「おめでとう!」周りから拍手とおめでとうの声に迎えられて、真田准は驚いて玄関先で目をパチパチとさせていた。目の前には父親である真田怜士と、自分にピアノを教え続けてくれているピアニストの浅野美月、それから叔父の真田聖人と、その妻で美月の親友でもある如月尚。彼女は人気作家でもあった。それから一番下の叔父の英明。そして真田家に仕える執事や使用人たち。皆が自分の大学合格を祝ってくれていた。残念ながら、進学先に不満を持っていた祖父母はここにはいないようだが、構わない。自分は今、目の前にいる人たちの祝福だけで十分だった。「准、よく頑張ったな」「はい。ありがとうございます」父親からの褒め言葉に照れながら、チラリと美月を見ると、彼女も嬉しそうに微笑っていた。「先生」「准くん、合格おめでとう。これからも頑張ってね」「はい。これからもよろしくお願いします」ペコリと頭を下げた。するとその時、トテトテと歩いてきた従妹、聖人と尚の娘の真田芽衣(さなだめい)が、准の足にギュッと抱きついてきた。「じゅんちゃ、おめえとー」その舌足らずな言葉に、一気に場の雰囲気が柔らかく慈愛に満ちたものになった。准は彼女の頭を優しく撫でて「ありがとう」と言うと、ひょいとその身体を抱き上げた。「きゃ〜」楽しそうに笑い声を上げる芽衣はもうすぐ6歳になる女の子で、誰もが目に入れても痛くないほど可愛がっていた。*彼女が生まれた時、医師は言いにくそうに疲労困憊の尚に伝えた。「大きな病院での検査をお勧めします」と。どういうことか尋ねると、医師は「赤ちゃんには障害があるかもしれない」と言った。そこで尚は産後の療養もそこそこに聖人と大学病院に行き、〝芽衣〟と名付けた娘の検査をお願いしたところ、難しい顔をされたのだった。「正直に言いますと、まだよくわかりません。脳波の検査はもう少し大きくなってからでないと、診断が難しいんです。ただ言えるのは、お子さんの反応から見て、発達に何らかの障害がある可能性があります。定期的に診察しますので、予約を入れておきます」そう言われて、尚は重く頷いた。この時点で、彼女は聖人との話し合いが必要だと思った。真田家のような家に障害のある子どもがいることを、彼らが受け入れることは難しいだろうと思ったのだ。大丈夫。一人でも子供は育てられる。尚はそう覚悟して
Last Updated : 2025-12-30 Read more