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守りたいもの①

last update Date de publication: 2026-04-20 18:20:10

 庭にある犬小屋は薄汚れており、中をのぞくとひどい異臭がした。

「見てください、このリード。誘拐犯にカッターか何かで切られたんですよ!」

 依頼人の奥田美晴が憤慨した様子で主張し、間遠桜まどうさくらは残されたリードを観察する。

 革製のリードだった。直線的な切り口から、一見すると鋭利な刃物で切られたように見える。

 間遠がハンカチを使って持ちあげると、表面がぼろぼろとはがれ落ちた。

「うーん」

 断面をよく見るとガタガタになっている。刃物ではないな、と間遠は思った。

 庭はほとんど手入れされていなくて、雑草が伸び放題になっていることから、リードが劣化していたのは事実だろう。

 間遠がそっとリードを地面へ戻すと、奥田美晴はたたみかけるように言った。

「お友達が教えてくれたんですが、隣町にうちの子そっくりの犬を飼ってるお宅があるんです。

 きっと、その人がうちの子を誘拐したに違いありません!」

 六十歳を超えた依頼人は、どうにも感情の制御ができないタイプのようだ。
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  • 久我探偵事務所の灯りの下で   ウカポン友の会①

    「神崎さーん!」 一月も半ばに入り、寒さがより厳しくなった頃。 久我探偵事務所に名城璃久がやってきた。 神崎寿直は手を止めて顔をあげる。「どうしたの、璃久ちゃん」「明日って、空いてますか?」 神崎の机へまっすぐに寄ってきて、可愛い顔をした青年はそう言った。 中性的なショートボブにぱっちりとした目、色白で小柄な背丈から、一見すると女の子のようだ。「うん、特に予定はないけど」「じゃあ、一緒に原宿行きませんか? 実は明日、親戚の子とウカポンショップに行

  • 久我探偵事務所の灯りの下で   逆さまの絵本③

     ちせの母親が戻ったのは六時を過ぎてからだった。「まま!」 気づいたちせが声をあげ、母親が間遠を見て警戒するような顔になる。 間遠が何か言う前にちせが説明した。「このひと、まどーさん。ちーちゃんにたくさんえほんよんでくれたの!」「えっ」 母親が驚き、間遠はポケットから名刺を取り出して見せた。「久我探偵事務所の間遠と申します。今日は職員の松田さんから依頼されて、館内に張り込んでいました」「えっと、何か……?」 母親の警戒はまだ解けていない様子だ。

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