社長室を出て、廊下を歩く。 俺は自分に与えられた一時的な部屋に向かっていた。 すると、背後からまた駆け寄ってくる足音が聞こえる。 「Kanato、Kanato待って!」 RikOの声が聞こえてきて、俺は振り返る。 腕を広げて、抱き着いて来ようとしたRikOを横に避けて躱す。 すると、不服そうに頬を膨らませたRikOが世間では可愛らしいと評される顔で見あげて来た。 「ちょっと、Kanato。ここでも恋人のように振る舞ってくれないと駄目じゃない」 「……必要ないだろ?社長室に続くこの廊下には、今俺とRikOしか居ないんだから、振りをする必要は無い。外ではちゃんと振りをするから、人がいない場所でくらいは勘弁してくれよ……」 「んー……分かった。RikOはKanatoを困らせたいわけじゃないし……。でも、外部の人の目がある時はちゃんとお芝居してよね?」 「分かってる……もういいか?」 「うん!引き止めちゃってごめんねKanato」 RikOが手を振るのに、軽く頷いてから俺は再び部屋に向かって歩き出す。 事務所が俺とRikOの付き合いを認めた以上、スタッフやそこに所属しているタレント、アイドルの前でも恋人ごっこをしなくちゃならない。 最初はこんなにストレスを感じるとは思わなかった。 香月の姿を見にも行けない、声も聞けない。 家にも帰れない。 これじゃあ、ストーカーがRikOを諦める前に俺の方がどうにかなってしまいそうだ。 早くこの件を片付けて、さっさと家に帰れるように交渉しよう。 ◇ 去って行く奏斗の背中を、RikOはじぃーっと見つめていた。 口元はにんまりと笑みを描いていて、それに比例して目も半月形に変わる。
Terakhir Diperbarui : 2025-12-18 Baca selengkapnya