Home / 恋愛 / 浮気夫は復讐する / Chapter 11 - Chapter 20

All Chapters of 浮気夫は復讐する: Chapter 11 - Chapter 20

59 Chapters

11話 何故?

次の日起きると、昨日同様既に隣に人はいなかった。しかし階下で人が動く音がするため、どうやらまだ出かけてはいないようだ。今日は見送りに間に合ったことに安心した優希は、眼鏡をかけるとパジャマのまま寝室を出ていった。 キッチンを覗くと暁春の背中が見えた。優希のチェック柄のエプロンを着けた後ろ姿は広い肩と細い腰が強調され、そのスタイルの良さを際立たせていた。身につけた黒いシャツと同色のスラックスがどこか冷たい雰囲気を感じさせ、昨晩の柔和な印象は消え去っていた。捲った袖から露出した腕は血管が浮き、動く度に筋肉が隆起するのが見えた。 胸が熱く感じた優希はゆっくりと近づき、暁春の腰に抱きつく。普段は恥ずかしがって自分から親密なコミュニケーションを取れない彼女だが、今は背中を向けられているから大胆になれた。 広い背中に額を押し付けると、振動から暁春が小さく笑ったのが分かった。幸福感に満たされ、優希の口元にも笑みが浮かぶ。体を振り向かせた暁春がその唇に軽く触れると優希の顔が赤くなった。急いで腰に回した腕を外そうとするも、暁春の手に捕まえられた。 「おはようございます。フルーツジュースを作りました。オレンジとグレープフルーツを使っているので、疲労回復に効きますよ。」 優希は暁春が言った疲労の原因を思い出し、耳まで赤くした顔でお礼を言う。 フルーツジュースを受け取ると爽やかな香りが気分をスッキリさせた。 「朝食は作ってます。昨晩残したものは、食べられそうなものは冷蔵庫に入れておきました。」 暁春に腰を抱かれながらダイニングテーブルに歩いていく。今日はバターロールとコーンポタージュだった。 パンを食べながら、優希はこっそりと暁春を見る。機嫌は良さそうに見える。 今なら言えるかも…? 「あ」 「何か新しい事を始めたらどうですか?」 優希が声を出しかけた瞬間、またしても暁春に遮られる。開けた口を誤魔化すようにパンを頬張った。 「ヨガとか外国語とか絵画とか、趣味を見つけてみたら
last updateLast Updated : 2026-01-29
Read more

12話 おばあさん

竹田は暁春の2人いる側近秘書の1人で、優希も何度か顔を合わせたことがあるが、暁春へ書類を届けにきた時や、運転手として送ってきた時などに会釈する程度だった。もう1人の側近秘書の有美より会った回数は少ないが、優秀な人物である事は立ち振る舞いから想像できた。 結婚当初、何かあった時のためにと暁春に秘書2人の連絡先を登録されたが、優希が彼らに連絡をした事はなかった。彼女は暁春の仕事のことには全く関わっておらず、結局、公表されていない存在なので社長夫人として会社を訪ねる事も出来ず、連絡を取り合う必要がなかったのである。 初めて連絡を取ることに緊張し電話かメッセージかで少し迷ったが、仕事中だろうと思いメッセージの送信画面を開いた。 "こんにちは、お忙しいところごめんなさい。暁春が携帯を忘れたんじゃないかと思うのだけど、困ってないかしら?近くまで持って行ったほうがいい?" 返信を待っている間に身支度をしようと、2つの携帯をベッドに置く。 5分ほどして優希の携帯がメッセージ受信を知らせた。 "ご自宅まで受け取りに行きます。30分程度で着きますのでお待ちください。" 悟の簡潔なメッセージを確認し、到着を待つため階段を降りていった。 リビングのソファに座り、自分の携帯を見る。今度はアドレス帳の中からおばあさんと登録された名前を探しタップした。妊娠報告の相談をするつもりだった。 迷わず電話をかけると、数コール後に優しい声が聞こえた。 「可愛いゆうちゃん、どうしたの?」 「おばあさんにお話ししたい事があるんですが、使いうちに伺ってもいいですか?大事なお話しなので、あの・・・」 「ふふ、明後日はおじいさんと私だけだから、お昼前に来て一緒にご飯食べましょう。」 安心した優希はその後10分ほど話した後、2日後に訪ねる事を約束して電話を切った。 電話を切った優希は庭を見る。 ソファの正面には掃き出し窓があり、ウッドデッキに出られるようになっている。ウッドデッキの向こうには芝生が敷
last updateLast Updated : 2026-01-29
Read more

