All Chapters of 大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…: Chapter 11 - Chapter 20

90 Chapters

11話

それからの私は、今まで奏斗に必要以上に連絡をしていたのをまず、やめた。 私と奏斗は幼馴染で、奏斗も幼馴染の私を大切にしてくれていた。 だけど、私からしょっちゅう連絡が来て、忙しい奏斗を煩わせていたかもしれない。 1度、そう考えてしまうと連絡する事が怖くなって、奏斗への連絡はぱったりと途絶えた。 私は本当の失恋が堪えて、あの日の合コンの誘いを断ってしまっていた。 大学に行くたびに、時々合コンの誘いを受けていたけど、何となく遊びに行く気にならなくて。 全部断ってしまっていた。 けど、あれからもうひと月近くが経つ。 奏斗への連絡をやめてから、ひと月。 テレビの中で元気そうに活動する奏斗を観る事にも、慣れてきた。 そんな頃に、大学の友人から声をかけられた。 「香月〜今日の合コン、どうしても参加して欲しいんだ!女の子が1人体調悪くって来れなくなっちゃって……お願い!会費もいらないし、ご飯食べに来てくれるだけでいいから、参加してくれない!?」 顔の前で両手を合わせ、必死に頼んでくる友人。 合コン。 参加、してみようかな。 「分かった。いいよ、参加する。ご飯食べてていいんだよね?」 「……だよね、やっぱり無理だよね〜……。……えっ!?」 いつも私が断っているからだろう。 だから、友人もまさか私が合コンに参加するとは思わなかったらしく、私の返事を聞いて、驚いたように声を上げた。 「えっ、いいの!?本当に合コンだよ!?」 「うん、いいよ。今まで断っちゃってたし、申し訳なくて…。ただ、本当に戦力にはなれないから……」 「いいよいいよ!参加してくれるだけで助かる〜!おしゃれ個室の居酒屋だから、ゆっくりお酒も飲めるし、ご飯も美味しい
last updateLast Updated : 2025-12-07
Read more

12話

合コンは、思っていたよりも賑やかで、楽しい時間になった。 「合コン」のイメージを勝手にこんな風なものだ、とつけていた私は、拍子抜けしてしまう。 これだったら、大学の飲み会と同じような雰囲気。 少しだけ男の子と距離は近いけど、ただ、それだけ。 変に体を触られたりしないし、しつこく口説かれたりもしない。 変に漫画やドラマの見すぎで、合コンに良いイメージのなかった私は、自分の偏った考えに恥じ入る。 今だって、私の隣に座っている男の子は優しくて、凄く紳士的だった。 「香月ちゃん、お酒あんまり強くないでしょ?無理してお酒飲まなくていいよ。次は烏龍茶にでもする?」 「いいの?遠藤くん」 「うん。酔って騒いでっていうのじゃないでしょ、今日は。楽しく喋れたら、俺はそれでいいし」 優しく笑う遠藤くんに、私もついつい警戒心が解けて笑い返す。 どうやら遠藤くんは、友人の頼みで今回の合コンに参加したらしい。 遠藤くんの友達は、私の友人が気になっていたらしくて、今回の合コンをどうにか組んだみたい。 遠藤くんは、私にちらりと視線を向けてあっさりと口にした。 「香月ちゃんも、俺と似たようなもんでしょ?あまり合コンに乗り気じゃないように見えたから」 「えっ、バレてたの?」 「そりゃあ、ね。なんだろ……お互い合コンに乗り気じゃなかったから、かな?」 「ふふっ、同じ雰囲気を感じたから、とか?」 「そうかもね」 まったりと、遠藤くんと色々な事を話す。 他の皆は、それぞれ男の子といい雰囲気になっていて、連絡先の交換とかをしているのが見えた。 合コンは、どうやら成功したみたいだ。 遠藤くん以外の男の子たちも、変にガツガツしていないって言うか……みんな落ち着いていて、女の子と笑い合っている。 「ごめん、遠藤くん。私ちょっとお手洗いに行ってくるね?」 「うん、分かったよ。行ってらっしゃい」 ひらり、と手を振られて、つい私も手を振り返す。 個室を出て、廊下を歩いていると私はふと自分の手元を見てしまった、と呟いた。 ハンカチを忘れてしまった。 せっかくテーブルの上に取り出したのに。 少しだけお酒が入っているから、忘れっぽくなっているのかもしれない。 しょうがない、いったん個室まで戻ろう。 そう考えた私が、踵を返すと、思いもよらなかった声が背後からかけ
last updateLast Updated : 2025-12-08
Read more

