あっという間に時が過ぎ、年末が近付いてきた。その間准は会社の幹部に自分は国に戻り、代わりに今度は怜士が来るということを伝え、引き継ぎの書類などを整えていた。それだけで彼らはグループの代表が変わることを知り、口々に祝いを述べ、そして激励してくれた。それからの会議にはビデオ通話で怜士も参加し、次々に改善するべきことなどを指摘して、次第に会社を自分流の運営方法に変えていった。准も甘い方ではなかったが、これからは更に厳しく管理されることになりそうな予感に、人々は口元を引きつらせるしかなかった。そしてー。「理那人は?」飛行機の中、准が尋ねた。ファーストクラスの座席。座っているのは、自分たちだけだった。プライベートジェットを使わない時、准は、怜士がそうしていたようにファーストクラスの空間に誰も立ち入らないよう、座席を全て購入する。理由は…よくわからない。が、いつだったか怜士に訊いてみたところ、適当に「煩いから」とだけ言っていた。「煩い」…それは視線なのか、存在なのか。とにかくそうしたことに准も慣れてしまって、いつもこうしていたのだった。一度、もったいないかなと思い、そのまま他の乗客と一緒に乗ってみたことがあったのだが…。確かに煩かった。何が、と言われたらよく説明できないのだが、何をするにも人の視線が煩かったのだ。それ以来、父と同じこのやり方を通すことにしていた。今回は准、本田、そして有紗の3人のみだ。准の質問に、有紗が答えた。「あの友梨っていう子と一緒に、I国に戻ってるわ」「へぇ…?」彼女が言うには、友梨はどうやら〝恋人として家族に紹介される〟と思っているようだ…というのだ。「紹介するのか?」「ええ。一番上の兄に」有紗はそう言いながら、人差し指を上に向けて立てた。准はそれを聞いて、フッ…と嗤った。「なんだ?たらい回しにするつもりか?」それには彼女はひょいと肩を竦めた。「選ぶのは、彼女よ」「…まぁ、そうだな」そう言うと、もう准はこの話題に触れなかった。彼は目を瞑って眠ろうとしていた。これから国に帰っても、しばらくは真田邸に戻れない。万が一を考えて、家の者にも感染者などを出さない為、この3人はホテル暮らしをする予定だった。芽衣は今、最後の治療に入っている。これが無事に終わったら身体が回復するまで病院にいて、それから、いよいよ
Last Updated : 2026-03-19 Read more