13話 明るいニュース

三滝社長とは優希の父、三滝 隆一(みたき りゅういち)のことである。彼女の実家は製薬会社だった。 優希は井竜と三滝が協業関係にあることは知っていたので、特に何も思わずに頷いた。 「では、失礼します。」 悟は会釈をして車で去っていった。 その後はいつも通り掃除をし、午後からは妊娠についての本を読み漁って過ごした。ネットでベビー用品を見ていると、花柄や星柄、動物柄などの可愛いもので溢れていて、彼女の目を楽しませた。 夜は暁春が帰って来ないので昨晩の残り物で簡単に済ませ、ゆっくりとソファに横になってテレビを見る。 愛する夫に会えないのはもちろん寂しいが、このように気を抜いた姿を見られる心配がないことは良かった。優希はまだ所帯染みた姿は見せたくなかったのだ。 バラエティ番組が終わるとニュース番組に切り替わった。ニュースでは国内で起こった最新の事件や事故、芸能人のスキャンダルなどを男女のキャスターが神妙な表情で読み上げる。 優希は欠伸をして、そろそろお風呂に入って寝ようと思いテレビのリモコンを取る。その時画面の中では、スタッフらしき男性が、慌しく男性キャスターに新しい原稿を渡す姿が映っていた。どうやら速報が入ったようだ。 渡された原稿を軽く見たキャスターは、すぐにカメラに目線を向け話し始めた。 ‎‎『速報です。』 『井竜財閥の現社長、井竜 暁春氏が先程、母親である 山本 美緒(やまもと みお)さんの意識が一時的にではありますが回復したとの事を発表しました。』 『以前三滝製薬から発表された新薬が効果的だったのではないかと、担当医師は話しているそうです。』 隣の女性キャスターはそれを聞きながら小さく頷き、穏やかな声で続ける。 『長年植物状態と診断された方が意識を取り戻す事は、奇跡に近いそうです。今私たちはその奇跡を目撃しているのでしょう。』
last updateLast Updated : 2026-01-30
Read more

14話 かつての思い出

結局次の日に起きた時もまだ返事は無いままだった。普段優希からのメッセージへの返事は一晩跨いだ事が無かく、これが初めてのことだった。 暁春からの返事が無い以上、何度も優希から送るのも憚られ、お昼過ぎに一度気遣う内容のメッセージを送っただけで、その日は一日中携帯を持ってソワソワしていた。 連絡が来たのは夜になってからだった。 食欲がなくとも赤ちゃんのことを考え、無理やり口にお粥を運んでいた優希は、着信音がなると反射的に携帯を取った。 『ゆうちゃん、連絡が遅くなってすみません。‎‎』 電話の向こうは静かだった。 『大丈夫よ。昨日から疲れたんじゃ無い?おばさまの容体はどう?』 『ニュースでも言っていたと思いますが、まだ一時的な回復なんです。昨日は少し瞬きと、こちらの問いかけに手を握る反応がありましたが今はまた反応がない状態に戻ってしまいました。でも、新薬の成分が脳の回復を促してくれるもので、投薬を続けていけばもっと反応を返せるようになるだろうと医者は言ってました。』 『そっか、希望が見えたのは嬉しいね。お見舞いに行きたいんだけど、いつだと都合がいいかしら。まだ報道の人たち集まってる?』 『暫くは人が多いので、落ち着くまで待った方がいいでしょうね。』 「わかったわ。落ち着いたら教えて。』 ‎『⋯ゆうちゃん、母さんは俺たちのことをわかってくれますよ。』 少しの沈黙のあと、暁春は優しい声で言った。優希が昨晩から気にしていたことを見透かしているかのように言われたことに、驚くとともに不安が消えていくのを感じた。 『⋯うん⋯。ありがとう。』 優希は少し声を詰まらせながらもお礼を言う。 『こんな状況だから今晩も帰れませんが、しっかり戸締りをしてくださいね。警備員がいるとはいえ、自衛はしっかりしてください。寝る時はしっかりとパジャマを着てくださいね、春の夜は冷えますから。
last updateLast Updated : 2026-01-31
Read more