13話

「香月……?その男、誰だ……?」 奏斗の恐ろしく低い声が聞こえた。 遠藤くんは、私の名前を呼んだ男──奏斗へぱっと顔を向けると、訝しげに眉を顰める。 帽子を目深に被り、マスクで顔の下半分を覆い、顔を隠した黒ずくめの奏斗に、不審者を見るような目を向ける。 「……香月ちゃん、あの人知り合い?」 こんなところで、奏斗の正体がバレてしまったら不味い。 私は、咄嗟に首を横に振った。 「ううん、知らない人。部屋に戻ろう、遠藤くん」 「あ、ああ……」 遠藤くんはちらちらと気にするように背後を振り返る。 奏斗に気付いて欲しくなくて、私は遠藤くんの手を引っ張って行く。 だから、その光景が奏斗から見たら仲良さそうな、まるで付き合っている男女のように体を寄せあっているように見えているなんて、考えもしなかった。 「──はっ、はは……。知らない、人……?」 だから、奏斗が低い声で呟き、うっそりと笑っていた事なんて、私は全く気づかなかった。 ◇ 合コンもお開きの時間。 この合コンは、とてもまったりとした、心地いい時間が終始流れていたと思う。 私の友人も、遠藤くんの友達といい雰囲気になっているのか、会話を楽しんでいるのが分かる。 他の人達もペアになっていて、残った私と遠藤くんが自然と残った。 「ええっと……香月ちゃん、電車?」 「うん。遠藤くんは?」 「俺も、電車。今日はここで解散みたいだね。……その、香月ちゃんが良ければ送って行ってもいい?」 「──え?」 どこか気恥しそうに鼻の頭をかきながらそう伝えてくれる遠藤くんに、私は目を見開いた。
last updateLast Updated : 2025-12-09
Read more

14話

電気もついていない暗がりで、急に声が聞こえた私は、びくりと体を跳ねさせた。 だけど、その声の主が奏斗だって分かり、私はすぐに安心して息を吐き出した。 「──っくり、したぁ……。電気もつけずに何をしてるの、奏斗?お母さんは?」 「おじさんとおばさんでディナーだって。今日帰ってくるの遅いって言ってた」 「そう、なの……?奏斗、もしかして今まで家で1人でいたの?」 靴を脱ぎながら、2階に上がる階段に佇み、壁にもたれている奏斗に向かって話しかける。 奏斗と普通に会話をしているけど、奏斗の声はどこか平坦で、冷たい。 「うん、そう。あの個室居酒屋から帰ってきて、すぐに香月の家に来たよ。その時はまだおばさんがいたけど、少ししたら出てった。香月は遅くなるかもって言ってたから、連絡が来たら迎えに行こうと思ってたんだけど……」 そこで一旦言葉を切った奏斗は、小さく吐き捨てるように笑った。 「俺の迎えなんて最初からいらなかったな。随分仲良さげに一緒に帰って来たもんな?」 遠藤くんの事を言っているんだろう。 それは、すぐに分かった。 だけど、奏斗がこんな風に刺々しい態度を取る理由が、心底分からない。 私の告白を、本気にしてなかったくせに。 私を、振ったのは奏斗のくせに。 それなのに、こうやって責めるような言葉を奏斗には口にして欲しくない。 「……奏斗には、関係ないじゃない」 だから、私はもやもやとした、苛立ちすら覚えていて。 その感情を、そのまま奏斗にぶつける。 「──は?」 「奏斗には、関係ないでしょう?私がどこで、どんな風に誰と会っててもっ!」 「そんな事言って……!何かあったらどうするんだ!?俺たちくらいの年の男なんてっ」 「何だって言うのよ、遠藤くんは優しくて、紳士的だったもん!」 「それがっ!香月は騙されてるんだよ、男なんて所詮、女の子とヤる事しか──」 「じゃあ、奏斗もそう言う事ばっかり考えてるって事!?」 売り言葉に、買い言葉。 私と奏斗はリビングにも行かず、玄関近くで言い合いをしてしまう。 このままじゃあ、ご近所さんに聞こえてしまうかもしれない。 私の言葉に、奏斗ははっとしたように目を見開き、私から顔を逸らして呟いた。 「俺は、そんな事考えてない……」 「そう言う男の人だっているって事でしょ。遠藤くんだって、そ
last updateLast Updated : 2025-12-09
Read more

