莉奈はスマホを取り出し、一本電話をかけた。「桜井家の御曹司、桜井隼人のニュース、何かある?」電話の向こうでは何かを調べているらしく、少ししてから返事が来た。「一本だけあるよ。昨夜、隼人が自分のクラブから担架で運び出されて、病院に送られたところを撮られてた。誰かに殴られたみたいだけど、この件は出すなって言われてて」莉奈が質問する前に、同僚は声を潜めて続けた。「彼のお姉さんの元カレの意向らしいよ」承也……莉奈は少しも驚かず、短く「そう」と答えた。「どこの病院か分かる?」「椎名グループの病院だよ。聞いた話だと、元カレの承也が人を大量に配置してて、まるで要人でも入院したみたいな警備だとか。とにかくすごいよ」莉奈は、雲の隙間からそっと顔を出した夕陽を見つめた。斜めに差し込む光に、思わず目を細める。承也は、自分がまだ諦めきれず、隼人に仕返ししに行くのを恐れているのだろう。しかし、承也には分からない。昨夜、たとえ彼が止めなくても、自分が本気で隼人の命を奪うつもりなんてなかった。あんなクズのために、自分の残りの人生を賭けるなんて、割に合わない。自分が知りたかったのは、承也が美月のために、どこまでやるのか、それだけだ。結果は案の定で、予想通り。ただ一つ計算外だったのは、そのあと承也が家に戻って、完全に理性を失ったこと。あれは、子どもの頃から今まで、一度も見たことのない承也だった。ボディーガードが薬を持って戻り、莉奈はナースステーションで看護師に耳の処置をしてもらった。「帰ったら、ちゃんと休んでくださいね」あまりにも綺麗な彼女を見て、看護師は親切に声をかけた。「ありがとうございます」車に乗る前、莉奈は通りの向こうにある薬局に目を留めた。「ちょっと待ってて。買いたいものがあるから」「先にお乗りください。何を買うか言っていただければ、私が行きます」ボディーガードはそう言って、ドアを開ける。莉奈はのんびりと答えた。「アフターピルよ」「……」だが彼はすぐに我に返り、慌てて彼女の前に手を出した。「それは社長の許可が必要です」「私のお腹の話でしょ?なぜ彼の許可がいるの?」莉奈は冷たい目で彼を見た。その一瞬、ボディーガードは彼女の目の奥に、承也の影を見た気がして、反射的に手を引っ込めた。次の瞬間に
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