俊輔はゆっくりと顔を上げた。赤く充血したその瞳には、茫然自失の色が滲んでいた。暁は彼を見つめ、それから隣で不安に駆られている心愛へと視線を移すと、静かな声で告げた。「これほどまでに完璧な計画であるということは、背後に周到な策士がいる証です。仕組まれた罠である以上、必ずどこかに綻びがある。今君がすべきなのは、自分を責めることではありません。気力を蓄え、私がその綻びを見つけ出すのを待つことです」それは、刑務所を出た直後のことだった。外の少し冷ややかな空気を吸い込んだ瞬間、心愛のスマートフォンが鳴った。見知らぬ番号だった。通話ボタンをスライドすると、受話口の向こうから事務的な男の声が流れてくる。「もしもし、深水心愛さんでしょうか。私、地域再開発事務局の者です。ご連絡ですが、お祖母様名義の清水町の物件について、一帯の全面的な取り壊しと再開発が決定いたしました。至急お越しいただき、立ち退き合意書へのご署名をお願いいたします」――取り壊し?心愛の胸がぎゅっと締め付けられた。あの通りは、祖母が生前、長い時間を過ごした場所だった。「……すぐに向かいます」電話を切るや否や、彼女はタクシーを拾い、清水町へと急いだ。暁はその焦りを帯びた様子を見て、何も問わずに車へ同乗した。車内では、昂一からの着信が鳴りやまない。心愛は暁に急用があると察し、通りの入り口で降ろしてもらうと、すぐに彼を促して送り出した。古い通りの入り口は、すでに工事用フェンスで完全に囲われ、「工事現場につき関係者以外立ち入り禁止」と書かれた看板が掲げられている。その脇には、黄色いショベルカーが無機質に佇んでいた。フェンスの隙間から中を覗くと、見覚えのある大きな槐の木はまだ残っていたが、周囲の石畳はあちこち無残に掘り返されている。ふと視線を巡らせると、見覚えのある人物が白いヘルメットを被り、大きな図面を指し示しながら、スーツ姿の男たちに何事かを指示していた。――葵だ。その瞬間、心愛の胸の奥で怒りがぱっと燃え上がる。彼女はフェンスの入り口へ回り込み、ためらうことなく中へ踏み込んだ。「葵!」歩み寄りながら、氷のように冷えた声を投げつける。「珍しいこともあるものね。弁護士として順風満帆かと思っていたら、いつから現場監督に転職したのかしら?」葵は得意げ
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