16話 はっきり伝える

「結婚記念の日から暁春に妊娠のことを伝えようとしましたが、言い出す前に否定されてしまって、まだ伝えられていないんです。」 「妊娠した理由も、…私が細工をした事が原因なので、タイミング悪い時には言いにくくて…。」 「お2人から子供についての考えを変えるよう説得できませんか?」 藁にもすがる思いの優希は、老夫人の手をしっかり握り伝えた。 「ゆうちゃん…。」 老夫人が頷こうとした時、それまで黙って聞いていた老人が口を開いた。 「いや、変に儂らが口を出せば余計頑固になるだけだ。」 優希と老夫人は同時に老人へ目を向ける。 「良いことも言わないくせに、こういう時だけ…。」 老夫人はそちらを睨みつけながら、食いしばった歯の隙間から声を絞り出す。老人は老夫人をチラリと見た後、すぐに優希に目を向けた。 「優希、勘違いしないで欲しい。儂も曾孫が出来たことは心から嬉しいと思っている。」 「だが、暁春が頑固なのもよく知っている。儂の孫だからな。あいつは小細工をされる事を嫌うから、儂らが介入すれば余計反発して来るだろう。」 「優希が直接伝えるしかない。はっきりとな。」 「…。」 優希は俯いた。老人の言っていることが本当だと理解しているからだ。暁春は権力者として威厳も才能も持ち合わせていたが、それに比例してプライドが高かった。彼女には優しく接してくれるが、他人には支配的な態度をとっていることを知っていた。そんな彼が、自分の後ろで話を合わせていたなんて知れば、余計子供を望まなくなるだろう。 喜んでくれるのを期待はできないわね…。 彼女は妊娠がわかってから、妊娠報告をした時の暁春の反応を何度も想像していた。きっと驚きながらも次の瞬間には満面の笑みで彼女を抱き上げるだろうと思っていた。ドラマや漫画のような展開を期待していたが、現実は寂しいものになりそうだと思った
last updateLast Updated : 2026-02-01
Read more

15. 報告

嬉しそうに美代子にお茶を渡すおばあさんに顔を綻びせながら優希は目を伏せる。 「おばさまのこと、一時的とはいえ意思疎通が取れと聞きました。おめでとうございます。」 美緒の事が話題になる時、優希はいまだに罪悪感から顔を上げて話せない。それを理解しているから、おばあさんは勿論、マナーに厳しいおじいさんも何も言わない。 「昨日、私とおじいさんがお見舞いに行った時はもう元に戻ってしまった後で、まだ何も実感がないのよ。でもゆうちゃんのお父さんの新薬がもっと効いていけば、きっと私にもお返事をくれる時が来るって信じてる。」 「そうですね、それまでお元気でいて下さいね。」 「暫くは親戚連中が尋ねると思うから、ゆうちゃんはまだ行かない方が良いわね。」 「はい、暁春にも言われました。」 「さぁ、お茶ですよー!お茶請けは若奥様のために街の福楽天で買ってきたお饅頭です!」 その時美代子がお盆を持って現れた。お盆の上には湯気の立つ湯呑みと、桃の形をしたお饅頭が乗せられていた。福楽天は高級菓子店で、予約は受け付けておらず先着順のみのお店だった。美代子はわざわざ朝から並んで買ってきてくれたようだ。 お茶を1口啜ると、おばあさんは満足気に息を吐く。それを見て優希も湯呑みに口をつける。瞬間、口の中に広がる苦味と、それのあとに訪れる微かな甘さに優希も老夫人同様息を吐いた。 次にお饅頭に手を伸ばす。1口齧るとほのかに桃の風味を感じさせ、しかし甘すぎない餡子が薄皮と非常に合っていた。 「まぁ、私が思うに…孫が話しかけてくれたら、美緒ちゃんもきっとすぐに目を覚ますわよ。」 お茶で口を潤した老夫人が、饅
last updateLast Updated : 2026-02-01
Read more

