殿下は腰を浮かせて私を見つめ、テーブルに両手をつく。 そして強い口調で言った。「ひとりめもふたりめも、僕のせいで死んでしまったんです。犯人を見つければこの悲劇は終わりますよね?」 私は迷いつつも小さく頷き答えた。「えぇ。それはそうですが……」 問題は犯人が複数いるかもしれないことだ。 なにせひとりめとふたりめの手口が全然違う。その事を考えると、このふたつの事件は違う犯人によるものである可能性がぬぐえない。 もちろん、そう思わせるための策かもしれないけれど。 まっすぐ曇りのない目で見つめられ、説得の言葉が何も出てこない。 私は大きく息を吸い気持ちをわずかに落ち着けてから言った。「危険です。もし殿下が犯人捜しを始めて、犯人を刺激して殿下へと刃が向いたら……」「僕以外の人間が殺されるほうが耐えられないです」 私の言葉に重ねるように、殿下は強く言った。 それはわかる。でもそれは自分は殺されても構わない、とも聞こえる。 そんなわけにいかないだろう。 殿下は皇帝になるお方だ。しかも希少な男だ。 殺されるわけにはいかない。代わりなどいるわけがないのだから。「ですが殿下は自分の身を守るすべを持ち合わせていないでしょう」 その私の言葉に、殿下は苦しげに顔を歪めた。 彼は私から目をそらしたが、すぐに顔を上げる。「そうですけどでも、このままじっとなんてしていられないです。お願いします、シュエファさん! 犯人を捕まえたいんです!」 まっすぐな言葉に私の心が揺らぐ。 その殿下の熱意は痛いほどわかる。犯人は捕まえなければならない。私だって犯人を見つけ出すつもりではいる。でも殿下を関わらせるつもりはひとかけらもない。 どうやって説得する? 迷う私に殿下は畳み掛けてくる。必死な顔をして。「殺された女官たちは皆、長く僕と共に過ごしていた女性たちです。家族の、孫の成長を楽しみにしていた普通の人たちです。そんな人たちの人生が僕のせいで奪われてしまいました。そんなの、耐えられないんです!」「悪いのは犯人です。貴方ではありません」 なんとか言葉を絞り出すが、きっと届かないだろう。 殿下は頷き言った。「わかっています。でも、僕に仕えていなければこんなことにはならなかった」 わかってないじゃないですか。という言葉をすんでで飲み込み、私は説得を早々に
最終更新日 : 2026-01-22 続きを読む