Inicio / BL / 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です / 第八十二話アンバランス

Compartir

第八十二話アンバランス

Autor: 古紫汐桜
last update Fecha de publicación: 2026-04-05 19:00:00

「来人!見てないで、こいつどうにかしてよ!」

怒る竜ヶ峰に、来人はクスクスと笑いながら、

「はいはい。春馬……どうどう」

そう言って、竜ヶ峰から引き剥がした。

「どうどうって、僕は馬か!」

「春馬だから?」

「それな!……って、違うだろう!」

僕と来人のやり取りに、竜ヶ峰はぽかんとしたあと、クスクスと笑い出した。

あ……笑った顔、初めて見た。

竜ヶ峰の笑顔は、まるで幼い子供みたいだった。

妖艶さと幼さを同時に抱えた、危うい存在。

僕は、思わず不安を覚えた。

竜ヶ峰は、脆い硝子細工みたいだ。

美しさに惹かれて手に取れば、きっと壊してしまう。

だからこそ、自分を守るために、全身に棘を纏うことを覚えたのだろう。

そして、そんな竜ヶ峰が唯一、心を許して委ねたのが来人だったのかもしれない。

今思えば、竜ヶ峰は来人を奪われまいと、必死だったのだろう。

……もっと早く気付いていたら
Continúa leyendo este libro gratis
Escanea el código para descargar la App
Capítulo bloqueado

Último capítulo

  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第九十七話:閑話休題~兄、竜ヶ峰綾人の苦悩⑤~

    祐希が失踪して二月《ふたつき》が経過した頃、狗飼家の縄張りに瘴気溜まりが頻発するようになった。その瘴気が瘴気を引き寄せるように広がり、あちこちで瘴気溜まりが発生し始めた。まさか祐希が……。胸がざわつく中、今度は静が怪我をしている姿を見掛けるようになった。嫌な予感がした。再び神蛇に祐希が狙われているのではないか——そう思い、静に詰め寄った。しかし静は、「今はまだ、何も言えない」としか答えなかった。それ以上は何も聞けず、不安と焦りを抱えたまま、俺は竜ヶ峰家の縄張りに現れる瘴気溜まりを祓うことで精一杯だった。このまま何も知らされず、取り返しのつかないことになってしまうのではないか——そんな恐怖が、じわじわと胸の奥に広がっていた。──そんなある日、猫柳家から一本の電話が入った。祐希が、意識不明の重体だという知らせだった。親父と共に駆け付けた病室には、青白い顔をした祐希が眠っていた──。あれから半年の月日が流れた。祐希は目を覚まし、十三家紋の裁きを受けない代わりに、霊山に籠もることになった。静は迷うことなく祐希についていくと言い、親父とお袋に伴われて霊山へ向かった。時折届く便りには、祐希との穏やかな日常が綴られている。……こうなるなら、最初から二人を認めてやれば良かった。今さらながら、そんな後悔が胸をよぎった。そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、祐希から短い便りが届いた。「遠回りしたからこそ、静に辿り着いたんだと思うよ。だから兄さんは、自分を責めないでね」なぁ、祐希、静。俺は、お前たち二人が幸せであることを、心から祈っている。

  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第九十六話:閑話休題~兄、竜ヶ峰綾人の苦悩④~

    結婚式の招待状を見て、静がブチ切れた。「祐希がいるのに、どういうことだ!」怒り狂う静を宥め、俺は祐希に連絡を入れた。祐希は落ち着いた様子で「偽装結婚だ」と話してくれたが……あいつの性格だ。春菜さんに対する嫌味や皮肉が、悪意として受け取られなければいいが。——その不安は、一年後に的中した。猫柳春菜さんが心を患い、離婚したと風の噂で聞いた。「そもそも、祐希がいるのに結婚するからそうなるんだ」静はそう言い捨てたが、俺は祐希のせいで春菜さんが追い詰められてしまったことに、胸を痛めていた。それでも、祐希は帰ってくる気配がない。電話をかけると、祐希は淡々と言った。「来人は春菜じゃなくて、僕を選んだんだ」……俺の知る狗飼来人は、どこか脆さを抱えた男だった。自分の妻が心を病んで、本当に平気でいられるのだろうか——。その答えは、間もなくやってきた。猫柳春菜の訃報だった。葬儀に伺ったが門前払いで、祐希が原因だと思われているのは明らかだった。やはり……祐希が、追い込んでしまったのか。それでも祐希は戻らず、半年が過ぎた頃——ようやく、祐希が帰ってきた。傷ついていたであろうあいつを、温かく迎えてやるべきだった。美津にも「良いですか。何があっても、祐希さんを叱ってはいけませんよ」と釘を刺されていたし、わかっていた。わかっていたのに——いつも通りの飄々とした祐希の顔を見た瞬間、積もっていた感情が一気に溢れ出した。美津の制止も耳に入らないまま言い争いになり、気づいたときには俺は祐希の頬を叩いていた。「祐希様!」静が慌てて割って入り、揉み合う中で、祐希は涙を浮かべて叫んだ。「兄さんなんか、大嫌いだ!」そのまま家を飛び出した祐希は——母親と共に、姿を消した。

