執務室へ来るまでの囚人たちの視線に堪えた。涼はドアが閉まると大きく息をはいた。「大丈夫か ? 」「……はい。まだ、自分の……なんて言うか、無害さを分かって貰えないんだと思います。それに一日に癒せる人数もままならなくて」「成程。しかし貴重なものほど供給は薄いものだ。期待を持たせる程度で、人々は感謝し、抑制が効くと思うが ? 」「そんなものですかね ? あと、俺の眼。癒しの力を使うごとに濃くなってるんです」「力を使うごとに ? ……見せてご覧」 白い手袋がスっと涼の前髪を梳く。「……確かに、以前より濃く、広がっているな」「……故障とかは、困るんですけど……。見えなくなったりとか、しませんよね ? 」「それは無いはずだ。故障なら『核』が修理するし、何も問題は無い。安心しなさい」「なら、いいですけど」 翡翠は涼と共にソファへ並んで座る。 そしてその白い手袋を外し、人形の手を露わにした。「…… ! 」「この手か ? 布越しでは意味がないんだろう ? それに、もう君に隠し事はしない。そういう立場である方が自然だ」 この時、涼は初めて翡翠の人形の手を見たのだった。前にここに来た時は昏睡し、記憶が曖昧だったせいでもある。「ジュースでも飲むか ? 」 その手で氷の入ったグラスを差し出した。「これ ! コーラだ ! 」 いくら陳の料理がびみでも、既製品のジュースや菓子、酒は振る舞うことができない。調理用の酒類には厳しい看守のチェックもある。「なんだか、久しぶりに飲んだ気がする ! 」「喜んで貰えてなにより。 『核』には『城』へ連れてくる者をリストアップされていてね。時折、数十分だが生者の世界へ行くことを許可されている。 口に合えばと思って買っておいた」「んー ! 京も来ればよかったのに」「はは、京には少し意地悪をしてしまったな。捻くれて無いといいが」
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