「芽衣ちゃん、スターに乗せてもらってもいいかな?」宗方陸の言葉に、芽衣はチラリとコーチの方を見た。彼女はここでの判断、特に馬に関することは自分で判断せず、必ずコーチに訊くよう怜士に言われていた。「例え乗り手が悪かったのだとしても、人にケガをさせたというだけで馬は処分される可能性がある。だから、自分で判断してはいけない」そう言われた。意味がわからなかったから尋ねると、「スターを殺したくなければ、簡単に返事をしてはいけない」と言い直された。それは芽衣にとってとてもショックな言葉だった。すたーが死んじゃうなんて、いや!だからこの時、芽衣はとても緊張した。陸のことは信頼している。彼はいつも優しいし、他の人みたいに自分にイライラしないみたい。初めて会った時もすごくゆっくりお話してくれた。でもーここでもし、だめって言ったら怒っちゃうかな…?そう思って、芽衣は少し悲しくなった。この乗馬クラブは会員制で、身元の確かな人しか入れない。コーチは専属で付けることもできるし、いろいろな人を付けることもできる。馬場は広々と2面あり、一つはコーチに教えてもらいながらゆっくりと馬を歩かせたり、走らせる練習をしたりする初級コース用。もう一つは経験者用で、中では自由に馬を操ることのできる者たちが、思い思いに乗馬を楽しむ為のものだった。芽衣はもちろん初級コースで、ゆっくりとスターと乗馬を楽しんでいた。彼女に付いているコーチは専属で、怜士が選んだ人物だった。怜士は、芽衣が乗馬クラブに通うことに決めたことを知って、すぐさま設備や環境の整った施設を探した。彼女が通おうとしていたクラブはあまりにも人の出入りが多く、彼女を守るのに適した環境ではなかったからだ。だが探したからといって必ず見つかるわけでもなく、仕方なく彼は尚と芽衣に、「准が馬を手配しているから」と少し待つように伝え、その間に設備の整ったとある会員制乗馬クラブを買い取ったのだった。といってもオーナーは雇われでそのまま残し、表向き怜士が所有していることを隠した。そしてこの施設は、表は綺麗に整えられていたが裏の方は明らかに劣化している所があった為、急いで全面的な改装を施し、以前よりも設備も何もかもを新しく整え直した。その為中の人の調査は後回しにしたのだが、不正などを防ぐ為に出来る限りの対策をとった。彼は施設
Last Updated : 2026-01-23 Read more