私たちは息を飲み、そして駆け寄った。そこに倒れていたのは紛れもなく愛沢くるみだった。「なんて事!」私はそう叫んで愛沢くるみを助け起こした。愛沢くるみは体から血を流して倒れていて、意識を失っている。このままでは死ぬかもしれないと一瞬、思う。けれど予想に反して、愛沢くるみが目を開けた。「……ここ、どこ……?」視線を彷徨わせ、天井を見ながら愛沢くるみはそう言った。「愛沢くるみ!」私が名を呼ぶと、愛沢くるみは私を見て、そして怪訝そうな顔で私を見る。「……あなた、誰?」衝撃だった。(今、あなた誰……って言った?)あまりの衝撃に私は言葉を失う。急激に体の芯が冷えて行く感覚がした。けれどそれに反するように、愛沢くるみの視線はハッキリして行き、助け起こしていた私を拒絶するように押し返し、言う。「あなたたち、何なんですか!」そう言いながら愛沢くるみは自身の手を見て、驚いて息を飲む。それもその筈だ。だって愛沢くるみの手は血に染まっていたから。「何? ……何なの? ……これ、何?」完全にパニック状態だった。そしてそれは私も一緒だった。「佐伯顧問、代わります」そう言ったのは賀神さんだった。「えぇ……お願い……」そう言って私は賀神さんとバトンタッチし、愛沢くるみから離れた。「何で私の手に血が……?」愛沢くるみはそう言いながら、タクティカルスーツを着ている私たちに怯えている。「あなたたちは何なんですか? 私はどうしてここに? ここはどこなの?」愛沢くるみのそんな声が耳の奥で聞こえる感覚。私は既にその時には悟っていた。愛沢くるみは記憶を失っている。演技の可能性も一瞬、考えた。けれど、あの怯えようは演技じゃない。「燈」呼ばれて私は遼大を見上げる。私を呼ぶ遼大の声は優しかった。「おいで」遼大はそう言って私を抱える。◇◇◇愛沢くるみはそのままベイサイド・パイロットプラントから運び出された。治療の為に聖カトリーナに運ぶ事にして、私たちはベイサイド・パイロットプラントを離れた。移動の車の中で湊に電話をかけ、事情を説明している遼大の声を耳の奥で感じながらも、私は現実を受け止めきれていなかった。愛沢くるみが記憶を失くしている……。今までの事、全てを覚えていない……?愛沢くるみがどこまでの事を覚えていて、そして何を覚えていないのか
最終更新日 : 2026-09-16 続きを読む