碧は言えば言うほど怒りが込み上げてきたのか、スマートフォンの画面を心愛の目の前へ突きつけた。「ネットの反応、見てください!私だって黙って見てたわけじゃありませんからね。さっき捨て垢を何十個も作って、葵が昔、桐生家でやらかしたあのゲスな悪事とか、深水さんを土下座させた動画とか、全部トレンドの最上位にぶち込んでやりました!保釈令が何だって言うんですか。あいつが少しでも街に顔を出そうものなら、世間の唾で溺れ死にさせてやりますよ。これぞ大衆の力ってやつです!」猛烈な勢いで流れていくリプライの数々。そして、興奮で顔を真っ赤に染めている碧の姿。凍りついていた心愛の胸に、小さな火が灯ったような気がした。「碧、ありがとう」心愛は静かに微笑む。「お礼なんて水臭いですよ!私たち、一緒に修羅場を潜り抜けてきた戦友じゃないですか!」碧は勢いよく自分の太腿を叩いた。「あの梅原って男は、先輩の優しさにつけ込んでるだけです。命の恩人だからって何なんですか?この世に命の恩人なんていくらでもいますけど、恩を売った相手の家を後ろから放火するような奴、聞いたことありませんよ!それ、もう恩を盾にした脅迫です!」「昂一」暁はオフィスの入り口に向かって声をかけた。ずっとで控えていた昂一が、すぐさま分厚い書類の束を抱えて部屋へ入ってきた。「社長」「洗え。康永メディカルの過去五年分の全収支だ。特に、奴らが経営しているあの私立精神病院を徹底的に調べろ。不法収容の疑いがある。それから法務部長を呼んで。俊輔の件は、今日から一切妥協なしで再告訴の手続きを進める。あの保釈令を、二十四時間以内にただの紙屑へ変えてみせなさい。梅原家が葵を囲い込みたいなら、身ぐるみ剥がされるまで追い詰めてやるだけだ。名雲市に、法律を玩具にするような『名門』はいらない」「承知いたしました!」昂一は短く応じると、風を切るような足取りで即座に立ち去った。心愛は席に座ったまま、暁の背中を静かに見つめる。「梅原。あんたが葵を守るというのなら、私はこの手で、彼女をあの檻の中へ引き戻してみせる。あんたがI国で助けてくれた恩も、今日ここで徹底的に帳消しにしてあげるわ」その瞳から、生気のない虚無は消えていた。そこに宿っていたのは、幾多の試練を経て研ぎ澄まされた、冷徹な
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