All Chapters of 白い恋の結晶~キミへと続く足跡: Chapter 21 - Chapter 30

132 Chapters

第21話

「今ので、体重が5キロは落ちたかもな。俺のおまじない?のおかげで」“おまじない?“の部分を強調して肩を上げながら言ったハルを見て、あたし達の後ろから着いてきていた柊とマキが目を見合わせて苦笑していた。「ガキかよ」柊が、眉を寄せて呆れたように笑う。体育館に集合すると先生から軽い説明があり、その後すぐに、身長・体重・視力検査が体育館で行われた。5組はまず身長からだ。先生から配られた記入用紙を手に持って、男子から順に縦一列に並ぶ。「ねぇ、雪羽」あたしの前に並ぶマキが、あたしを振り返る。あたしが「うん?」と眉を上げると、マキは少し話しにくそうに唇を噛んだ。「あ~いや……何て言うかさ……」「急になに? どうしたの?」そんなマキの表情を見て、あたしは眉間にシワを寄せて小さく笑う。「何で、聞かないの?」「……え?」騒がしい体育館に、マキの真剣な声が溶け込んだ。「古賀くんに、どうして聞かないの?」その一言に、あたしは手に持っていた用紙で口元を隠し、ポリポリとおでこをかいた。あたしが、柊に、何を聞くのか……。マキに確認しなくても、何のことを言っているのかわかる。あたしと柊の、今の関係だ。ずっと曖昧な関係のままでいるから、マキも一緒にいてやり辛いのだろう。今までそのことについて触れてこなかったから、あたしもそのままにしていたんだ。もちろん、このままでいいとは思ってない。だけど……。「聞けないよ……」出した声が、口元を覆う用紙にビリビリ響く。「聞けない。終わってるのは確かだけど……怖くて……」「…………」「柊の態度を見たら、もうあたしのことなんて何とも思ってないんだってわかるけど……。本人に直接聞くのは、ちょっと、精神的に無理……」
last updateLast Updated : 2025-12-27
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第22話

空気が沈んだ。ふたりで沈黙になり、マキもあたしと同じくらい傷ついているのがわかる。マキは、あたしの心の痛みを一番にわかってくれる親友だから……。ふたりで大きく息を吐くと、列がどんどん進んで行ったので、あたし達も無言のまま足を進めた。列の動きが止まると、またマキはあたしを振り返る。「わかる。わかるよ、すっごく。だけどさ……」「…………」「このまま関係をはっきりさせないと、あとで傷つくのはユキなんだからね」「……うん」「あたしは、ユキの話しを聞いてあげることは出来るけど、ユキの代わりに古賀くんに本音を聞いたりとかはしてあげられないから。知ってるでしょ? あたしの性格」「……うん。知ってる」マキは、人の代わりに動くようなことはしない。相談に乗って、その人本人がきちんと行動できるように背中を押してくれるの。たまにキツイことも言うけど、それがマキのやり方なんだ。人が動いても意味がない。自分が決めたことは、きちんと自分で動かなきゃ。マキは、本当にいい人なんだ。「マキ……」「うん?」「もう少し時間かかると思うけど、きちんと聞いてみる」「…………」「ずっと過去を引きずるの、よくないもんね」マキが切なく微笑んだ。「いつ聞けるかわからないけどさ、タイミング、自分なりにみつけてみるよ」「うん。ユキのペースでいいんだよ。何かあったら、いつでも話し聞くし」「ありがとう、マキ」あたし達が笑い合った、その時。「は? すっげ!! 古賀、180あんの!?」列の前の方から、ハルの叫ぶ声が聞こえ、マキと一緒に首を伸ばして前方を見た。身長をはかり終わった柊とハルが、お互い用紙を覗き込みながらこちらに歩いてくる。柊の身長が180あると知ったハルは、柊を少し見上げてジャンプをしていた。柊……。中学の頃よりかなり身長伸びたなって思ってたけど、180もあるんだ……。あの頃はあたしとあまり変わらなかったから、20センチは伸びたってこと?男の子って、そんなに伸びるもん!?「凄い。古賀くんってそんなに身長高いんだ」「ねぇ!! カッコいいうえに身長高いとか最高なんだけど!!」「彼女いると思う?」「いるでしょ!! いないわけがない!!」女子達のコソコソ話しが聞こえてきて、あたしは背中を丸めた。はぁ……。柊を好きな女子はいっぱいいる……。あ
last updateLast Updated : 2025-12-27
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第23話

