結衣と陽向が、同じ夜に熱を出した。リビングの灯りを落としても二人とも眠れず、私が身じろぎするたび、服を握る手に力が入る。子供たちの髪は汗で湿り、膝に触れる体温がいつまでも高かった。 征也が帰ってきたのは、ようやく陽向がうとうとし始めた頃だった。ネクタイを外しかけて手を止め、小児科でもらった指示書を拾い上げる。 「水は飲めているか」 「二十分前に、少しずつ。結衣は三十八度一分、陽向は三十七度八分だった」 彼は二人の胸元を見ていた。寝息の間隔を追っているのだと気づき、私は声を落とす。 「今は落ち着いてる」 征也は頷き、飲み物と着替えを手の届くところへ運んだ。グラスを置く時だけ、底がテーブルへ強く当たった。陽向が眉を寄せると、彼は動きを止めたまま息子の顔を覗き込んだ。 薬の時刻を書き留め、体温計を枕元へ置く。落ち着いて見えるのに、外し忘れたネクタイは首へ残ったままだった。 夜中、陽向が喉の渇きで目を覚ました。 「パパ……みず」 征也はすぐに膝をつき、背中を支えた。ストローを差し出すと、息子は二口ほど飲み、顔を背ける。彼はグラスを下げ、唇の端についた水を拭ってやった。 「ありがと」 その声に手が止まった。 「……寝ろ。ここに置いておく」 陽向は頷く代わりに、父の袖へ頬をつけた。征也が腕を抜くまで、少し時間がかかった。 「今度はお前だ。一時間寝ろ」 「私は平気」 「三時間前にも同じことを言った」 言い返そうとして、欠伸が出た。結衣が服を引くので、私はもう一度抱き直す。 「でも、パパだと泣くかも」 「泣かれたら、泣かれたまま抱く。お前が倒れるよりいい」 差し出された腕へ娘を預けると、肩から急に重みが消えた。結衣は小さくぐずったが、征也が歩き出すと、その胸へ顔を埋めた。 私はソファに横になった。まだ泣くかもしれないと耳を澄ませているうち、床をゆっくり往復する足音が遠くなった。 次に目を開けた時、カーテンの縁が白んでいた。横に敷いた寝具で子供たちが眠り、その間に征也が座っている。壁へもたれた頭が少し傾き、片手は結衣の背へ置かれたままだった。 二人の額へ順に触れる。昨夜の熱さが薄れていたので、体温を測り直した。表示を見た途端、息が長く漏れた。 征也が目を開ける。私は体温計を見せ、頷いた。 「……よかった
Last Updated : 2026-04-20 Read more