17話 するかしないかのみ

「もういいです、おばあさん。落ち着いて下さい。」 「ゆうちゃん…。」 「おじいさんの言う通りです。私が浅はかでした。32歳にもなって、考えが幼すぎました。」 「望まれていないのに強引に妊娠して…夢を見すぎてたんです。」 太陽が雲に隠されたのか、室内の明るく暖かい雰囲気が一気に暗くなった。リビングには沈黙が流れ、時計の音だけが響いている。 優希は湯気の消えた湯呑みを見ていた。 「…妊娠したことだけを伝えれば良い。細工の事は知らなくてもいいことだ。」 静かなリビングに老人の淡々とした声が響いた。 「…でも、暁春は避妊を徹底していました。何故妊娠したのか気にするでしょう。」 優希が言うタイミングをずっと待っていたのは、暁春がその事を指摘してきた時に説明しても、受け入れてくれる可能性が欲しかったからだ。 「完全な避妊は優希に触れないことだけ。そういうことをしたのなら、妊娠するかしないかしかない。自制出来なかったあいつの落ち度でもある。」 経営者としての広い視野から来る考えなのか、極端にも感じる言葉ではあるが、優希には頷く他無かった。 「週末に皆を呼んで夕飯を食べましょう。その時に言えばいいわ。暁春も私とおじいさんの前では変な顔もしないでしょうし。勿論私達は何も言わないわ。ね、おじいさん、それなら良いかしら?」 老夫人が優希の背中を慰めるように撫でながら優しく言う。老人に問いかける声は少し刺々しく感じたが、先程の怒りは落ち着いたようだ。 無言で頷く老人に、優希は小さく息を吐いた。老夫人の申し出はとても有難いもので、暁春と2人っきりの空間で伝える勇気が無かった優希にとって、渡りに船だった。
last updateLast Updated : 2026-02-02
Read more

18話 秘書なの

円卓の椅子に座り、和やかな雰囲気で3人はお昼ご飯を食べていた。老夫人の怒りも収まったのか、老人がお皿に入れたものも食べている。時折2人の目が合うと、お互いに目元が下がるのを正面から見ていた優希は、それだけでお腹がいっぱいになりそうだった。配膳をしに来る美代子もそれを見ると、わざと顔を手で扇いで笑った。 ブーブー 優希の携帯が短く震えると、一瞬会話が止まる。暁春からのメッセージだった。 "ゆうちゃん、お昼ご飯ちゃんと食べた?俺は三滝社長とランチだよ" そういうメッセージに添えられていたのは、テーブルに置かれた海鮮料理の前でピースをする暁春の手の写真。テーブルの奥の方にはグレーのスーツを着た人が写っており、おそらくそれが隆一なのだろう。顔は写っていないが、そのスーツは以前雑誌のインタビュー記事で着ているのをみたことがあった。 優希の目線は暁春の手に戻り、筋張った男性らしい手を無意識に撫でる。 「あらぁ~、誰からのメッセージにそんな顔をしているのかしらねぇ~」 老夫人の揶揄う声に余計顔を赤くした優希は、誤魔化すようにスープを口に運ぶ。そんな優希に老夫人はくすくすと笑った。 「当主、お電話です。」 1人の執事が電話機を持って老人の傍らに立った。老人はそちらを一瞥し、口元を拭くと席を立つ。 「食べていてくれ、少し電話に出てくる。」 引退をしたと言っても財閥の当主であるため、会社の方針など大まかな事は老人にも共有している。 優希と老夫人は老人に手を振り送り出した。 「ゆうちゃん、さっきはおじいさんがごめんなさいね。」 老人の背中が見えなくなると、老夫人は先程までの明るい表情を崩し眉をひそめながら優希を見る。 「気にしないでください。はっきり言ってもらえて良かったです。」 「でも言い方があるわよね、あんなぶっきらぼうに…。
last updateLast Updated : 2026-02-02
Read more