「雪羽」突然、あたしの横を通る柊に話しかけられ、ドキリと体が跳ねると同時に冷や汗が流れた。クラスの女子達の視線が、一気にあたしに集まる。周りの視線も気になるし、柊に急に声を掛けられたしで固まっていると、柊は困ったように笑い、あたしの前を指差した。「前、進んでる。次雪羽の番」「え? あ、ああ。あたしの番ね。ハハッ」ぎこちなく足を進め、先生に用紙を渡してから身長をはかるバーに背中をつけて顎を引いた。頭の上に小さな板みたいなのが下りてきて、「はい、158センチね」と先生の声がする。……158センチか。中2から止まってる……。もう伸びることはないかもしれない……。「158センチ? 全然伸びてないじゃん」先生の声が大きいせいで、少し離れたところにいる柊にまで聞こえていたようだ。ハハっと柊に笑われ、あたしは頬を膨らませる。「いいよね~男子は身長がよく伸びるからさ~」あたしが口をへの字に曲げて言うと、隣のマキが大きく手をあげた。「あたしも身長伸びてましたけど」「え~!? マジで!? 羨ましい」「俺も伸びてた」「ハルも!? 嘘だ‼ 何センチ!?」「俺175」175とか、去年より5センチも伸びてるじゃん……。あたしだけなの?身長止まったの……。悲しい……。どうせ、あたしはチビですよ~だ……。「プッ……またいじけてるし」柊が用紙で口元を隠して吹きだす。「別にいじけてなんて」「そう言えば、数学のテスト、何点だったの?」今全く関係のない事を柊に聞かれ、ムスっと目を細めて柊を見上げる。「ダメだったってわかってて聞いてるでしょ? 柊はいつもそうだから」柊がこういう質問をしてくる時は、大抵、あたしをからかう時だ。「わかってんじゃん」フワッ……。微笑んだ柊が、あたしの頭を用紙で叩いてきた。フワっと触れた用紙の静電気に反応して、髪が少し浮く。手で整えると、柊はとても優しく目を細め口角まで上げた。マキ……。ダメだ……。あたし、やっぱり聞けないかもしれない。だって、あたしが下手に確認して、面倒くさい女だと柊に嫌われたらどうする?今はこんなにあたしにステキな笑顔を見せてくれるのに、それがなくなったら、あたし、生きていけない。当分、聞けないかもしれないよ……。
last updateLast Updated : 2025-12-27
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第24話

****『うっわ!! 雨だ!!』『えっ!? キャッ!! ホントだ!!』古賀くんと下校中、突然雨が降り出し、あたし達は腕で頭を覆って田舎道を走った。溶け始めの泥が混じった雪が、あたし達の足に絡みつく。天気予報では雨なんて言っていなかったから、お互い傘を持っていなかったんだ。空だって、雨雲が広がってるわけじゃないし。小雨だからいいものの、これで土砂降りだったら、風邪確定だ。首に巻く真っ赤なマフラーが走る度に、ほどけてくる。何度も何度も走りながら巻き直すあたしを見て、古賀くんがおかしそうにハハハっと笑った。顔に当たる雨が冷たくて痛い。寒い中全力疾走しているので、呼吸もゼェゼェと苦しくなってくる。5分くらい走ると、ようやく桜の木が近づいてきた。『篠原さん! バス停で一旦休憩しよう』『うん!!』古賀くんに答えると、あたしの口から白い息がブァっと噴射。走ったおかげで体は少し温まったけど、頬を触ると、氷のように冷たいままだった。倒れ込むようにして、屋根の着いた小さな小屋のバス停のベンチに座りこんだ。古賀くんはベンチの背もたれに体重をかけ、荒々しい息を整える為に小屋の天井を見上げる。あたしもベンチに座って項垂れ、呼吸を整えた。『苦しっ……』古賀くんは、息を飲み込みながら言い、肩に提げる学校指定のカバンをベンチに下ろした。あたしも真似をしてベンチに下ろすと、古賀くんと目が合ってふたりでクスクス笑う。『急に雨って、最悪だよな』『ほんっと。今日雨とか聞いてないよね』言いながら、またふたりでハハハっと笑った。走ってる時は体力的に苦しかったけど、走りきった今は少し気分がいい。運動って言える程じゃないけど、走った後はなんでか体が少し軽くなったような気がするんだ。あたし達が小屋に入ると、雨は今まで降っていたことが嘘だったかのようにピタリとやんだ。
last updateLast Updated : 2025-12-27
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第25話

