大荒れとなった第2回口頭弁論期日から一週間が過ぎた。 桜都支部の執務室には重苦しい沈黙が広がっていた。 裁判内での規律違反について、菊乃は所長の訓告にとどまった。 桐生所長自身は本局からの口頭注意で済んだ。 裁判翌日に桐生が本局へ走り、深々と頭を下げて最低限の処分に抑えた結果だった。 桐生は机の引き出しから新しい胃薬を取り出す。 「頭を下げるのが私の仕事だ……これからもよろしく頼む――イタタタ」 みぞおちを押さえながら苦笑する。 その一言に、張りつめていた空気がほんの少しゆるむ。 事務官たちの間にかすかな安堵が走った。 窓の外は冬の曇天。 薄い光が書類の山を冷たく照らしていた。 東條菊乃は、一週間前の自分の叫びを耳の奥で反芻し、肩を落としていた。 ペンを取ろうとする手は、まだ震えている。 そこへ法子が椅子にもたれ、片手をひらひら。 「――『契約自由の原則なんて、くそくらえでございますわっ!』」 菊乃の声色を真似る。 空気が一瞬止まり……事務官の一人が吹き出した。 「は、判事っ……! そのような真似をなさらないでくださいましっ!」 菊乃の頬が真っ赤になる。 だが法子はけろりと笑った。 「まあまあ、判決考えてくるから、おキクさんは気楽に待っててよ☆」 桐生は眉をひそめたが、ため息とともに合議室へ。 ――裁判官三名による評議。 円卓を挟み、裁判長の桐生重信、左陪席の法子、右陪席の真壁京太が着席する。 記録と判例のコピーが重なり、紙の匂いが漂った。 桐生が口火を切る。 「契約自由(民法521条)は私的自治の柱だ。全面無効には慎重であるべきだろう」 法子が即座に返す。 「“自由”を掲げて不均衡を固定化するなら、それはもう自由じゃない。公益の名で弱者に呪いを刻む契約は、法が否定しないと☆」 真壁が資料を繰り、冷静に言葉を置いた。 「落としどころが必要です。違法部分を切除し、残部は生かす。部分無効と一部救済。判例の流れにも沿います」 議論は数時間に及んだ。 “正義とは手続か、実質か”。 言葉はやがて結論へ収束する。 ――一部条項無効。原告の請求は一部認容。契約全体は維持。 三人は静かに頷き合った。 令和15年(ワ)第234号 桜都市水族館建設請負契約 無効確認請求事
ปรับปรุงล่าสุด : 2025-12-16 อ่านเพิ่มเติม