隆の仕事は驚くほど早かった。一時間も経たないうちに、四人の女性が急遽集められた。ネットラジオのボイスドラマで老婦人役を専門にしている声優、地方劇団を退団した元役者、物まねや方言模写を専門的に学んできた者。臨時で用意された会議室に四人が横一列に並ばされたが、貴臣が何を企んでいるのか分かる者は誰ひとりおらず、ただ戸惑いを隠せずにいた。最前列に腰を下ろした貴臣の表情は、氷のように冷え切っていた。「一人ずつやってもらう」彼はスマートフォンを操作し、保存していた古い音声データを再生した。「この音声を完璧に再現しろ。声質だけじゃない。口調も、息継ぎの間も、すべてだ」流れた音声は、ごく短いものだった。かつて文子が心愛の携帯に残したボイスメッセージ。たった一言。「心愛かい、おばあちゃんがご飯を作って待ってるからね。忘れずに帰っておいで」どこにでもある、ごくありふれた日常の言葉。だからこそ誤魔化しが利かず、再現は極めて難しかった。最初の女性が口を開いた。声色こそ高齢女性らしかったが、作り物めいた不自然さが耳につく。貴臣は即座に眉をひそめた。「似ていない。次」二人目は多少ましだった。しかし高齢者特有の息遣いや、言葉と言葉の間にある独特の「間」が欠けている。「違う」三人目が話し始めると、今度は地方訛りが強すぎた。「チェンジだ」そして四人目の女性が、「心愛かい――」と発した瞬間、貴臣の指先がぴたりと止まった。七、八割は及第点だった。何より、老人特有の低くゆったりとした響きと、かすれた空気を含んだような声音を見事に捉えている。「お前だ」貴臣は冷徹な視線を向けた。「これから何パターンか台詞を覚えてもらう。すべて暗記しろ。余計なことは一切話すな。勝手な助言もするな」女性は緊張した面持ちで頷く。「はい」「向こうが何か聞いてきたら、必ず『身体を大事にしなさい』という方向へ話を誘導するんだ。分かったな」「分かりました」それから二十分間。貴臣は想定される質問への返答を徹底的に叩き込んだ。「『おばあちゃんの体調はどう?』と聞かれたら、『こちらは元気だから心配しなくていい』と答えろ。『会いに行きたい』と言われたら、『ここは静かで療養には最適だけれど遠いから、まずは怪我を
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