古賀くんは空を見上げ、大きく息を吐く。『さっきの雨はなんだったんだよ』『え……もうやんだの?』あたしが立ち上がって小屋から顔を出すと、古賀くんもベンチから立ち上がり一緒に空を見上げた。灰色の雲が、薄ら空にかかっている。真っ白な日差しが細い線となってあたし達の目を刺激し、ふたりで手を前にかざして目を細める。雨と溶けた雪が混ざり、バス停の小屋の屋根からポタポタと雫が垂れる。時々あたし達の頭上に落ちてきて、古賀くんは子犬のように首を振って雫をはらった。雨に濡れた雪が、太陽の光にキラキラと輝き、まるで宝石のよう。桜の木も、ダイヤモンドの実がなったんじゃないかと思うくらい、風に揺れる度に美しく輝いた。『すごくキレイ……』思わずため息がこぼれる美しさだ。『雨もなかなかいい仕事するな』『うん。あたし、今まで雨大嫌いだったけど、こんなにキレイな景色見せてくれるなら、ちょっと好きかも』あたしが言うと、古賀くんは頷いてニッコリ笑った。『寒くない?』『ううん。大丈夫。走って体温まったから。古賀くんは?』『俺も平気』ふたりで微笑みあい、また宝石の世界を眺める。桜の木の枝が風に揺れると、チャラリチャラリとガラス細工がこすれるような音が聞こえてきそうだ。冬はただ寒いだけだと思ってたけど、こんなにも美しい景色を見ることが出来るんだ。ステキな季節……。『あのさ』あたしは眉を上げながら、隣の古賀くんを振り向く。薄い雲から顔を出した太陽に、足元の溶けかけの雪が反射して、古賀くんの顔が輝く。『俺ら、名字で呼び合うの、もうやめない?』『…………』『これから、名前で、呼んでも、いい?』ドックン。照れた古賀くんの表情を見て、鼓動が高鳴る。ゆっくり、ぎこちなく頷くと、古賀くんは口角を引き、後頭部をかいた。
last updateLast Updated : 2025-12-28
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第26話

『……雪、羽』ピシャリっと、緊張で体が固まる。古賀くんは照れて赤くなる顔を手の甲で隠し、目を泳がせた。そしてまたあたしを遠慮がちに見ると、ハニカミながら笑った。『……柊』カァァァァっと、顔が一気に熱を持つ。恥ずかしくてマフラーに顔を埋め、熱い顔をパタパタと手の平で扇ぐ。『なんか……ヤバいな』『うん……照れる』ふたりで照れて笑うと、古賀くんが手を差し出してきた。あたしは古賀くんを上目づかいで見上げ、そっと手を重ねる。温かい古賀くんの手。ううん。もう、古賀くんじゃない。“柊“……。心の中でもう一度彼の名前を呼ぶと、ジンワリ幸せな熱が体中に広がった。手を繋いで、美しい雪景色を見る。人通りも少なく、車も通らない。バスなんて1時間に2本。こんな田舎町でも、柊と一緒ならどんな都会に住むより楽しい。美しい景色の中で、あたし達は手をギュッと繋いで、肩を上げて微笑みあった。****1カ月って、こんなに過ぎるの早かったっけ。もう、5月だ……。まだ少し肌寒かった気温もどんどん上がり、もうジャケットなしの、シャツに白いベストで十分夜まで過ごせるようになった。草花も青く生い茂り、田舎道の両側に続く畑にも、緑が増えてきたし……。温かくなって虫が増えるのは嫌だけど、草花のいい香りがよく風に運ばれてくるこの季節は嫌いじゃない。あたしはひとり、田舎道をひとり歩いて帰った。ハルもマキも来週ある遠足の準備の為、先生に呼び出されて教室に残ったんだ。あのふたりは、行事ごとに関わるのが本当に大好き。遠足、文化祭、クラスでのイベント。何かあると自ら黒板の前に出てクラスをまとめて、盛り上げるんだ。ハルとマキのおかげで、そういうことが苦手なあたしは助かってる。こういうのって、大抵誰も前に出なくてジャンケンで決めることになったりするから。
last updateLast Updated : 2025-12-28
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第27話

