予定日を一週間後に控えた夜、眠れずにリビングへ降りた。壁掛け時計の秒針が、昼間より大きく聞こえる。街灯の光がソファの背を斜めに照らし、床には窓枠の影が長く伸びていた。 座ってしばらくすると、廊下で足音がした。征也は私を見ると何も言わず引き返し、寝室からブランケットを持ってきた。 「起こしちゃった?」 「隣が空いていれば分かる」 膝へ掛けられた布には、まだ寝床の温もりが残っていた。彼の重みでソファが沈む。私は身体を横へずらし、その肩へ寄りかかった。 「二回目なら、もう少し平気だと思ってた」 思っていたより小さな声になった。征也は私のお腹へ目を落としたまま、腕を背中へ回す。 「俺もだ」 時計が鳴っている。陽向の時には、怖いことを一つ口にすれば、十の手配が返ってきた。今は背中の掌が温かい。私は目を閉じ、もう少しだけここにいたいと思った。 「結衣、あなたに似たら大変ね」 「陽向と二人でお前を取り合うのか。それは困る」 疲れたような真顔だったので、笑ってしまった。征也がこちらを向き、何か言おうとした。その時、お腹の奥がきゅっと締まった。 彼のシャツを掴む。息を吐こうとしても、うまく出ない。 「莉子?」 私の顔を見て、征也が立ち上がった。病院、と言いかけた声を、私は袖を引いて止める。 「少し待って。今の、どのくらいだった?」 征也は時計を見た。スマートフォンを取る手がソファの隙間を探し、膝へ落としてから握り直す。数十秒すると痛みは引き、私はようやく身体を起こせた。 「前駆陣痛かも」 彼は座り直したが、もう背中を預けなかった。時刻を入力する指の横で、画面の光が手首の骨を白く照らしている。 「会社より細かいね」 「会社は代わりがいる」 短く返した後も、指は止まらない。からかうつもりだったのに、喉の奥が詰まった。私はブランケットの下から手を伸ばし、その手首へ触れた。 次の痛みを待っている間、征也は一度も席を離れなかった。窓の外を車が通り過ぎ、冷蔵庫の低い音が止む。痛みは戻らず、先に眠気がやって来た。 「今は大丈夫。ベッドへ戻ろう」 彼は顔を上げたが、すぐには頷かなかった。私は画面に並んだ時刻を見てから、彼の肩に頬を寄せる。 「また痛くなったら、起こすから。隣にいて」 征也はスマートフォンをしまった。差し出
Last Updated : 2026-04-10 Read more