「なるほど。つまり、あの女は芽衣が倒れたことをお前にすら報せなかった…ということか?」中原の報告に、怜士の眉がひそめられた。運転手の話では、彼女は病院に行くことすらしなかった。そのまま連絡もなく帰宅して、使用人に部屋まで運ばせ、寝かせておいた。それだけだ。その対応に不満を抱いた使用人が執事に報告し、家庭医を呼んで診察をさせたというわけだった。そして友梨は、怜士にもこの事を報告しなかった。それを聞いて彼の執務机の前に立つ中原は、神妙に頷いた。「おそらく、このまま黙ってやり過ごすつもりだったのではないかと…」彼は友梨が、この件を隠蔽しようとしたのではないかと疑った。なぜなら、バレれば彼女の失態となる。だから中原にも言わず、執事にも見られないよう連絡もなく帰宅し、尚且つ、怜士への報告義務すら無視したのではないだろうか…?中原の考えを聞いて、怜士は意味が分からないというように眉をひそめた。「なんだそれは?うちは空き家じゃないぞ?本気で隠し通せると思ってるのか?」「たぶん…?」言った中原自身もバカバカしいとは思うが、あの時の、自分に見つかった時に浮かべた彼女の表情を見た限り、そうとしか思えなかった。怜士は久しぶりに呆気に取られた。こんなバカを見たのが久々すぎて、怒りよりも呆れが先にきてしまったのだ。そもそも今日、クラブへの送迎に自分の運転手を行かせたのは、芽衣と友梨の様子を彼に見させる為だった。怜士は、最近なぜか芽衣の様子がおかしいように思った。一見いつもと同じようにも見えるのだが、ふとした瞬間に翳りのようなものが表情に表れる。友梨と一緒にいる時、特に仲が悪そうには見えないのだが、どこかよそよそしさが感じられる。芽衣に…というより、友梨の方に。彼女の瞳の中に、芽衣に対する真摯な想いが見当たらないのだ。ただ淡々とした、温度の感じられない視線が向けられているように感じた。彼女は芽衣が直接選んだボディーガードだ。〝選んだ〟ということは、それなりに〝合う〟と思ったからだろうし、それならその時は、彼女もそんな感じではなかったのではないだろうか?じゃあ、なぜ今はそうなった?芽衣と一緒に行動をするうちに、思っていたよりも面倒だと感じた?いや、でもそれならそう言えばいいだけの話だ。彼女には、最初に言い含めてあったはずだ。「もしやっていくうちに
Last Updated : 2026-02-20 Read more