15話

ゆっくりお風呂に入った私は、普段より丁寧に時間をかけて洗面所で髪の毛を乾かした。 私が帰ってきて、もう1時間半も経っている。 これだけ時間が経っていれば、さすがに奏斗だってもう自分の家に帰ってるはず。 その証拠に、リビングも、1階も、電気は消えていて暗くなっていた。 ほっとした私は、軽やかな足取りで階段を上る。 部屋の扉を開けた私の視界に飛び込んできた光景に、私はびしり、と固まってしまった。 「な、なんで奏斗がここにいるの……!?家に帰ったんじゃないの!?」 信じられない事に、奏斗はまだ帰っていなかったのだ。 私の部屋のベッドに突っ伏していて、表情は伺えない。 けど、私が階段を上がってきた足音は聞こえていたはず。 それなのに、奏斗が顔を上げる気配がなくって。 「奏斗……?」 私は、部屋の入口で立ち止まっていたけど、そろりと部屋に足を踏み入れた。 けど、私が声をかけても。奏斗に近付いても。奏斗はなんの反応も見せない。 「ちょ、ちょっと奏斗……まさか──」 私を待っていて、眠ってしまったのだろうか。 私の考えはどうやら当たっていて。 奏斗に近付くと、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえてきて、私は一気に脱力してしまう。 「奏斗、起きてよ……寝るなら自分の家に帰ってよ……」 軽く肩を揺すってみても、奏斗が起きる気配がない。 多分、話をしようとしてくれたんだろう。 私がお風呂から上がるのを待ってくれていたんだと思うけど、私が戻ってくるのが遅くて、睡魔に負けてしまったのだ。 私は、普段よりゆっくりお風呂に入ってしまった事を悔いる。 喧嘩をしても、ちゃんともう一度落
last updateLast Updated : 2025-12-10
Read more

16話

「んー……」 ふと意識が浮上してきて、もぞり、と私は身動ぎした。 どうやらもう日が昇っているらしく、瞼を閉じていても外が明るくなって来ているのが分かった。 私は、目の前にある温もりにすりっと擦り寄った。 私の体を包む、がっしりとした力強さと、温かさ。 ぎゅっ、と引き寄せられて、私は安心感に包まれて再び眠りにつこうとした。 ──待って。 引き寄せられる? ぬくもり? 何で私のベッドに、私以外のぬくもりがあるの!? 私は一気に目が覚めて、ばちっと目を開けた。 すると、部屋の中はまだ薄暗いけど、カーテンの隙間から差し込む太陽の光で、うっすらと室内の様子が見える。 けど、おかしい。 私の目の前には、何かがある。 なに、これ? ぺたり、と私が目の前のそれに手を触れると、ぎくりと目の前のそれが強ばった。 そして、私の背中に回っていた何か──人の、腕がぎゅうっと私を抱き締める。 人!? 何で!? 半ばパニックに陥った私は、咄嗟に叫ぼうとした。 「ちょっ、ちょっと待って叫ばないで香月!」 「──むぐっ」 慌てたような男の人の声が聞こえて、私の口が塞がれる。 男の人の声は、聞き慣れた奏斗の声だ。 私が聞き間違える訳がない。 じゃあ、何で奏斗の声がこんな近くで聞こえるの!? それじゃあ、私の背中に回っているのは奏斗の腕なの!? 頭の中がパニックで、私はじたばたと暴れた。 昨日は、奏斗が家に帰らなくて。 床で寝てたから、奏斗にベッドを譲るつもりで私も少し離れた床で横になったのに。 それなのに、私の体はいつの間にかベッドに移動していて、あろう事か、奏斗と一緒に横になっていたの!? そんな、そんな事起きちゃ駄目なのに──! 「ちょっ、いてっ!痛いって、香月……!俺の顔引っ掻いてる!」 「……っ」 奏斗の声を聞いて、私はビタリ、と腕を動かすのをやめた。 奏斗の顔に傷をつけたら、大変な事になる。 私はそろりと顔を上げる。 どうやら、私は無意識のうちに奏斗の胸に顔を寄せて眠っていたらしい。 顔を上げると、困ったように眉を下げた奏斗の顔が至近距離にあり、私は言葉を失う。 「ごめん、昨日香月と話したくて待ってたんだけど、そのまま寝ちゃったみたいだ。俺が起きた時、香月が床で寝てたからベッドまで運んだんだけど……俺も眠くなっ
last updateLast Updated : 2025-12-10
Read more

