جميع فصول : الفصل -الفصل 70

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28. 恋をしたのはナナメ45°の横顔に  Your profile is everything in my world.

「えっと、あの……?聞こえてる、かな?」 目は離せない、だが口は開けない。クレジェンテも多くの生徒と同様に、密かにアイ憧れていたからだ。いつもアイたちがきゃいきゃいと話す言葉を、教室の隅で盗み聞きしていたし、机に突っ伏して頭を乗せた腕から微かに頭をもたげ、いつもちらちらとその表情を盗み見ていた。それだけで幸せだった。 つらいことが待っている学園に向かう朝、寮からでる重い足取りをいつも軽くしてくれるのは、天使に会えるからだった。まだ寝ぼけ眼で暗い寮の部屋の玄関から、眩い太陽の光の下に一歩踏み出させるのは、いつも思い返した斜め40度から見たお姫様の横顔だった。 その学園の天使お姫様が、その憧れの人が、今クレジェンテの眼の前にたち、|真《・》|正《・》|面《・》|か《・》|ら《・》こちらを見ている。あまつさえ言葉をかけてくれている。 「あ、あのー、おじゃま、だった……かな?」 ――ハッ、天使の顔が曇っている!まだ何も話していなかった!何か話さないと!でも何を?僕なんかが学園の天使お姫様に?何を?いい天気ですね?いや、はじめまして?自己紹介からか?やばい!とりあえず何か言わないと! 「あっ、……こん……にちわ。ゲホッ……あっ……いい……天気……ですね……ゴホッ。」 ――やばい人と話すのが久しぶりすぎて、声がうまく出せなかった。絶対に気持ち悪いと思われた。終わった……。 「はい、こんにちは!」 ――ま、まぶしいー。笑顔が眩しすぎてもはや発光してるまである。 「でも……いい……てんき?……かなぁ?」 ――はっ、今日土砂降りじゃん!終わったコミュニケーション能力の低さがバレた!一番バレたくない人に。おわった……。 「でも、こんなに雨が降ってると、逆にいい天気!みたいな!ことありますよね!」 ――てんしぃー。性格が良すぎてもはや|菩薩《ぼさつ》まである。
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29. 王女と乙女の出会い La Princesse rencontre La Pucelle

パンドラ公国には大きく分けて2つの派閥がある。一つはパンドラ公国の公王を支持する公王派。彼らはファンタジア王国の王の子であり、正式にパンドラ公国に“|君《・》|臨《・》|す《・》|る《・》|権《・》|威《・》”を与えられたツエールカフィー公王を|信《・》|奉《・》している。そして彼らは信心深く、公王の|礼賛《らいさん》する|痴愚《チグ》神を信じ、公王の権力はチグ神に与えられたものであるという、|王権神授説《おうけんしんじゅせつ》の態度を|執《と》った。 チグ神とは、公王自らが|紐解《ひもと》いた、ネーデルラント系|地獄《パンドラ》人の書いた『チグ|神礼賛《しんらいさん》』をその根拠とする神である。彼らはこの書物を聖典と|崇《あが》めている。チグ神とは|地獄《パンドラ》産の神なのである。つまり、ファンタジア国王に“権威”を与えられ、チグ神に“権力”を与えられた公王こそが真なる統治者であると。 彼らの多くは文官にあたる者たちで、文民たる|政《・》|治《・》|家《・》|が《・》|軍《・》|隊《・》|を《・》|統《・》|制《・》するという、“|文民統制《シビリアン・コントロール》”こそが〘最良の〙|統治《とうち》方法だと考えている。そしてミルヒシュトラーセ辺境伯が権勢を振るっている現状に不満を抱いている。彼らは、辺境伯派の政策の|殆《ほとんど》ど全てに無条件に反発し、時には|対《・》|案《・》|も《・》|出《・》|さ《・》|ず《・》に辺境伯|憎《にく》しで反対する。そうして、議会を混乱させるのだった。 しかし、そのおかげもあって彼らは辺境伯派の推進する差別政策や分割統治政策にも反発し、|比《・》|較《・》|的《・》差別意識が少ない。ただ彼らが差別とみなさないような行為は、無意識のうちに平気で行うので、|比《・》|較《・》|的《・》|性差別主義者《セクシスト》でないという評価にとどまるのだが。 アイの同級生であり、公王の娘である、ラアル・ツエールカフィーナ・フォン・ファンタジア王女もこちらに属する。 ◇◆◇ そしてもう一つの主流派閥は、ミルヒシュトラーセ辺境伯爵派で
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30. 痴愚神礼讃 Moriae encomium

