ただ手を握られているだけなのに、心臓が早鐘をうっているのがわかる。 もしかしたら顔が紅いかもしれない。 自分から殿下のそばに座ったとはいえ、この状況は何だ。 殿下のこの距離感はおかしいんじゃないだろうか。 そう思うのに私は全然動けなかった。 殿下のまとう柔らかい匂いが私の鼻孔に絡まってくる。そして微笑み私の顔をじっと見つめる殿下の瞳に、私は動揺していた。 その視線はまるで恋をする乙女のような、熱を帯びたものに見えた。 私の動揺した顔が、殿下の深い青の瞳に映っている。 殿下はずい、と私に顔を近づけてくると、「シュエファさんがいるから僕はまだこうしてここにいられます。じゃなかったらきっと、僕はとっくに潰れていたと思うから」 と、笑顔を作る。 そして真面目な顔になり扉の方へと目を向けた。「先ほどの女官、何か事件と関わりがあるのでしょうか」「わかりませんが、どういう人物なのか調べてみようと思います」 私を睨み付けていた、という言葉は飲み込む。そんな話をしたらきっと、殿下は心を痛めてしまうだろうから。 私の言葉に殿下は眉間にしわを寄せて、物悲しげな顔になる。 そんな顔をされたら余計に私の心が乱されてしまう。 殿下は私の手を握りしめたまま言った。「すみません、僕ができることが少なくて」「いいえ、貴方が動いたら大ごとになってしまいますから。資料を手配していただけるだけで充分です」 と言い、私は笑って見せる。 すると彼は苦笑を浮かべて、すみませんと言ったあと、何か思いついたような顔になる。「あの、僕は十二支族のことあまり知らないので、せっかく今日皆集まっていますから話を聞いてみようと思います」「え……」 確かに今日は、十二支族の家長たちが全員集まっている。だが彼らがなにかぼろを出すだろうか? 危険ではないか? だが彼らの情報は欲しい。 少し考えてから私は言った。「無理はなさらないでください」 そういうのが精いっぱいだ。殿下に直接危害を加えるほど愚かではないとは思うが。万一、ということもある。殺すまではしないまでも、傷つけることくらいはするかもしれないから。 すると殿下は神妙な顔になり、「はい、気をつけます。それにシュエファさんが一緒にいますから」 と言い、彼は私の手を撫でた。 結局茶には手をつけず、私たちは部屋を出
最終更新日 : 2026-02-19 続きを読む