  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第九十六話:閑話休題~兄、竜ヶ峰綾人の苦悩③~

    そんな中、俺に縁談の話が舞い込んできた。「え? 兄さんに縁談?」祐希が唇を尖らせる。見合い写真を覗き込み、「え……こんな地味な人が兄さんの相手?」露骨に不満を口にした。見合い当日、祐希は当然のようについてきた。だが、見合い相手の美津は、とても利発な女性だった。祐希の嫌味にも動じず、にこやかに受け流す。そして気付けば──結婚する頃には、祐希が「姉さん」と呼ぶほど信頼されていた。ある時、美津に聞いてみた。「祐希さん、最初はずいぶん辛辣でしたよね」そう言うと、美津は小さく笑った。「綾人さんが大好きなんですよ。だから、最初は警戒していたんだと思います」「……警戒?」「えぇ。でも、私の気持ちに気付いてからは、優しくなりましたよ」「美津の気持ち?」「はい。私、綾人さんのこと、ずっと好きでしたから」そう言って微笑む美津に、思わず顔が熱くなる。「それに……」くすりと笑いながら続けた。「小林さんに近付きたくて、綾人さんを利用しようとしていた女性たちを、祐希さんが全部追い払っていたんですよ」その言葉に、俺は言葉を失った。守っていたつもりだった。だが──守られていたのは、俺の方だったのかもしれない。「仲の良い、素敵なご兄弟ですよね」美津の優しい笑顔に、俺は何度救われただろう。穏やかな日々が続いた。 やがて子供が生まれ、祐希はそれはそれは可愛がってくれた。ある日、祐希がぽつりと呟いた。「僕は、子供は望めないと思うから……父さんに孫を抱かせてくれて、ありがとう」美津に向けられたその言葉の意味を、この時の俺は理解できなかった。やがて祐希は、狗飼来人と出会い——恋に落ちた。その時、俺はようやく、あの言葉の意味を知った。祐希が狗飼家に住み着くようになると、静の落ち込み方は尋常ではなかった。幸せそうに並んで歩く祐希の背を、静はただ──黙って見つめていた。その後ろ姿には、言葉にできないほどの悲壮感が滲んでいた。俺は、このまま静が祐希を諦め、別の誰かと結婚してくれることを願った。実際、神社の跡取りでもない静には、娘しかいない神社からいくつもの縁談が来ていた。だが、静はその全てに目も通さず断っていた。何度「諦めろ」と言っても、首を縦に振ることはなかった。祐希が狗飼来人と付き合って八年目──狗飼来人と猫柳春菜の結婚式の招待

  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第九十七話:閑話休題~兄、竜ヶ峰綾人の苦悩②~

    中学に入学してから、長期休暇で帰省する度に、祐希から笑顔が消えていった。 あれは中学二年の夏。真夏だというのに長袖のタートルネックを着ていた祐希に違和感を覚え、風呂場に乗り込んで——俺は絶句した。見なかったことにするには、あまりにも衝撃的だった。俺はすぐに親父に相談し、祐希を転校させた。すると今度は、神蛇家が祐希を養子に欲しいと言ってきた。その名を聞いた瞬間、祐希の目が揺れた。──あいつの傷は、神蛇にある。そう確信した。だが母さんは、そんな祐希を神蛇家に預けると言い出し、親父と衝突を繰り返した。祐希は、そんな両親の姿に静かに心を痛めていた。(兄の俺が言うのもなんだけど、優しい良い子なんだよ……祐希は) 母さんが祐希を使って神蛇家に復讐しようとしていると親父から聞き、俺は祐希を守ると決めた。親父が祐希を全寮制の学校に入れた理由も分かる。だが、その選択が祐希をさらに傷つけたのも事実だった。そんなある日、小林が声を掛けてきた。「祐希の護衛をさせてくれないか?」思わず首を傾げる。「護衛って……」苦笑する俺を、小林は真っ直ぐに見つめ返した。その日を境に、小林が怪我をしている姿を見かけるようになった。そして──怪我が増えるほどに、あいつは“神蛇に対抗する力”を求めるように、神道へと沈んでいった。