ふたりの仕事が終わるまで待ってるって言ったんだけど、マキは首を横に振った。ここに残ってボーっとしてる暇があったら、柊との開いてしまった距離を少しでも縮める努力をしなさいって。努力って言ったって……。教室を出る前に、一緒に帰ろうと柊を誘おうと思ったけど、女子や男子が柊の机の周りに集まっていて、あたしが入っていけるスペースはなかった。あたしの机からは柊の姿すら見えなくて、小さくため息をついて教室を出たんだ。そして……今ひとり、トボトボと帰っている。話し相手がいなくて、とても静か。スクールバックからスマホを出して、スマホをいじりながら歩いたりしたけど、何も面白いニュースがなくて、またスクールバックにしまう。足元にあった小石を蹴ると、すぐに制御不能になった歪な形をした小石が、見当外れの所に転がって行き、足までも寂しさを感じる。ハァ……。柊と再会してからもう1カ月も経つのに、何にも変わってない……。「何やってんだろ……」大きく息をはいて、ボソリと呟いた、その時。ポツンポツンと、頭に雫が落ちてきた。嫌な予感がしてアスファルトを見ると、小さな黒い染みが至る所に出来ている。「嘘でしょ? 今日雨降るなんて言ってなかったじゃん!!」降り出してしまう前に家に帰り付きたくて、あたしはトボトボ歩く足を速め、時々空を見上げて走った。あたしの頭上が少し曇ってるだけで、その先は日差しが指している。「天気予報には、傘のマークなんて書いてなかったのに!!」昨日見たニュースの天気予報に文句を言いながら走っていると、あたしの文句が空に届いたのか急激に雨足が強くなった。「うっそでしょ!?」両腕で頭をかばって走ったって傘の役目を果たすわけでもないのに、必死で頭を覆う。次第に前髪がおでこにはり付き、頬に雫が流れてくる。徐々に、桜の木の近くのバス停が近づいてきたので、とりあえず、そこで雨宿りをすることに。
last updateLast Updated : 2025-12-28
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第28話

屋根のついたバス停に走り込んで、スクールバックに入れていたフェイスタオルで濡れた体を拭く。雨に濡れたアスファルトから、焼けたような独特なにおいがする。下校中の生徒も殆どが傘を持っていなくて、突然の雨にあたしと同じように走って帰っていた。この辺りに雨宿りを出来そうなところはこのバス停しかなく、何人かがバス停の中を覗いて行く。だけど、先客がいるとわかると、諦めてまた走っていた。「……どうしよう。すぐやむかな」雨は降ってるけど、空は明るい……。やっぱり、ハルとマキを待って教室にいればよかった。柊とも話せなかったうえに雨にまで濡れるなんて……。何やってんだ……。「何やってんだ」「……え!?」突然、あたしが心で呟いたことと全く同じことが聞こえて、あたしは目を丸くして声の方を振り返った。「……柊!?」黒い傘をさした柊が、眉を寄せてこちらに歩いてくる。柊の体格にしては少し小さめの傘。折りたたみ傘、かな……?「あ~あ~あ~、濡れてやんの」あたしの側に来た柊が、あたしの足から頭までを見ていく。あたしは濡れた前髪を触り、苦笑いを向けた。「ちゃんと拭いたのかよ」「う、うん……。一応」あたしが俯いて答えると、柊は傘を閉じてバス停の中に入って来た。「タオル、貸して」傘とスクールバックをベンチに置いた柊が、あたしが手に持つフェイスタオルを貸してと手を伸ばしてくる。「あ、うん。はい」あたしの体を拭いたあとで少し湿ってることが気になったけど、サッと柊に手渡す。すると……。あたしから受け取ったタオルで、なんと、あたしのおでこをや耳を拭きだしたんだ。驚いて目を丸くしたまま、体が硬直する。「拭けてねぇじゃん。下手くそ」柊が、あたしの顔や髪をよく見ていく。「よし。もう、いいかな」あたしの体につく雫を全て拭いてくれた柊が、あたしの目を見て微笑んだ。
last updateLast Updated : 2025-12-28
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第29話

