立ち、顔面を両手で押さえ、俯いたまま華が「すみません……」とか細い声で謝罪する。だがカシュは笑顔のまま「ボクは謝りませんよ。コレでボクがどんな行動をしようが、華さんは『日本の常識を知らない、距離感のバグっている外国人から一方的に迫られている被害者』って扱いになりますからね」と自信満々に言い切った。 そんな彼の腕に、もの凄い勢いをつけて華が力一杯肘打ちをする。 カシュはその衝撃と痛みにより、「あがっ!」と声をあげはしたが、心なしか表情は『ご褒美、ありがとうございます!』とでも言い出しそうな笑みを浮かべていた。「了解、そういった方向で情報を管理しておくよ。まぁ華先生側の態度が揺らぐ心配はそもそも無いしね。黒鳥君はどう足掻いたって“淫魔”の習性で好きな人を誘惑したくなるだろうから、最初っから隠さないという選択肢は、確かにありだね、うん」「ありがとうございます、カミーリャさん」 そう言って、カシュがカミーリャに向かい頭を下げる。 何の相談もせずに行動した事だけでも詫びようかと一瞬思ったが、彼ならば全て見通しているのではと思い、結局カシュは謝罪をしなかった。「いいんだよ、“人外”達との付き合いには慣れているつもりさ。こちらのルールばかりを押し付けるのは無理だともわかっているからね。この先も、こうやって何度も折り合いをつけていこうじゃないか」 「あ、あの……私の監督責任は問われるのでしょうか?その……頰ではありましたけれど、担任である私が、生徒達の前で、せ、せ……接吻をされて、しまったわけです、し」(何故に『接吻』?『キス』って言うのすら、恥ずかしかったとか?) と、カシュとカミーリャが同じ事を思う。 だがそんな彼女を同時

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