17話

奏斗に抱きしめられ、身動きが出来なくなってしまった私が諦めて二度寝をしてから、どれくらいが経っただろう。 階下で、お母さんとお父さんが起きて動き出す気配が伝わってきた。 「香月ー!もうそろそろ起きなさい!」 「──っ!」 お母さんの大きな声が聞こえ、私ははっと目を開ける。 その場に飛び起きたかったけど、私は奏斗に抱きしめられたままだったからそれができない。 声を返さないと、お母さんが部屋に来てしまう。 私は慌てて返事をした。 「わ、分かった!今降りるー!」 「んー、うるさい……香月」 私の大声が頭に響いたのだろう。 もぞり、と奏斗が動いて迷惑そうに呟く。 「うるさいなら、早く自分の家に戻って」 こそこそ、と声のトーンを落として奏斗をぐいぐいと押し退ける。 今度は奏斗は抗う事なく、私を抱きしめていた腕を解き、離れて行った。 「俺の部屋、鍵開けてないから戻れないもん……外から戻る……」 「──えっ、ちょっと……っ」 それじゃあ、下に降りるって事!? 朝まで私の部屋で過ごしたって思われてしまう。 いや、朝まで一緒に寝たけど、決して疚しい事があった訳ではなくて! と、私が混乱している間に、奏斗は眠そうに欠伸を1つ零したあと、むくりと起き上がった。 寝癖のついている頭のまま、ベッドから降りた奏斗は、普段通りにぺたぺたと入口まで歩いて行き、躊躇いもなく扉を開けて外に出て行ってしまった。 「ちょっ、ちょっと奏斗……っ」 私は慌てて奏斗の後を追う。 スタスタと階段を降りて行ってしまう奏斗を追って行くと、足音に気付いたお母さんがひょこり、とリビングから顔を覗
last updateLast Updated : 2025-12-11
Read more

18話

四ノ宮 香月。 俺の幼馴染で、大切な人。 同い年だけど、どこか抜けてて危なかっかしい香月の事を、俺は妹のように思っていた。 同じ時期に今の場所に引っ越してきて、家は隣同士。 そうなれば、必然的に仲良くなる。 小学校も、中学も、高校も。 俺は毎日香月と一緒に居た。 中には俺と香月の仲の良さを揶揄ってくるやつもいたけど、くだらない。 俺は香月を大事に思っているし、香月も俺の事を大事に思ってくれている。 香月から告白めいた事をされるようになったのも、俺が女の子達からモテ始めて来た頃。 そんな事をしなくても、俺は恋人なんて作らないし、香月の側を離れるつもりもなかった。 俺が彼女でも作って離れて行くのが、香月はきっと怖かったんだろう。 俺は、そう思っていた。 だけど。 ある日、いつも通り香月の告白を受け流した時。 香月の顔が傷付いたように歪んだ。 何だか無性に胸騒ぎを感じて──。 そして、ある日香月は大学の同級生に誘われて、合コンに参加した──。 その日、俺はスポンサーに誘われて居酒屋に来ていた。 話も終わり、そろそろ場がお開きになる頃合いに俺は手洗いに立った。 用を済ませて席に戻ろうとしたら、まさか香月が目の前から歩いて来るなんて。 香月も、大学の友人と飲みに来たのだろうか。 最近は、香月からの連絡が減っていたから会えたのが嬉しい。 どうせなら、香月を待って一緒に帰ろうか、そう考えた俺は、香月に声をかけようとしたけど。 「香月ちゃん」 ──は? 何で、俺以外の男に、馴れ馴れしく名前を呼ばれてる? 何で俺以外の男に可愛く笑ってる? 何で、俺を拒絶する──。 それから、俺はどこをどうやって店を後にして、帰ったのか分からない。 帰ってすぐ、俺は香月の家に向かっておばさんに挨拶をする。 約束なんてしていないけど、嘘をついて家に上がり、香月を待った。 おばさんはおじさんと食事をする約束をしていたらしく、夜遅くの帰宅になるらしい。 これは好都合だ、と思った。 香月とじっくり話をできるチャンスだし、最近、香月の部屋のベランダの鍵が開いていない事も問い詰められる。 今までだったら、いつでも俺が入れるように、と窓の鍵を開けていてくれたのに。 香月の部屋のカーテンがぴったりと閉まっている光景は、絶望にも似た感覚だった。
last updateLast Updated : 2025-12-11
Read more

