店側からの支払いの催促は容赦なかった。支払わないなら警察を呼ぶとまで言われ、はなはついに歯を食いしばって、残りの二百二十万円を全部振り込んだ。これで、彼女は本当に一文無しになってしまった。しかし今、はなに恐れるものはない。あと一週間もすれば、来希の会社が上場するからだ。来希からは、未公開株をたっぷり譲り受けている。つまり会社が上場しさえすれば、たちまち数十億円の資産家になる。たかが数百万円を失ったところで、痛くも痒くもない。あと一週間。たったの一週間だ。そう考えるだけで、はなはえも言われぬ興奮を覚えた。もうすぐ、使い切れないほどの金が手に入る。一方、誰かが通報したため、現場には警察も駆けつけた。はなも事情聴取を受けたが、適当に言葉を濁してその場をやり過ごした。当然、時雄を訴える気などさらさらない。相手は絶対的な権力を持つ一族のトップなのだ。たとえ暴行で訴えたとしても、彼は全国でもトップクラスの強力な弁護団を抱えている。下手に逆らわない方が身のためだ。それより、はなの苛立ちはむしろ来希のほうへ向いている。彼が萌花のことで、時雄を怒らせたに違いない。子どものころから今まで、はなは一度だって時雄があそこまで取り乱すのを見たことがなかった。確かに彼は冷酷な人間だが、自分の手を汚すような真似はしない。三十分後、来希が救急救命室から運び出された。奥歯が二本折れ、顎の骨と眉骨にひびが入っている。手術の必要はないものの、完全に治るまでにはかなりの時間を要する重傷だ。来希の顔は青黒く腫れ上がっていて、それでも意識はすでにはっきりしている。ろれつが回らない口調で、彼は萌花と時雄を呪うような悪辣な言葉を延々と吐き捨てている。はなは苛立ちをこらえていくつか慰めの言葉をかけたが、かえって来希の理不尽な怒りの矛先を向けられる羽目になった。豚のように腫れ上がった来希の顔を見て、はなの顔にも思わず嫌悪の色が浮かんだ。彼女は病室を出て廊下へ向かい、尚子に電話をかけた。尚子と怜はすぐに病院へと駆けつけてきた。「誰がうちの息子をこんな目に遭わせたのよ!いったい誰なの、ちゃんと警察には言ったの!?絶対に捕まえて、刑務所にぶち込んでやらなきゃ!」尚子は息子の痛々しい姿に胸を痛め、大声で泣き喚いた。はなは言葉を濁し、ただこう言った。
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