桐生グループの副社長が修正案を山ほど抱えて押しかけてきても、部屋へ入る前に碧が応接室でぴたりと行く手を塞いだ。碧の口は機関銃のようによく回り、エリートを気取る桐生の男たちでさえ、反論できぬまま顔を青ざめさせるほどだった。そのおかげで、心愛はようやく息をつくことができた。彼女は持てる集中力のすべてを、黄ばんだ古い手描き原稿へと注ぎ込む。これらの作品を、名雲最高峰の発表会の舞台で蘇らせる――その思いだけが、彼女を支えていた。それから半月後の、ある昼休み。心愛が休憩スペースで食事を取っていると、ロビーに設置された大型テレビがふと視界に入った。画面の中では、名雲市で最も栄えているエリアが華々しく飾り立てられ、盛大なテープカットの様子が映し出されている。アナウンサーの清廉で無機質な声が響いた。「桐生グループが三年の歳月をかけて建設した大型ショッピングモール『スカイガーデン』が、本日正式にオープンしました。この場所は、かつて旧市街地再開発の重点区域であり――」心愛の箸が、ぴたりと止まった。画面に映るのは、陽光を浴びて眩く輝くガラスカーテンウォールの巨大な建物。だが、そこはかつて静かな裏路地だった。そしてモールの正面入口がある場所には、ライラックの香りに満ちた小さな庭があった。祖母の家だ。かつて葵は、この土地で功績を立てるために地上げ屋を引き連れ、強引に家を解体した。祖母が最期まで大切にしていた思い出までも踏みにじって。そして今、その場所は、桐生の富と権勢を誇示する巨大な資本へと姿を変えていた。胃の底から不快感がせり上がり、心愛は口にしたご飯をどうしても飲み込めなかった。「深水さん、どうしたんですか?」碧が近づき、彼女の視線を追ってテレビを見ると、低く吐き捨てた。「本当に、血も涙もない連中ですね。あのショッピングモールの下に、どれだけの人の無念が眠っていることか」「……おばあちゃんに会いに行きたい」心愛は食器を置き、虚ろな声で呟いた。ちょうど今週は俊輔が休暇で、まだ弟を連れてきちんと墓参りに行けていなかった。その話を聞いた暁は、多くを語らなかった。ただ車のキーを昂一へ放り投げ、供え物の準備を命じると、心愛には半ば強引に一日の休暇を取らせた。墓地には、骨の芯まで冷え込むような風が吹いていた。
Read more