19話

◇ 隣の奏斗から、痛いくらいの視線を感じて、私はじとりとした目で奏斗を見返した。 「……何」 私が低い声で、そっけなく奏斗に問う。 だけど奏斗は何がそんなに楽しいのか、嬉しいのか。にこにこと笑顔を崩さずに「何でもないよ」と告げる。 私がご飯を食べている間、奏斗はずっとそんな調子で、私は食事を終えるといつも通りに部屋に着替えに行った。 大学に向かう準備をして、下に降りる。 すると、リビングにはまだ奏斗がいた。 お母さんとお父さんは既に家を出たみたいで、家には奏斗しか残っていなかった。 どうして、奏斗がまだ家にいるのか。 不思議に思いつつ、階段を降りる。 すると、私の足音に気付いた奏斗がふと私に顔を向けた。 「香月。大学まで送る」 「──え、何で……?」 「俺も今日はそっち方面に用があるから」 「仕事でも入ってるの?」 「いや、今日は1日オフだよ。買い物にでも行こうと思って」 そうだったんだ、と納得はしたけど、奏斗の提案には頷けない。 「私と一緒に居る所を万が一撮られたら、大変でしょ。別々に行こ」 鞄を掴み、奏斗の横を通り過ぎようとしたけど、奏斗に手首を掴まれてしまい、足が止まる。 「いや、香月はそんな事気にしなくていいよ。もう出るんだろ?行こう」 「ちょ、ちょっと奏斗……!」 奏斗は、私の手を引っ張りながら玄関に向かう。 家に来た時にそこで脱いだんだろう。奏斗の帽子がそこにあって、奏斗は帽子を深く被る。 そして、上着のポケットからマスクを取り出すと、しっかりと装着した。 そして、戸惑う私を気にする事なく奏斗は私を連れて玄関
last updateLast Updated : 2025-12-12
Read more

20話

奏斗と別れ、私が大学構内に入ると、友人が声をかけてくる。 「香月、おはよう。なになに!?彼氏に送ってもらったの!?」 「えっ!?全然違うよ、ただの幼馴染!この辺りで買い物するから、一緒に来ただけ!」 友人に見られていた事に、私の心臓がどきり、と跳ねる。 この友人は、私と同じで奏斗のグループが好きで、Kanato推しだ。 遠目だったとしても、奏斗がKanato本人だと気付いてしまう可能性がある。 こんな大学で、Kanatoが居るって言うのがバレたら、大騒ぎになってしまう。 だから私は友人の興味を他に移す事にした。 「そう言えば、来週のグループワーク、どうする?」 「ああ、面倒だよねぇ……。誰かに協力してもらう?」 「誰か空いてる人いるかなぁ」 私と友人は、来週のグループワークについて話を続けた。 ◇ 香月を見送った俺は、ひらひらと振っていた手をぱたり、と下ろす。 香月の姿が完全に見えなくなってから踵を返し、香月の授業が終わるまで適当に時間を潰そうと買い物に行こうとした。 だが、途中でふと思い出す。 「そう言えば、何か連絡が来てたな……」 メールだけではなく、そう言えば電話も来ていた気がする。 今日は1日丸々オフの日だ。 それなのに、連絡がくるのは珍しい。 内容を確認しようと、俺はスマホを取り出してロックを解除する。 連絡をして来ていたのは、マネージャー。 それと、事務所の社長からも1度連絡が来ていて、驚いた。 社長から連絡が入ると言う事は、緊急性があると言う事だ。 何かあったのだろうか。 また、週刊誌か何かに撮られた? だが、俺は女性アイドルや女優なんかに手を出してはいない。 それなら、またでっち上げ……? いや、それだったら社長から連絡がくるはずがない。 俺は急いでマネージャーに折り返した。 ◇ 大学の授業が全て終わった。 私は奏斗との待ち合わせ場所に向かうために大学構内を歩いていた。 待ち合わせ場所は、大学から少し離れた場所にあるカフェ。 そのカフェは大通りに面していなくて、ひっそりとした路地裏にお店を構えている。 この大学に通っている人や、地元の人が利用するくらいの、隠れ家的なカフェだ。 駅近くのチェーン店より、見つかる可能性は少ない。 私は、奏斗に連絡を送ってから無反応のスマホに目を
last updateLast Updated : 2025-12-12
Read more
PREV
123456
...
9
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status