「――その必要はないよ……アイたん。」 暗闇を背にナウチチェルカが立っていた。 その瞳には|一条《いちじょう》の光も差していない――。 ◇◆◇ 「あっ!……あの!……ナウチチェルカ教官。」 「ん?……おや貴方はアイ・ミルヒシュトラーセ様ではございませんか。うつくしき貴方が、このような卑しいエルフ風情に何か御用ですか?」 ……きっとボクは貼り付けたような薄気味悪い笑顔をしているんだろう。でもそれもしょうがないだろう? 「え!……えっと、その|此処《ここ》は学校で……わたくしは|此処《ここ》では一学生なので!できれば、普通の生徒に接するようにして頂ければ……。」 ――! 今までの権力者のガキどもとは、真逆のことを言うな。この子は。 いや、でも信用するな……多分これは演技だ。差別の権化であるエレクトラ|辺境伯爵《へんきょうはくしゃく》に指示されて、エルフであるボクを学園から追い出そうとしているんだろう。 たぶん……これを信用してボクが|不遜《ふそん》な態度をとった|途端《とたん》にケチを付けるために、今ボクに笑いかけているんだろう。 「……そうは仰いますが、|此処《ここ》は学校であると同時に、貴方様の家が統治する国の中でもあります。|僕《やつがれ》なんぞがアイ様を他の生徒と同列に扱えば、秩序が乱れます。 ……それに……酷なことを言うようですが――」 ……あぁ、言ってはいけないことが口から出そうになる。寝不足でイライラしているとダメだな……ほんとうに。 「――“貴方様の|御母上《おははうえ》”が|推進《すいしん》している異種族差別政策に、|駁《ばく》するような発言は控えたほうがいいと思われます。」 あぁ、きっと今のボクは厳しい目をしているんだろう。こんなちいさな子どもに
آخر تحديث : 2026-04-15 اقرأ المزيد