  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第九十六話:閑話休題~兄、竜ヶ峰綾人の苦悩①~

    俺には、五つ年下の弟がいる。弟は母親に似て容姿が美しく、天使のように愛らしい純粋無垢な子だった。そんな祐希に邪な感情を持つ輩が近付かないよう、俺はありとあらゆる手段で排除してきた。そんな俺をブラコンだと馬鹿にする輩が多い中、「綾人は、本当に弟が可愛いんだね」唯一、親友の静《せい》だけは、俺の行動を否定しなかった。静は名前の通り物静かで穏やかな性格だ。男五人兄弟の下から二番目だからか、出会った頃から妙に落ち着いていた。誰に対しても優しく、その穏やかな性格から女子からの人気も凄まじかった。そんな静と仲良くなったのは、席替えで隣になったのがきっかけだった。神社の跡取り息子である俺に対しても偏見のない、フラットな態度に、俺は自然と心を許していった。いつしか無二の親友となった静を、我が家に招いたのが運の尽きだった。俺は、静なら弟もいるし大丈夫だろうと祐希を紹介した。祐希は俺の親友を紹介されるのが嬉しかったらしく、いつも以上に可愛らしい笑顔で「はじめまして。竜ヶ峰祐希です」と、光り輝くような笑顔で挨拶した。その瞬間、静が固まった。ピクリとも動かず、瞬きすら忘れているようだった。そんな静を心配した天使の祐希が、首を傾げて「あの……?」と、無反応の静を上目遣いで見上げた。(あぁ……今日も、うちの祐希《天使》が可愛い……!)なんて感動していると、突然、静が祐希の両手を掴み「好きです! 結婚して下さい!」と言い出した。祐希はその勢いに驚いたらしく「怖い~~~!」とギャン泣き。俺はすぐさま祐希を隠すように抱き締め「静、お前は祐希に近付くな!!」と叫んだ。今思えば、これが運命の出会いというやつだったのだろう。静は中学でも高校でも、それはそれはモテた。しかし、どんなに女子が告白しようが

  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第九十五話:閑話休題~手紙~

    拝啓竜ヶ峰祐希様お元気ですか?お二人が霊山に入って、1ヶ月が経過しました。まだ一ヶ月なのに、祐希がいない生活が寂しく感じるなんて、不思議な感じです。こっちは相変わらずの毎日だけど、そっちはどうですか?来人は祓いの仕事が夜に多いからか、朝寝坊でライトの散歩の時間が遅くなって困ってます。(祐希と付き合ってた時からそうだった?)祐希はどう?きっと、小林さんと規則正しい生活を送っているんだろうな。会って、たくさん話をしたいよ。また手紙書くね。猫柳春馬拝啓猫柳春馬様元気そうだね。こっちは日が昇ったら起こされて、日が暮れたら就寝だよ(笑)来人も僕も、夜行性だったからね。朝は苦手だったよ。春馬は健康的な生活してたっぽいよね。小林? あいつ、人間じゃないよ。朝、日が昇る前に起きて境内の掃除してるんだよ。信じられない。あいつ、絶対前世は坊さんだったよ。次に会った時、ライトは触らせてくれるかな?僕、動物好きなんだけど、飼ったことないんだよね。春馬がいたら、ライトも触らせてくれる気がするんだ。ライトに触らせてくれるなら、会ってあげてもいいよ。手紙、また気が向いたら返事書くね。竜ヶ峰祐希***「春馬、どうした?楽しそうに手紙読んでるけど」手紙を読んでいると、来人が声を掛けて来た。「祐希からの手紙だよ」「あぁ……春馬と祐希は文通してるんだっけ?」来人はソファーに座る僕の横に座ると、肩に頭を預けて来た。「文通……って言ったら、祐希は怒りそうだけどね」苦笑いを浮かべた僕に「でも、手紙を出すと必ず返事が来るんだろう?あいつは基本的に面倒くさがりだから、春馬のことが気に入ったんだろう」と答えた。でも、少し拗ねているのが分かる。「なに?嫉妬してるの?」「そりゃあね。祐希から手紙が来る度、嬉しそうにされたら、嫉妬しちゃうよね」来人の言葉に小さく笑い「祐希がさ、今度会ったらライトを撫でたいんだって」と言うと「はぁ?」と、来人が頭を上げた。「あ!来人じゃなくて、ライトだからね!」僕の言葉に、来人が目を据わらせた。「春馬、お前……わざとだろう?」僕を抱き締める来人に、僕は笑い転げた。幸せな時間。幸せな瞬間。穏やかな日々……。竜ヶ峰も、こんな時間を過ごしていると良いな。***「春馬さんからの手紙です