19話 白い膝

老夫人が指さした箇所は画像の端の方で、位置的には暁春の隣に座っている人を指していた。 優希はそこを見て少し眉を顰めた。主に暁春の手に意識が行っていたため先程は気付かなかったが、手の下に見える彼の足に触れている、白い膝が写っていた。膝より上は写っていないが、白く綺麗な膝から年若い女性のものとわかる。 暁春はそれほど脚を開いて座っているわけではないため、足が触れ合うということは2人の元々座っている位置が近いことが予想できた。それこそ、肩が接触するくらい…。 優希の背中が冷たくなった。 優希以外に接する時の暁春は、他人との接触を好まないはずだった。直接彼がそう言った訳では無いが、SNSを通して見る彼の評価はそうだった。 ふと、優希は自分が家の外での暁春をあまり知らないことに気付いた。隠れ婚なので2人で外出は出来ず、行くとすればここ本邸くらいだった。外での暁春の姿は主にSNS経由で知っていた。 「あ…、でも有美ちゃんは2日前から体調不良でお休みだったはずです。私が暁春にお願いしました。」 「この画像も、別の同行者が偶々近づいた時に写ったのかもしれないですし…。」 「もしかしたら、足が綺麗な男性かもしれませんよ。」 耳の奥で心臓の音が響いているのを感じながら、急いで老夫人の思っているだろうことを否定する。彼女は暁春を信じたかった。 老夫人はチラリと携帯を見てため息をついて言った。 「そうね、あの子はあまり他人と触れ合うことが好きじゃなかったから、おばあさんがちょっと驚いただけ。ごめんなさいね。」 老夫人が同意してくれた事に安堵の表情を浮かべるも、次の言葉にまた眉を顰める。 「………でも、この写真とは関係ないことでゆうちゃんに確認したいことがあるの。」 言いにくいことなのだろう、老夫人は俯いて優希から目線を外す。 緊張からか、優希は下腹部が小さく痛むのを感じた。
last updateLast Updated : 2026-02-04
Read more

20話 2人の過去

優希の車が門から出て見えなくなると、老夫人はリビングに戻って行った。その顔は険しく、先ほど優希に向けていた柔らかさは無い。 老夫人がソファに座ると、その隣が定位置かのように老人も座った。 「……おじいさんは知ってたんですか、有美ちゃんが暁春の秘書だということを。」 徐に口を開いた老夫人の横顔を、老人は無言で見つめる。それを肯定と察した老夫人は声を震わせた。感情的になっては駄目だと自分に言い聞かせながら手を強く握る。 老夫人は会社のことに昔から関与していなかったため、有美の件は知らなかった。 「あなたも知ってますよね、あの2人が昔交際していたことを。」 「知ってて暁春を止めなかったんですか?」 老人は変わらず無言だった。 「ゆうちゃんはそれを知らないんですね。暁春は結婚する時に伝えていないんでしょう?それこそ公平じゃないです!」 「…それどころか、今の関係だってどうだか分かりません。」 老夫人は優希に見せてもらった画像を思い出す。有美が今も暁春のそばにいることを知り、彼女はあの膝が有美のものだと思っている。暁春が体の接触を許した人は、家族以外では優希と有美だけだったからだ。 「………あいつには、後悔しない選択をしろと教えてきた。」 静かに口を開いた老人の言葉の意図を測りかね、老夫人は険しい顔のまま顔を横に向けた。 「私も今、教えてあげたいですね。」
last updateLast Updated : 2026-02-04
Read more
PREV
123456
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status