最後の忌まわしい言葉が吐き出された瞬間、貴臣の瞳は完全に冷え切った。それを聞いていた執事は生きた心地がせず、慌てて低い声でなだめる。「雅子様、どうかお気持ちをお鎮めください。夜風は身体に障ります。まずはお戻りになってからにいたしましょう」「戻れるか!」雅子はその手を振り払い、なおも貴臣へ向かって声を荒らげた。「今日ここではっきり言っておくよ。あの女を傍に置いていれば、遅かれ早かれ大きな不祥事を招くことになる。今は必死になって庇っているようだけれど、泥沼にはまり込んだ時になって私のところへ泣きついてくるんじゃないよ。それに加賀見家のあの若造だってそうさ。今日、桐生家へ乗り込んできて、この私に恥をかかせたのも、元をたどればすべてあの女が原因じゃないか。一人の女のせいで二人の男がここまで理性を失っているというのに、それでもまだ、あの女には何の非もないと言い張るのかい」そこまで聞いた貴臣の表情は、さらに暗さを増した。「……もう、気は済みましたか」「済むわけがないだろう」雅子の怒りは止まらなかった。「あなたはすっかりあの女にたぶらかされているんだよ。以前は情に厚い男だと思っていたけれど、今となってはただの愚か者だ。離婚した女を拾い上げ、他の男ともだらしなく関わっている女を、よくもそこまで囲っていられるものだね。桐生家の名声も、いずれあなたのせいで地に落ちることになるよ」「おばあちゃん」貴臣は顔を上げ、まっすぐに彼女を見据えた。その声は、すでに極限まで冷え切っていた。「これからも俺に年長者として敬われたいのであれば、今すぐ口を閉じてください」雅子はその一言に言葉を失った。息が喉につかえたまま、しばらく呼吸すらままならなかった。目の前の孫を見つめながら、彼女は初めてはっきりと思い知らされたのだ。貴臣は単に言い返しているわけではない。一時の感情で反発しているわけでもない。彼は本気で、心の底から心愛を守ろうとしている。そのためなら、祖母である自分に対してさえ、一歩も引かずに言葉を返してくるほどに。胸の奥の怒りはさらに膨れ上がった。だが、これ以上罵ろうとしても、先に身体のほうが悲鳴を上げていた。胸が強く締め付けられ、呼吸が乱れ、握り締めた杖さえぐらりと揺れる。異変に気づいた執
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