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117:華やかな場所

last update Last Updated: 2026-01-16 11:10:35

 数日後、ペントハウスのリビングで、セナさんが私に一枚の封筒を差し出した。

「……招待状、ですか?」

 中に入っていたのは、黒と金で彩られた豪奢なカードと、スタッフパスだった。

 来週、都内の超高級ホテルで開催される『ドラマ制作発表記念パーティー』のものだ。

「西条リカさんからの指名です。『あの栄養士を必ず連れてくること。私の体調管理のために必要だから』と」

 セナさんは珍しく苦い顔をしていた。

 体調管理など建前だ。先日のペントハウスでの一件の続き――私に「格の違い」を見せつけるための召喚状であることは明白だった。

「行かなくていい」

 ソファで台本を読んでいたレンくんが、顔も上げずに言い捨てた。

「あいつ、絶対ろくなこと考えてない。紬をいじめて楽しむ気だ。そういう奴だよ」

「……行きます」

 私はパスを手に取り、努めて明るく答える。

「仕事ですから。それに、レンくんの晴れ舞台を見てみたいですし」

「紬……」

「大丈夫です。私は裏方として、しっかりサポートしますから」

 レンくんは心配そうに私を見つめていたが、私はその視線から逃げるようにキッチンへと戻った。

 手の中のパスがやけに重く感じられた。

 パーティー当日。

 会場となるホテルの大広間(ボールルーム)は、シャンデリアの光と着飾った業界人たちの熱気に満たされていた。

 私は目立たない黒のパンツスーツに身を包み、髪を後ろで一つに束ねて会場の隅に立っていた。

 周囲にはきらびやかなドレスやスーツの人々が、楽しそうに笑い声を上げている。地味なスタッフ姿の私は、光の中に落ちた影のようだった。

「主演、綺更津レンさん、西条リカさんの入場です!」

 司会者の声と共にホール扉が開く。無数のフラッシュが一斉に焚かれ、私はまぶしさに目を細めた。

「――っ」

 光の中から現れたレンくんを

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     周囲の席を見渡せば、全身をNoixグッズで固めた猛者たちばかり。 ごく若い人から少し年配の人まで、みんな頬を紅潮させて興奮を隠しきれていない。 中でも若い人たちのテンションは高く、こんな会話が聞こえてきた。「やばい、近い! 死ぬ!」「レンくんと目が合ったらどうしよう、妊娠する!」 そんな興奮した悲鳴が飛び交う。 彼女たちの物言いはちょっとどうかと思うが、バカバカしいとは思わない。私だって少し前まではただのファンだったのだから。 この人たちはこの神席を手に入れるため、どれだけの苦労をしたことだろう。 そう考えれば、ただ招待された私は少し肩身が狭い。 私は1本だけ持ってきたペンライトを握りしめ、身を縮こまらせて席に着いた。 場違い感が凄まじい。ここにいていいのだろうか。 いつまでも庶民根性が抜けなくて、自分でもため息が出た。◇ 18時ちょうど。フッ、と客電が落ちた。 その瞬間、5万5000個のペンライトが一斉に点灯した。暗闇が一瞬にして、色とりどりの光が揺れる巨大な銀河へと変わる。 悲鳴のような大歓声と共に、腹の底に響く重低音の序曲が始まった。低い音楽は悲鳴を飲み込みながら、ドーム全体を震わせていく。 ドォン!! 特効の爆発音と共に、メインステージの中央がせり上がる。煙の中から3つのシルエットが現れた。「キャーーーーーーーッ!!!」 ドームが揺れた。大歓声で鼓膜が破れそうだ。スポットライトが彼らを捉える。 きらびやかなゴールドと白の衣装を纏った『Noix』の3人が立っている。 挑発的なラップで会場を煽るハルくん。 冷徹なほど美しくダンスを決めるセナさん。「レンくーーーん!!」「セナさん!!」「ハルくん~~~!!!」 それぞれのファンが必死に歓声を上げる。 そして――センターに立つ、綺更津レン。彼は歌い出す前、ただ無言で右手を天に掲げる。たったそれだけの動作で、5万5000人

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