あたしが柊を見つめたまま固まっていると、柊は「うん?」と眉を上げ、困ったように笑う。ハッと我に返ったあたしは、柊からタオルを受け取り、激しく目を泳がせた。ビックリした……。いきなり、あたしの体を拭いてくるんだもん。時々、柊の手があたしの顔に触れたし……。体が、何だかビリビリする……。「ここ、俺らの雨宿りの場所だよな」ハハハっと笑った柊は、両手をポケットに突っ込んで空を見上げた。「中学ん頃も、結構ここで雨宿りしたし」……覚えてたんだ。いや、そりゃ、覚えてるか……。このバス停に助けられたのは、一度や二度じゃない。覚えているのは当たり前だけど、ここでの雨宿りは、あたしにとって大切な思い出のひとつだ。それを柊が覚えててくれて、口に出してくれたことがすっごく嬉しくて、涙が出そうになった。あの頃を思い出して、今、どんな気持ちでいるの?思い出の場所で、ふたりっきり。柊は今、あたしをどんな風に見てくれているの?友達?元カノ?ねぇ、柊、あたし達の関係って、何なのかな……。あたしは、眩しそうに空を見上げる柊の横顔を見ながら心で思った。声に出しては聞けない。ずっと彼の横顔を見上げていると、あたしの視線に気づいた柊がパッとあたしを見下ろした。濡れた前髪がたまに目に入って、瞬きが多くなる。柊としばらく目があったまま、あたしは逸らせないでいた。先に目を逸らしたのは、柊だ。「も、もうすぐ、やむかもな……」……逸らされた。「その傘、使っていいから」ベンチに置いたスクールバックを取りながら、完全にあたしと目を合わせないようにしている。
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第30話

……避けられた?「じゃ、俺、行くわ」最後まであたしの目を見てくれないまま、まだやまない雨の中に飛び出して行った柊。タタタタタタと、彼の走る足音が聞こえる。どうして、目を逸らしたの?気まずいから……?あたしは、柊の折りたたみ傘とバス停に取り残され、何とも言えない寂しさに襲われた。翌日。あたしは、昨日借りた折りたたみ傘を返そうと、登校してすぐに彼の机に向かった。既に教室についていた柊の机の周りには、今日も男子や女子が集まっている。転校してきてすぐに人に囲まれて、男女問わず人気なんだ。この女子の中には、ただの友達ではなくて柊のことが好きな女子もいるだろう。みんな積極的な子ばかりで、あたしの居場所は、もうそこにはない。あたしはスクールバックから折りたたみ傘を取り出して、身を小さくして輪の中に入って行く。あたしの姿が見えると、席に座ってみんなと話しをしていた柊があたしに気づき笑顔になった。「おはよ」柊の挨拶に少し頷くと、彼の机に集まっていた5,6人のクラスメイトがザッと道を開ける。すごく居心地の悪い空間に、あたしは周りの目を気にしながら柊に傘を手渡した。「これ、ありがとう」「ああ。昨日、あの後、大丈夫だった?」「う、うん。これのおかげであれ以上濡れなくて済んだし」あたしがぎこちなく笑うと、柊は「そっか」と短く言って微笑んだ。またすぐに会話が終了していまい、あたしは下唇を噛んで切なく頷く。「俺さ、前から気になってたんだけど、おまえらって、付き合ってるの?」輪の中にいるひとりの男子に聞かれ、心臓が変な動きをした。脈が一気に乱れ、冷や汗が出てくる。男子の急な質問に、柊は一瞬目を丸くしたけどすぐに息を吐いて笑った。それを見て、周りが更に反応する。「なに? その微妙な感じ。現在進行形じゃなくて、過去形ってこと? 付き合ってたの?」
last updateLast Updated : 2025-12-29
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