他に湊を世話してくれる人がいるなら、こっちがわざわざ行くまでもないだろう。湊の容体が安定しているのを確認し、綾は胸をなでおろした。帰宅してくつろいでいたとき、達也から着信があった。湊に何かあったのかと思い、綾はすぐさま電話に出る。「達也さん、何かあったの?」「今夜は来ないのか?」と、達也に問い詰められた。彼は事前に、綾が仕事帰りに寄ると湊に伝えていたらしく、湊はずっと待っていたようだ。弱っているときほど人は孤独を感じるものだ。綾がそばにいれば、きっと回復も早まるだろう。それに、腎臓移植の件についても話を進めたいと考えていた。綾は少し黙ってから答えた。「さっき行ったら凪が食事の世話をしていて。邪魔したくなかったから帰ったわ」こっちもやり方を知らないわけじゃない。目的のためなら、少しばかり嘘をつくことも厭わない。湊と離婚するつもりだが、凪にすべてを譲る気なんてさらさらなかった。最初は、海斗を連れて戻ってきた凪を見て、素直に身を引こうとしていた。けれど、凪が仕掛けてくる悪意の数々に、その考えは一変した。湊を凪なんかに渡してたまるか?湊が凪に嫌悪感を抱くよう仕向けなくては。達也は電話越しにため息をついた。湊の今の行いでは、綾が冷めてしまっても仕方がないのだ。達也もそれ以上説得するのは気まずかったようで、そのまま電話を切った。凪が下の階に下りると、達也は仕事をしていた湊の手から、タブレットを強引に奪い取った。「君がいなくても会社は回る。無理をすれば体を壊すぞ」湊は身体の不調を抱えており、ストレスや仕事のしすぎで状態が悪化しつつあった。「まだ綾が来ないから、手持ち無沙汰でね」湊は病院の廊下へ目を向けたが、人の気配はなかった。達也は諦めたように言う。「綾はもう来ないさ。いや、正確にはすでに来ていたよ」湊は眉をひそめる。「いつ?ずっと起きていたけど、姿は見なかったぞ」「二宮さんと食事をしていた時、それを見ていたんだ」達也の言葉に、病室が静まり返る。少しして達也が言った。「湊、綾に対して酷すぎる。彼女をなんだと思ってるんだ?妻だと言いながら、綾のプライドをまるで大事にしない。妹同然だと言いながら、結局は愛して結婚した」湊はこめかみを押さえた。ただ、最近傷つくことの多かった凪
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