王族である、ラアル・ツエールカフィーナ・フォン・ファンタジア王女殿下と、貧民孤児であるオトメアンのオルレとの友情は当人同士以外にはとても奇妙に映った。だが2人にとってはお互いはただのラアルちゃんとオルレでしかなかった。 勿論、王族と孤児の常識の違いに驚かされることは多々あったが、ラアルは次期国王候補の一人として、積極的に|民草《たみくさ》の生活やその苦労の種を知ろうとし、|躊躇《ためら》いなくオルレに教えを|請《こ》うた。オルレもそんなラアルの誠実な態度には救われるのだった。 「オルレは何でも知ってるのね!すごいわ!”さすが私の親友”ね!」 と|臆面《おくめん》もなく褒められるたびに、これまでの人生で染み付いた卑屈さが少し、ほんの少しずつ、でも確実に|剥《は》がれ落ちていくような気がした。今までは自分を定義するものが、貧民、親なし、孤児院出身、努力だけが取り柄の、オトメアンのオルレだった。 しかし、人気者で|獣神体《アニムス》の“ラアルちゃんの親友の”オルレという定義が加えられたことで、少しだけ自分を誇れるようになった。今でも引っ込み思案で人見知りだったが、ラアルちゃんに手を引かれている時だけは、すこし強くなれた気がした。あえて|悪《あ》しざまに言うと、調子に乗っていたのである。 暗記科目だけが取り柄のオルレが、容姿端麗、才色兼備で何でもできる人気者のラアルといて、コンプレックスが刺激されないわけではなかった。自分といる時に、他の貴族のクラスメイトや、平民の同窓生の悩みを解決するために|奔走《ほんそう》しだして、置いていかれることもままあった。 その他大勢のラアルの信奉者になれていればこんな気持ちにはならずにすんだ。しかし、対等な親友になってしまったがゆえに、その決して対等でない|遥《はる》かなる断絶が目につくようになってしまったのである。それは木が内側から腐るように、オルレの心を|蝕《むしば》んだ。ラアルがそんなことを気に|留《と》めもしない、いい意味で快活な、しかしどこか無神経な物言いをするのも、|腐食《ふしょく》に|拍車《はくしゃ》をかけるのだった。
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31. 永訣の夕 I loved you.

「……え?……何か言っ――」 「なんで!!なんでなんで!そんなことが平気で言えるの!?」 「オルレ……?どうしたのよ急に……。」 「急に!?そっちからしたら急でしょうねぇ!でも私はずっと思ってた!ずっと!!」 ――ああ、こんなこと言っちゃいけないのに、唯一やさしくしてくれる人になんでこんな。|や《・》|さ《・》|し《・》|く《・》|し《・》|て《・》|く《・》|れ《・》|る《・》? 私はずっと|し《・》|て《・》|も《・》|ら《・》|っ《・》|て《・》|た《・》の? ずっと友達だと思ってたのに―― 「ずっと!!友達だと!親友だと思ってたのに!|施《ほどこ》しで私と一緒にいたの!?私がかわいそうだから!?」 「オルレ、今の貴女は|ほ《・》|ん《・》|と《・》|う《・》|の《・》|貴《・》|女《・》|じ《・》|ゃ《・》|な《・》|い《・》|わ《・》!元の貴女に戻って!」 「ほんとうの私を勝手に決めないでよ!!これも私なの!これが私なの!!いつもいつも馬鹿にされるから、根暗で人とうまく話せなくて|俯《うつむ》いて|妬《ねた》んでばかりいる!|羨《うらや》んでばかりいる!いっつも馬鹿なクラスメイト|共《ども》の死を願ってる!恵まれたヤツらが|私《・》|の《・》|と《・》|こ《・》|ま《・》|で《・》|落《・》|ち《・》|て《・》|き《・》|て《・》|く《・》|れ《・》|る《・》のを絶えず願ってる!それが私なの!!」 「オルレ!貴女はそんな人じゃない!」 「|そ《・》|ん《・》|な《・》|人《・》|じ《・》|ゃ《・》|な《・》|い《・》?なんで決めつけるのよ!見下すだけじゃなくて自分の思い通りの人間じゃないと許せないの?!私は、私はぁ……。貴女の思い通りの私じゃなかったら見捨てるの?!馬鹿にするの?!みんなみたいに!!」 「私が知ってる貴女はもっと――」 「もっと何よ!!声がちいさい?根暗でいつも人気
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32. しね、ブス、しね! Die, Ugly, Die!

