莉奈の両こめかみは、汗に濡れていた。赤く腫れ上がった唇。引き裂かれた襟元はだらしなく崩れ、赤い痕がまだらに残る胸元を隠しきれていない。けれど、彼女の氷のように冷たい一言と、手のひらにべっとりとついた血が、車内に満ちていた濃密で危うい熱を跡形もなく打ち砕いた。承也は鋭く問い詰めた。「何をしたんだ!」瞳の奥に渦巻いていた情欲の色は、一瞬にして深い漆黒の底へと沈んだ。目尻にほんのりと差した赤みだけが、つい先ほどまで彼がどれほど煽られていたかを物語っている。密閉された車内には血の匂いが立ち込め、無数の蟻が神経を這い回るような不快感を広げていた。承也は血を流す莉奈の手を掴んだ。同時に、彼女のもう一方の手が血まみれの十徳ナイフを握りしめているのが目に入った。承也の瞳が、ぎゅっと収縮する。――彼女、こんなやり方で正気を保とうとしていたのか!自分を傷つけてまで、俺に触れられることを拒んだというのか!凄まじい怒りの炎が、承也の瞳にわずかに残っていた情欲を焼き尽くし、鋭い憤怒だけを残した。承也は十徳ナイフを奪い取ると、力任せに車のドアへ叩きつけた。鈍い音を立てて跳ね返ったナイフが、床に転がり落ちる。「そこまで俺に触れられたくないのか?」「ええ」莉奈の答えは、あまりにも静かだった。まるで目の前の男を、先ほどまで自分の熱を逃がすための道具としてしか見ていなかったかのように。十徳ナイフを奪われ、莉奈のその手は空いた。莉奈は引き裂かれたドレスを掴んでかき合わせ、先ほどまで露わになっていた肌をきっちりと覆い隠した。迷いのない肯定を聞き、承也の顔は凍りつくほど険しく沈んだ。承也は血を流す莉奈の手首をきつく掴むと、彼女のドレスの裾をさらに引き裂き、傷ついた手のひらに巻きつけた。莉奈の冷えきった声が、力なく車内に響く。「私にキスをして、触れて、助けようとしてくれているのは……他の誰かだと思っていたわ。あなただと分かっていたら、死んだ方がましだった……」承也は霜が降りたような冷酷な顔で、鋭く彼女の言葉を遮った。「莉奈!」承也は顔を上げた。先ほどまで情熱に焼かれ、赤く潤んでいた莉奈の瞳には、今や一片の温度も宿っていない。彼は冷えきった指先で、先ほどまでナイフを握って震えていた彼女の指を、ぎゅっと強く握り込んだ。承也は冷
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