「ねえ、律。もう起きてしまった悲しいことばかりに囚われるのはやめにしましょう。私たちは前を向いて歩いていかなきゃ」紫音は彼を抱きしめる腕に少しだけ力を込め、耳元で優しく囁いた。「私がずっと一緒にいるわ。これから先、何があっても私があなたの傍にいて、あなたを愛し続けるから」紫音がこれほどまでに深い愛情を注ぐのは、彼がこれまでどれほどの苦難を乗り越えてきたかを、誰よりも知っているからだ。身も心も傷だらけになりながら生きてきたこの愛しい人に、自分が持てるありったけの温もりを与えたい。そうすればいつか、彼の心の奥底にある最も深い傷跡さえも、癒やしてあげられると信じているから。「……君が傍にいてくれて、本当によかった」律は紫音の肩に顔を埋め、縋るようにその華奢な身体を抱きしめ返した。「君さえいてくれれば、私はそれだけで十分だ。……おばあちゃんがいつか逝ってしまうことは、ずっと前から覚悟していたつもりだったんだ。でも、まさかこんなにも早く、その日が来てしまうなんて思わなかった。……喪失感が、あまりにも大きすぎる」その震える声を聞きながら、紫音は胸を痛めた。そうよね……大切な家族の死を、簡単に受け入れられる人なんていないわ。もし自分が律の立場だったとしても、この唐突すぎる別れを受け入れ、現実と向き合うことなど到底できなかっただろう。「二人の可愛い赤ちゃんが見たい」と微笑んでいた志津様の顔が再び脳裏をよぎる。そのささやかな願いさえ叶えられなかったことが、今でもチクチクと胸を刺した。深い悲しみの中でも、時間は無情なまでに過ぎていく。いつの間にか忌引きの期間が終わり、二人はそれぞれ、止まっていた日常へと戻らなければならなくなった。律は、巨大な拝島グループのトップとして、この数日の間に山のように溜まってしまった業務を処理するため、会社へと戻っていった。そして紫音も、自らの会社へと出社する日を迎えた。この数日間、拝島家で起きたあまりにも大きすぎる出来事にかかりきりで、仕事はすべてアシスタントの蘭に任せきりになっていたからだ。志津様を喪った悲しみはまだ全く癒えてはいない。しかし、一企業のトップとして、これ以上会社を空け続けるわけにはいかなかった。久々にオフィスに姿を現した紫音を、社員たちはどこか腫れ物に触るような、気遣わしげ
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