「もうこれ以上飲んだら店の酒がなくなっちゃうわ。飲み比べは終わりにしよう」健吾はグラスを口元から離すと、苦笑混じりに言った。「うちの綾のお達しだ。これ以上は遠慮させてもらうよ」颯太は笑いながら最後の一杯を飲み干し、お代わりを注ごうとしたところを、綾にボトルを奪い取られた。綾は自分にたっぷり一杯、颯太には半量ほど注ぎ足した。「颯太さん、改めて乾杯しよう。これまでずっと私を支えてくれて、本当にありがとう。これからの毎日が輝かしいものになりますように」綾は颯太とグラスを合わせ、飲み干した。颯太に抱く感謝は本物だった。湊に追い詰められ、健吾に誤解されていた辛い時期、明里以外で唯一信じられたのは颯太だけだったからだ。もし実の兄がいたなら、こんな人であってほしい――綾は颯太に対してそんな理想の兄のように思っていた。「綾さんのことは俺の実の妹みたいに思ってるよ。だから、当然のことをしたまでさ」颯太はグラスを高く掲げ、一気に飲み干した。「これから先も何かあったら、いつでも相談してくれ」綾が頷こうとする間も待たず、健吾が遮るように口を開いた。「颯太さん、お気遣いはありがたいですが、必要ありません。これからは俺がいますので。綾の悩みなら何だって解決できますよ」「そう願いたいですね」颯太は穏やかな笑みを浮かべ、淡々と返した。微妙に流れるピリピリした空気を察して、雅也が場を収めようとした。「敗者は酒を飲まされるルールで、こっちはずっと勝ちっぱなしで、お酒を一滴も飲めていないんですけど。綾さん、この辺でお酒を片付けて、別の遊びをしましょうか」「千葉さん、この二人をお願いしますね」綾はボトルを下げさせ、スタッフにフルーツとお茶を運ばせた。明里はソファで満足そうにニヤついている。綾はそっと明里の顔の前で手を振った。「酔っ払ってないんでしょ?何がそんなにおかしいの?」明里は綾の腕に抱きつき、その肩に頭を預けた。「それで、これからは何をするつもりなの?」「まずはピラミッドを見て、そしてオーロラね。砂漠を歩くのもいいかも……」どこに行こうと、どうせ健吾がついてくる。健吾がいれば、どこだってそこが家になる。「ただ遊び回るだけ?前に約束してた共同創業のことは忘れたの?」明里はわざとらしく指摘した。
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