この上、今夜寝るところの確保までしなくちゃいけないのか……と芽生が吐息を落としたと同時、京介から「うちに来い」と誘われたのだ。「……いいの?」「いいも何も。そうしてもらわにゃ俺が不安なんだよ」「けど、その……め、迷惑じゃ、ない……?」 今まで京介が芽生の家や職場まで迎えに来てくれて、食事などへ連れて行ってもらうことはあっても、京介の家へ行ったことなんて一度もなかった。その家に招待されたのだ。不安に思わないわけがない。「は? なんで迷惑?」「だって……」 芽生はモゴモゴと口ごもってから、言いにくそうにぼそぼそと理由を述べた。「きょ、京ちゃんも、その……お、大人の男性だし。ほら……か、彼女さんと同棲しているとか、実はもう結婚してて、奥様やお子さんが家で待っているとか、そういうのだったりしないかな? って」 芽生は子供の頃からずっと京介のことが大好きで、彼以外の男性に目を向けたことはなかった。現に、養護施設から独り立ちした時、無謀にも京介に『私が三〇歳になっても独身だったらお嫁さんにしてね』と【婚姻届】を渡したことさえある。京介はそれを苦笑しながらも受け取ってくれたけど、きっと子供が駄々をこねているくらいにしか思わなかったに違いない。 あの時は京介がすでに妻帯者かもしれないとか、恋人がいるかも知れないとか、そんな可能性にさえ思い至る事も出来ないくらい考え方が稚拙だったけれど、京介ほどの男に女性の影がないこと自体あり得ないではないか。 そもそも芽生にとって京介は憧れの男性で、恋愛対象だけれど、京介はきっと違う。芽生のことは良くて妹、悪くて娘くらいにしか思っていないはずだ。 何より京介は惚れた弱みという欲目を差し引いてもかなりかっこいいし、きっと女性が放っておかないだろう。 そんなのは分かっていても考えたくなくて、頭の中から追い出すようにしてきた芽生である。でも、今回だけはそこをスルーするわけにはいかなくて……芽生は、あえて目を逸らしていたことを思い切って京介にぶつけてみたのだ。 だが、芽生が不安に駆られて瞳を揺らせた途端、京介がブハッと吹き出して「バーカ。そんな
Last Updated : 2026-02-05 Read more