結果として。怜士は2人に対して業務上横領の被害届を出した。野田がオーナーであった頃のものに関しては怜士に関係はないが、それでも彼が実質このクラブの経営者となってから、およそ10か月の間に野田らが不当に懐に収めた金額が大きかった為、下した判断だった。彼には相応な罰が言い渡されるだろう。そして島田に関しては、確かに野田から分け前をもらってはいたが、彼の場合父親を盾に取られて半ば脅されたという事情があったことから、お金を返還することを条件に示談で済ませることにした。ただし、クラブはクビになった。彼にしても、これだけ公になってしまったことから残ったところで居心地の悪い思いをするだろうから、良かったのかもしれない。中原は自業自得だと思いながらも彼の真面目さと、その管理能力の高さを惜しいと思わずにはいられなかった。数日後、島田の代わりとなる人物が新しく配置され、彼はこの感傷を胸にしまい込んだ。*A国。コンコン…オフィスのドアをノックする音に、報告書に目を通していた准が視線を上げた。「入れ」その言葉が発されると同時にガチャとドアが開き、秘書の本田が窺うように入って来た。「社長ー」「追い払え」准は本田の困ったような表情を見ただけでその用件を察し、冷たく言葉を遮った。「……」答えは出したのにまだその場に佇み、何か言いたげにしている本田に、既にまた書類へと視線を落としていた准が苛立たしげに眉を寄せた。「どうした?何かあるのか?」「その…」本田は言いたくなかった。言えば准の機嫌が悪くなることが分かりきっていたからだ。でもだからといって、このまま黙っているわけにもいかなかった。「橋本さんがいらっしゃいました」そう言うと、准は手にした書類を静かに横に置いた。そして言い含めるように口を開いた。「彼女のことをいちいち俺に報告するなと言わなかったか?関わる気はない。追い出せ」「いや…ですが社長、今日は相良(さがら)社長とご一緒に来られてまして…」「相良…?」准はピクリと眉を上げた。彼はつい先日のパーティーで知り合った、相良亮介(さがらりょうすけ)という人物を思い出した。A国の主要産業の一つに食品産業があるのだが、この相良という人物は広大な牧場に牛や豚、鶏を飼い、食肉として自社の工場で加工し、そしてそれを自社で経営するレストランチェーンや
最終更新日 : 2026-02-06 続きを読む