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強制狂葬 狂眼ドール のすべてのチャプター: チャプター 41 - チャプター 50

56 チャプター

5.グルーミングルーム

 執務室へ来るまでの囚人たちの視線に堪えた。涼はドアが閉まると大きく息をはいた。「大丈夫か ? 」「……はい。まだ、自分の……なんて言うか、無害さを分かって貰えないんだと思います。それに一日に癒せる人数もままならなくて」「成程。しかし貴重なものほど供給は薄いものだ。期待を持たせる程度で、人々は感謝し、抑制が効くと思うが ? 」「そんなものですかね ?   あと、俺の眼。癒しの力を使うごとに濃くなってるんです」「力を使うごとに ? ……見せてご覧」 白い手袋がスっと涼の前髪を梳く。「……確かに、以前より濃く、広がっているな」「……故障とかは、困るんですけど……。見えなくなったりとか、しませんよね ? 」「それは無いはずだ。故障なら『核』が修理するし、何も問題は無い。安心しなさい」「なら、いいですけど」 翡翠は涼と共にソファへ並んで座る。  そしてその白い手袋を外し、人形の手を露わにした。「…… ! 」「この手か ? 布越しでは意味がないんだろう ?   それに、もう君に隠し事はしない。そういう立場である方が自然だ」 この時、涼は初めて翡翠の人形の手を見たのだった。前にここに来た時は昏睡し、記憶が曖昧だったせいでもある。「ジュースでも飲むか ? 」 その手で氷の入ったグラスを差し出した。「これ ! コーラだ ! 」 いくら陳の料理がびみでも、既製品のジュースや菓子、酒は振る舞うことができない。調理用の酒類には厳しい看守のチェックもある。「なんだか、久しぶりに飲んだ気がする ! 」「喜んで貰えてなにより。 『核』には『城』へ連れてくる者をリストアップされていてね。時折、数十分だが生者の世界へ行くことを許可されている。  口に合えばと思って買っておいた」「んー ! 京も来ればよかったのに」「はは、京には少し意地悪をしてしまったな。捻くれて無いといいが」
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6.仄暗い心の中で

「なら、自殺するのも流石に仕方ないってならない ? なんで俺、こんなところにいるの…… ? 」涼の問に翡翠は真っ直ぐ視線を逸らさず頷き答える。「俺だったら、と置き換えれば俺も同じ事をするかもしれない、と言うだけ。君は十分苦しんでる。今この『城』で罪を清算している証拠さ」「……そう……なの ? 」「ああ。それぞれ皆、抱えてる苦しみさ。他に不備は感じないなら良かった。問題があったらいつでもここに来るといい。看守人形には伝えてある」「……でも、俺だけじゃ……なんか気まずいし気軽には……」「皆は考えすぎなんだ。なにか特別な賄賂を渡している訳でもない、特殊な外出をする訳でもない。ふふ。俺の話し相手になって貰っているだけだと言うのにな」翡翠はしょうもなさそうに笑いながら涼の銀髪をツルツルと撫で付ける。「でも、貴方は……ドールアイを探してるでしょう ? 」「……。そう。探していたよ。けれど、お陰で見つかったじゃないか」「貴方の勘が良かったのと、京の気まぐれですよ。でも、俺が京から盗む事は……出来ないと思います……期待しないで下さい」「京が怖いのかい ? 」「怖い…… ? いいえ。怖いとは、違います」「それでは、なぜ ? ここから出たいとは思わないのかい ? 」涼の目眩がピークに達する。崩れかかりそうなところを、翡翠がそっと横になるよう支える。「手に届かない場所に隠されてるとか ? それとも報復が怖いのかい ? 」涼はぼんやりと執務室の天井を見つめる。ここだけは木材で囲われた見慣れた造りだ。あの大きな時計は無い。手の甲を右目に当て、左の紫の瞳で視力に変化が無いこと
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7.如雨露への癒し

