部屋の中では、香炉から細い煙がゆらゆらと立ちのぼり、茶釜の湯が静かに煮えたぎる音だけが響いていた。それ以外に聞こえるのは、千鶴の今にも途切れそうな、ひどく浅い息遣いだけだ。恐ろしいほど静かで、重苦しい空間だった。死の淵に立って、千鶴はようやく合点がいった。承也がなぜあれほど莉奈を手放そうとせず、それでいて誰にも真意の読めない奇妙な振る舞いばかりを繰り返していたのか。承也の心には、間違いなく莉奈の居場所がある。それどころか、彼女の存在は彼にとって……承也は、血の気が失せるほど強く握りしめていた拳を、ゆっくりとほどいた。古い寝台の帳が落とす暗い影が、彼の眉目のあたりに重くかかっている。「……医師を呼んで診せます」千鶴は、ただ弱々しく首を横に振った。千鶴の瞳には、もう生気の光が残っていなかった。残された命のすべてが、次の一息だけでかろうじて繋ぎ止められている状態だった。承也にも、それがもう無意味なことだと分かっていた。この部屋に入った瞬間から、ここにいつもとは違う気配が満ちているのをはっきりと感じ取っていたのだ。「私と約束するのか、しないのかい!」千鶴は残された最後の力で承也の手を強くつかみ、濁った目を限界まで見開いて、その顔をキッと睨みつけた。眼球は飛び出さんばかりで、今にもこぼれ落ちそうだった。「承也……あんたは、私を……死んでも死にきれないまま、逝かせるつもりかい……」千鶴はヒュッと激しく息を吸い込んだ。極限まで張り詰めていた身体が痙攣し、硬くこわばる。頭をのけぞらせた喉の奥から、短く細い、擦れた音が何度も漏れた。承也の漆黒の瞳が、激しく揺れ動いた。承也は千鶴のシワだらけの手を、両手で強く握り返した。掌の中で、千鶴の体温が急速に失われていくのが分かる。承也は身をかがめ、千鶴の耳元に唇を寄せて、低く掠れた声を落とした。「俺と彼女は……」その先に続いた言葉は、胸の奥から血を吐くように無理やり押し出した、ひと言ずつ低く掠れた音だった。それを聞いた千鶴は、ふっと糸が切れたように枕へ倒れ込んだ。垂れ下がった帳を見つめていた目の焦点が少しずつほどけ、重いまぶたがゆっくりと閉じていく。「いい……それで、いいんだ……」……一方、莉奈は白崎執事に部屋の外で止められ、中の音は一切聞こえなかった。重い
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