あの“|永訣《えいけつ》の|夕《ゆう》”のあとからラアルとオルレは|袂《たもと》を|分《わ》かった。一緒の寮の部屋も別れた。ラアルが権力に物を言わせて、学校に無理やり相部屋にさせて、2人で笑い合った部屋だった。その時に、その部屋で過ごした思い出さえも2つに別れた気がした。 ラアルもオルレも頭が冷めてから考えれば、言い過ぎだったと相手に謝ろうと何度も考えた。しかし、口論の内容がそれぞれの|生い立ちと過去《バックグラウンド》と|自己同一性《アイデンティティ》に深くて根ざしたものだったので、それを認めてしまうと今までの|自《・》|分《・》|の《・》|人《・》|生《・》|を《・》|否《・》|定《・》|し《・》|て《・》|し《・》|ま《・》|う《・》|よ《・》|う《・》|な《・》|気《・》|が《・》|し《・》|て《・》、どうしても謝れなかった。 ◇◆◇ そうして、ラアルは上流階級で、美人だと噂されている友数人とつるむようになり、オルレは独りに戻った。ラアルは|無闇矢鱈《むやみやたら》に人の悩みを聞いて回ることをやめ、表面的に人とうまくやる方を選んだ。 しかし、新しい友人たちがラアルと気まずそうなオルレを馬鹿にして、彼女に取り入ろうとした時は元親友のために|諍《いさか》いを起こすことを|厭《いと》わなかった。それが、ラアルに|遺《のこ》された死んだ友情への|手向《たむ》けの方法だった。そうして表面上、オルレはよくある普通の惨めな学園生活にもどり、ラアル元の充実した学校生活に戻った。 ラアルが自分に隠れて話す|お《・》|友《・》|達《・》の陰口を聞くまでは。友人たちが反感を持ったのには訳があった、ラアルがいつも喧嘩別れしたオルレを|庇《かば》うからだった。自分でもハブっている(ように見える)くせに、善人面で守ろうとするのが理解できなかったのだ。自分で追い落としておいて、助けるという聖女ヅラをするための|自作自演《マッチポンプ》にしか見えなかったのだ。 ――つまり、|オ《・》|ル《・》|レ《・》|を《・》|憎《・》|み《・》|き《・》|っ《・》
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33. 「生まれてきてくれて、ありがとう。」 "Thank you for being born."

いくらミルヒシュトラーセ辺境伯派の強いマンソンジュ軍士官学校とはいえ、パンドラ公国の王女である、ラアルに敬意を払わないわけにはいかなかった。そして、取り入ろうとする者も大勢おり、それには王女のお気に入りとなってうまい汁を吸おうとする以外の|思惑《おもわく》を持った者たちもいた。 パンドラ公王派がエレクトラと折り合いの悪いアイを|躍起《やっき》になって自陣営に取り込もうとするのなら、わざわざ公王派の息のかかったチグ神学校から|辺境伯爵《エレクトラ》の建てたマンソンジュ軍士官学校に編入してきた、ラアルを辺境伯派に引き入れようとするのは、ごく自然なことだった。 彼らの誤算は、ラアルは母であるツエールカフィー公王と|仲違《なかたが》いしたわけではなく、|寧《むし》ろ母子としては、アイとエレクトラとは正反対に、理想の関係を|築《きず》いていたこと。そして、そもそもラアルにマンソンジュ軍士官学校への編入を勧めたのは、公王その人だということだった。 公王の思惑としては、まず何よりも、傷ついた娘に新しい環境を与えてあげたいという母親の|慈愛《じあい》。その為に、比較的王族を神の|似姿《にすがた》ではなく、|人《・》|間《・》|扱《・》|い《・》してくれるであろう辺境伯派の強い|軍閥《ぐんばつ》の学校を勧めた。そして、王女が国を二分している対立派閥とうまくやることで、国に|遥《はる》かなる恩恵をもたらすことを期待した、公王としての|策謀《さくぼう》があった。 エレクトラはアイを|使《・》|い《・》公王派を|完膚《かんぷ》なきまでに叩きのめすことしか頭になかったが、ツエールカフィー公王は自陣営だけでなく、国全体を憂い、ラアルに|協《・》|力《・》|し《・》|て《・》|も《・》|ら《・》|っ《・》|て《・》、あわよくば国を|蝕《むしば》む不要な対立構造を|抜本《ばっぽん》的に改善しようと思っていたのだ。この意味でもアイとラアルの立場は真に正反対と言えるものだった。 王女が辺境伯爵に|与《くみ》するために軍学校に来たのではないと|悟《さと》った人々は、一人また一人とラアルから離れていった。こちらに|阿《おもね》る気がないのな
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34. 王女と美の出会い  I meet Beauty.