  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第六十一話:二人と1匹

    「なぁ……来人」「ん?」「母さんが言ってた神蛇家って、何なの?」母さんたちを見送り、ライトのブラッシングをしながら尋ねると、本を読んでいた来人が静かに本を閉じた。「春馬は、十三家紋のことをどこまで知ってる?」逆にそう聞かれてしまう。ぶっちゃけ、僕は何も聞かされていない。それは……じいちゃんたちが、僕を外部に出すつもりがなかったからだ。あの日、来人が現れなければ、僕は猫柳家の保護下で、今も何も知らずに生きていたのだろう。黙り込んでいる僕に何を思ったのか、来人が自分の隣のソファーを軽く叩いた。その瞬間、ライトが耳をピクリと動かすと「わん!」と鳴いて、来人が叩いていた場所に

    last updateÚltima actualización : 2026-04-05
  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第六十二話:不安な陰

    「異議申し立てが来た!」それは、狗飼家本家に僕と来人が呼び出された日のことだった。どうやら神蛇直己が、狗飼家と猫柳家に異議申し立ての書類を送りつけてきたらしい。内容は、元猫柳家当主の咲月と、その息子である春馬を狗飼籍に入れることは、十三家紋の均衡を損なうというものだった。しかも――竜ヶ峰祐希の力は、来人のせいで失われたと記されていた。だから、僕の力も来人のせいで失われるのではないか。そんな主張だった。来人は、その抗議文を黙って聞いていた。「まったく、何を勝手なことを言っているのかしら!だから私、爬虫類の苗字の人って嫌いなのよ!」怒り心頭の母さんに、僕は心の中でツッコミを

    last updateÚltima actualización : 2026-04-05
  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第三十六話:失った記憶

    僕は深い深い海の底にたゆたっていた。 「春馬……春馬……」優しい声が聞こえる。誰?……僕を呼んでいるのは、誰?ふわりと、優しい手が僕の頭を撫でた。「頑張ったね」大きい手が、父さんの手だと……なんとなく分かった。 「春馬……きみたちには、この先たくさんの試練が待っている。だからね、きみの番には最終課題を与えようと思うんだ」そう言われて、僕は父さんを見あげた。彰兄さんが、父さんに面差しが似ているって聞いていたけど、実際は父さんの方がガッシリしていて男らしい。 「……あまり虐めないであ

    last updateÚltima actualización : 2026-03-26
  • 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です   第十八話:春菜死す

    「それで、だけど……」と、母さんと僕の会話を黙って聞いていたばあちゃんが口を開いた。「突然、春菜が消えて春馬が現れたら、偽装結婚がバレちゃうでしょう?だったら、春菜は死んだことにしましょう」ばあちゃんは、黒い笑顔で言い出した。さすが猫柳家の血を引く女だ。『うちの春馬を傷付けて、あんなはした金で許されると思うなよ』そんな顔をしている。「亮二には悪いが、きちんと息子を育てられなかった落とし前、着けてもらわないとねぇ……」「あら、お母様。悪いお顔」そう言っ

    last updateÚltima actualización : 2026-03-20
Más capítulos
Explora y lee buenas novelas gratis
Acceso gratuito a una gran cantidad de buenas novelas en la app GoodNovel. Descarga los libros que te gusten y léelos donde y cuando quieras.
Lee libros gratis en la app
ESCANEA EL CÓDIGO PARA LEER EN LA APP
DMCA.com Protection Status