十一月に入り、寒さが一層ましてきた。 事件から一カ月近くが経ったが、敵の動きは特にない。 私に何かしてくるかと思ったが、よほど慎重なのか別の意図があるのかわからないが静かなものだった。 その日、私は叔母である後宮の妃、チュンシー様と外に出かけていた。 さすがにふたりきり、というわけにはいかず女官や宮廷護衛団、華衛の兵もついてきている。 町を歩くとよくわかるが、男の姿をほぼ見ない。 小さな子供をたまに見かけるくらいだろうか。 女性たちが店の前で呼び込みをし、女性たちが店の中に吸い込まれていく。「すっかり冬の気配を感じるようになったわねぇ」 辺りを見回しながらチュンシー様が言った。 「そうですね。ずいぶんと風が冷たくなってきました」 そう答えつつ、私は羽織った外套の首元にふれる。 この外套は、少し前に殿下が下さった物だ。外の見回りに出かける際、寒いだろうからとくださった、茶色の毛皮でできたものだ。 暖かいので重宝している。「外に出るのは久しぶりだわ。いくつかお店を見て周りましょう、シュエファ」 嬉しそうに言うチュンシー様。 出かけるにもこうしてお付の者が必要だから、あまり外に出ないらしい。 その煩わしさは理解できる。 ひとりで自由に外を歩けないのは何とも面倒だ。 それを思うと私には後宮は向いていないと思う。けれどこのままだと私は本当に後宮の妃となってしまうのか? なんだか自分の事ではない感じがして妙な気分だった。 チュンシー様に言われるままに雑貨屋や仕立て屋、宝飾店をめぐる。 宝飾店へと向かう道すがら、チュンシー様が声を潜めて言った。「シュエファ、貴方が後宮に入るっていう噂を聞いたけれど、本当なの?」 チュンシー様は心配げに眉を下げている。 かなりうわさは広がっているのか。 私はその問いかけに肩をすくめる。「殿下はそのおつもりのようです」 と、あいまいに答える。 私としては後宮入りは避けたいのだけれど、心は揺れていた。 あの殿下を放っておくわけにはいかないのではという思いが、どうしても私の心を支配する。 チュンシー様は複雑な顔になる。「それは……陛下はご存じよね? もちろん」「えぇ、その事で陛下から召喚を受けましたから」 その時の、陛下の凍てつく目を思い出すと背筋がこごえてきてしまう。 あれから
最終更新日 : 2026-02-08 続きを読む