――さぁ、どんな娘かしら?どんな奴かしら?どこに居る?やっぱり|高慢《こうまん》ちきな気に食わないやつかしら。 ……ざわざわと|国民《ニンゲン》どもがうるさいわね。まぁ、この国いちばんとお母さんに褒められる、私の美貌を前にしては仕方のないことね。目に焼き付けなさい。ニンゲンども。 ◇◆◇ 突然の|闖入者《ちんにゅうしゃ》に教室は騒然とし、ざわざわと小声で色んな言葉が飛び交った。その|喧騒《けんそう》を意にも介さず、生徒たちのざわめきを切り裂くような確かな足取りで、ラアルは教壇の方へ歩いていく。そして|教壇《きょうだん》に両手をつき、高らかに宣言する。 「アイ・ミルヒシュトラーセはいるかしら!美しいこの私!ラアル・ツエールカフィーナ・フォン・ファンタジア様がわざわざ会いに来てあげたわよ!」 しん……と教室が静まり返るが、ラアルは物ともせずに続ける。 「高位の者が自ら下位の者に会いに来るという、普通は絶対にあり得ない|僥倖《ぎょうこう》を!分かっていないのかしら?これがどれだけ恵まれたことなのか!王族への礼を欠く気かしら?アイ・ミルヒシュトラーセ!!」 |静寂《せいじゃく》の支配する教室のなかで、うつくしい声が聞こえた。 「あっ!あのっ!申し訳ありません!えっと、わたくしがっ!」 「アイちゃん様!しっー!いい子だからっ!静かにしてっ!絶対ヤバイって!」 右奥の隅、一番低い位置にある教卓から後ろに行くほど段々と高くなっている教室の、一番高い位置から声が聞こえた。ラアルの眉根がピクッと動く。 「アイちゃんさま……?アイ・ミルヒシュトラーセね!そっちにいるのね!今から行くから逃げずに待ってなさいっ!」 机の横にある階段を、絶対的な自信の宿った足取りで、上がっていくラアル。 「わわっ!アルタークが名前ゆーからバレちゃったじゃん!」 「わ
last updateآخر تحديث : 2026-02-20
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35. 愛たちはどう生きるか How Do We Live?

「アイアイアイっ!!聞いてよ〜!」 「ふふっ、どうしたんですか?ラアルさま?」 ガラッとドアを勢いよく開け放ち、アイの居る教室に入ってきたラアルが大きな声でアイを呼ぶ。 「この高貴なるラアル様が会いに来てあげたわよっ!」 「それそれは、ありがとうございます。……うれしいです……!」 「そうよっ!感謝しなさいなっ!」 「はいっ!感謝しますっ!」 ラアルがアイに告白|紛《まが》いのことをして、2人がお友だちになってから、ラアルはよくアイに会いに来るようになった。朝授業が始まる前に、お昼ご飯の時間に、5分休憩のその合間にさえ。1日に何回はアイを視界に入れないと、といったノルマでもあるように。1時間に1回はアイの声を聞かないと気がすまないというように。 「アイアイアイ!ねえねえねえっ!」 ラアルが自分より随分小さいアイにも背中からたれかかり、力を抜き身体を預ける。そして頭をグリグリとアイの頭にこすりつける。2人の美しい黒髪と金髪が混ざり合い、アイの夜空にラアルの天の川がひとすじ流れる。まるで小型犬にじゃれつく大型犬、ちいさな母に甘えるおおきな娘のようだった。はるひに能力のほとんどを吸収されたアイは、体幹も力もそこらのノーマルの子供にも負けるほどよわいので、必死にラアルを支える。 「わわっ!……ふふ、どうしたんですか?ラアルさま?聞いてますよ〜。」 「さっきの|心《ヘルツ》の授業でさ〜。心を結構な時間外に出したまま保つって課題が出されたの!」 「へぇ〜。」 「どれぐらい出してなきゃいけなかったと思う?」 「う〜ん……10分ぐらいでしょうか……?」 気を使ってわざと少し少なめに見積もるアイ。
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64. まんそんじゅさいきょ〜のチェルせんせ〜! Dr Nauczycielka, the Invincible in the Mensonge

