来人を見る小林さんの目は、どこまでも冷たかった。見ている僕でさえ、その視線に息を飲む。「中途半端な優しさで、また祐希様を傷付けるんですか?しかも、自分の番の春馬さんまで傷付けて……とんだクズ野郎ですね」来人の顔が強張る。「狗飼家は、子供の躾がなっていませんね。こんなバカ息子に育てて」淡々とした声なのに、その一言一言が深く刺さる。僕は慌てて来人の前に立った。「もうやめて下さい!確かに来人は単純でバカだけど、こいつなりの優しさなんです!」「春馬……フォローになってない」来人が小さく呟く。「うるさい!僕はまだ、お前に怒ってるんだからな!」振り向かずに叫ぶと、背後から情けない声がした。「春馬……ちゃんと祐希には説明してきた。そいつが命懸けで助けたことも……俺と春馬が、もうパートナーだってことも……」今にも「くぅ〜ん」と鳴きそうな声だった。「来人、その話は後で!」「春馬、もう怒ってないか?」「来人!空気読んで!」「春馬が怒ってないって言うまで、空気読まない!」突然、背後から抱き締められる。「来人、待て!」思わず叫ぶと、来人はしょんぼりと離れた。その様子を見ていた小林さんが、ぽかんとした顔をしたあと、吹き出した。「敵わない。本当に……春馬君には敵わないよ」ひとしきり笑うと、「今日は、春馬君に免じて赦してあげます。祐希様も、随分ご迷惑をお掛けしたようですし」そう言って、小林さんは背を向けて歩き出した。「カッコイイよな〜小林さん」ポツリと呟く。振り返ると、来人が耳を垂らした犬みたいな顔をしていた。思わず、溜め息をついた。
Read more