芽衣が入院して数カ月。白血病の治療は、とにかく辛そうだった。初日から沢山の点滴が入って、あっという間に顔が浮腫み、ダルそうにしていた。強い薬を使う分、投与後は早く体外に排出する必要があっての点滴なのだが、薬は苦いし、沢山飲まないといけないし、身体はダルいし、頭痛もする。「ママ…」芽衣の弱々しい声に、尚は慰めの言葉しか言えない自分が情けなかった。しかも免疫がかなり落ちてきている為、病室からも出られない。誰にも会えない。好きなものも食べられない。ないないづくしで、精神的に浮上することがなかった。今の芽衣の楽しみは、准との毎日のビデオ通話だけだった。『芽衣、薬はちゃんと飲んでる?』「うん…」今日の准は少し明るめのスーツを着ていた。この通話が終わったら、すぐに会議に出るんだそうだ。『苦い?』「苦い…すごく」顔を顰めて呟く。准はそれを見て微笑った。『ご飯は?』「食べてる。…准ちゃ、同じこと言う」唇を尖らせて拗ねたようにそう言うと、彼は「ごめんごめん」と苦笑した。『芽衣が心配なんだよ』「うん」優しい声と眼差しに、心が温かくなるのがわかった。だが…「准ちゃ…ごめんね。また明日ね」『え?芽衣?ー』プツ…ッ突然のサヨナラに准は慌てているようだったが、芽衣は構わずに通話を切った。その瞬間ーオエェ…ッ…グッ…ゥ゙ゥ゙…ッ「芽衣!」突然吐き出した芽衣を見て、通話の邪魔をしないようにと少し離れた所にいた尚が駆け寄ってきた。洗面所に行くのは間に合わなかったようだったが、芽衣は自分のベッドに常に置いているタオルで口を塞いでいた。尚はナースコールを押し、吐いた旨を伝えた。そして「大丈夫よ。我慢しないで。吐いてもいいよ」我慢する娘の背中を擦りながらそう言った。最初の、点滴のせいで浮腫んでいた顔の面影は今は全く無くなって、彼女の頬はこけ、青白くなっていた。身体は常に吐き気を伴って力も入らず、このところはビデオ通話を終えるとぐったりとしていることが多かった。それでも芽衣は精一杯元気に見えるように笑って、日課のようになっている通話を続けていた。やめたらきっと心配するから…。いつだったか、彼女はそう言っていた。尚は涙を滲ませて赤くなった目で、芽衣に微笑みかけた。「少し横になってなさい」「うん。ママ…ごめんね」小さな声でそう
Last Updated : 2026-03-05 Read more