「食材共め……包丁のサビにしてくれるわ……!」 包丁をブンブンと振り回しながら、目をギラギラと光らせてお野菜に|迫《せま》るラアルさま。 「わー!ラアルさまっ!いけませんっ!めっ!ですよ!刃物をそんなふうに振り回しちゃあダメですっ!」 「うっ……アイ……ごめんなさい。」 「わかってくれればいいんです、いい子いい子。」 ションボリして低くなってしまった頭を背伸びして撫でてみる。 ◇◆◇ 「じゃあ、わたくしと一緒にやりますよー。まずはコレっ!ネコの手です!こうやって、にゃ~んとネコちゃんみたいに手をまるめて――」 「――クッ……写真機を持ってきていないのが悔やまれるわ……!」 鼻を抑えて顔をそらすラアルさま。 ……? 「……こほん。こ、こうかしら……?」 「そうです!よくできましたっ!……じゃあ実際にニンジンを切ってみましょうか。」 ラアルさまが包丁をニンジンにあてがい、ネコの手でそれをおさえる。ちょっと危なっかしいな……。 「後ろから失礼しますね〜。」 「――!?」 後からラアルさまの手を握ってたすけようと思ったけど、身長差がありすぎて前が見えない。 「んん~、ふぅっ……これで見える。」 「――!?!?」 ラアルさまの左のワキからきゅぽんっと顔を出してなんとか視界を確保する。 「はい、左手の位置はココで、はい、とんとん、とんとんとん……わぁ〜!すごいすごいっ!上手ですよ〜ラアルさま!」 「――!?!?!?……まま……。」 ――?何か言ったかな? 「ラアルさま?だいじょう
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36. ちいさな聖母とおおきな愛娘 The Little Virgin and the Big Beloved Daughter

「ラアル、さま……撤回してください。アルちゃんを馬鹿にしたことを……!アルちゃんはわたくしの、大切なお友だちなのです……!」 |彼《・》|女《・》|は《・》……友とそれがぶつかった時に、躊躇なくそれを捨てる人間だった。|彼《・》|は《・》……それを捨てたことがある人間だった、|聖別の儀《セパレーション》のあの日に。 そのせいで、母から堕胎告知を受けても、アニマ・アニマになって多くを失っても、友が侮辱されたのなら、友が助けを求めているのなら、友が泣いているのなら……自分の恐れなんぞ|躊躇《ちゅうちょ》泣く投げ棄てる人間だった。 「アルちゃんに謝ってください……!ラアルさま……!」 その声は震え怯えきっていたが、ラアルの心を切り裂くには十分だった。 「な、んで……。なんで、よ……。アイ……?」 アイのサファイアの眼に見つめられて、ラアルのルビーの瞳が、揺れる。 「私より、あの娘の方が大事だっていうの!?私はうつくしいのに!私は偉いのに!わた、しは……おうぞく……なの、に。」 王族だからという理由で人間扱いされなかった経験から、それにすがるしかないラアル。 「違います。どっちが大事とかそういう話ではありません。|王《・》|族《・》|だ《・》|か《・》|ら《・》|と《・》|い《・》|う《・》|の《・》|も《・》|理《・》|由《・》|に《・》|な《・》|り《・》|ま《・》|せ《・》|ん《・》。ただ……わたくしのお友だちを侮辱したことを謝ってくださいといっているだけです。」 ――王族であることが、関係ない?そんなわけない、だからみんな私を変な目で見るのに。 「何を言っているの?関係大ありよ……だって|王《・》|族《・》|は《・》|人《・》|間《・》|じ《・》|ゃ《・》|な《・》|い《・》んだから……だからみんな、私たちには何を言ってもいいと思っているんでしょう!?この辺境伯派の学校に来て!私に|罵詈雑言《ばりぞうごん》を並べ立てる音を聞
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