 涼が囚人塔への扉を潜ると、困ったように待ち惚けするフェンランが立っていた。「あれ ? フェンラン……どうしたの ? 」「涼……翡翠の旦那に呼ばれてたのかい ? 」「うん。『癒し』の力を使うのに時々」「時々 ? 頻繁に執務室へ行ってるって事かい ? 」 フェンランが知る限りでは、先日サラのファイトの際に昏倒した時のみだった。「最初からそういう約束なんだ」「……そう……。そういえば朝の点呼の時、上の階が騒がしかったね……旦那直々に」「俺から普段訪ねる理由はないしね。 フェンランは ? これから会いに行くの ?」「用事はあるんだが……」 実際には、囚人が気軽に訪れることは許されない場所だ。余程の事情があれば通されることもあるかもしれないが、フェンランでさえそれを目にしたことはないのだ。「実はサラから受け取った『水の減らない如雨露』なんだが」「サラが『核』に貰った物なんだよね ? 」「ああ。今回サラの事情でわたしがこれを手にしたが、『核』に与えられるような特殊なアイテムは争いの種になる。 処分はしなくとも、安全の為に預けておこうと思ってな」「フェンランが……庭で使おうとは、ならないんだね」「勿論、欲しい。便利だからな。だが、これはわたしの物ではない。サラが心を入れ替え返してくれと言われた時、他の囚人に奪われていたのでは心苦しい」 涼は関心するようにフェンランを見上げるその眼の色にフェンランの視線が止まった。「眼の事は、翡翠の旦那に聞いたかい ? 」「うん。前例がないって。でも『核』が俺に与えた能力だし、使っちゃいけない訳が無いんだから大丈夫だよって。 確かにそうだよね ? 違反行為なら最初から許されないし、ペナルティなんて説明もされなかったもん」
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8.ハゼとラベンダーの予感

 「最近入った、涼って子供を知ってるかい ? 」「ああ」「少し気になることがあってね」「俺に出来ることは無い」 ブレードは視線を闇の先に向け、はっきりと拒絶した。「助けろって話じゃないのさ。どうか、あの子の話を聞いておくれよ」「何故俺にそんなことを言い出す」「涼の眼を見たかい ? 」「……見た」「あんたなら、何か……」「出来ん。 だが悪意ではない。どうにもならんのだ」「……それはどういう意味なんだい ? 」「……」 ブレードは答えない。 迷っている素振りもなく、全く話す気がないように見えた。「いや、わたしは構わない。ただ、涼が同じ事を聞いてきたら、面倒見ておくれよ」「意外な事だ。ここでは弱いものは淘汰され、搾取され、蔑まされる。今の賢いお前なら、当然分かってるはずだと思っていたが ? 」「……そうだね。なんでだろうね……」「母性本能か ? 」「馬鹿な。それは嫌味か ?  強いていえば、最近はここに来たばかりの頃ばかりを思い出すようになった。年のせいかね……人形の姿はそのままでも、中身まではそうはいかんものらしい」「……俺に語れることはない。出来ることならば善処はするが」「ああ。それで十分さ」 ブレードがフェンランから離れた直後、今度はハイヒールの甲高い足音が中から向かってきた。「フェンラン」「サラじゃないか」「あ、その……」「なんだい、はっきり言いな」「ハゼの実が欲しくて庭へ来たの」「ハゼ ? 」 ぶど
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9.視える原罪

 涼は食堂へ行くと、陳にサンドウィッチの礼をと思ったが、他の囚人が多く何も言い出せないままトレイを持って並んだ。  前の前の囚人はトーストとポーチドエッグを、前の男は豆のカレーとナンを、涼のトレイには納豆と生卵が白米と並ぶ。陳は涼と目が合うと「言いたいことは分かってる」というようにサッと手を上げ、すぐに作業に集中する。  涼が会釈をしてテーブルへ来ると、隣にいた男たちに話しかけられた。「お。今話題の」「涼ってんだっけ ? 『癒し』っていつやんの ? 」「あ、おはようございます」 涼は素直に問いに答えるだけだ。男達には敵意はなく、ただただ興味津々といった様子だった。「へぇー ! 元からあった能力 ! 」「なるほどな。別に『核』が授けたって訳じゃないんか。なら、自分の才能やんな」「今日は ? 今日は朝からやんの ? エントランスに行けばいいの ? 」 涼にとっては好都合だ。  人目のあるところで、正しく使って見せること。  これが最低条件。隠れてやるのは後でいい。怪しいと噂が立つ前に先手を打たなければ、サラのファイトの時のように混乱や誤解を与えかねない。  正しく自分を理解してもらい、この『城』の生活に必要とされ、貢献したい。「ここにいる二人なら、今出来ると思います。急にいっぱいやると体調おかしくなっちゃって。何人もは出来ないんですけど」「え ? まじで ? タダでええの ? 」「元々、無料ですよ」「いや、何か代償は取った方がええんちゃうの ? 」「でも、俺は何かが減る訳じゃないですし……精々、疲れるな〜ってだけです」「ならええけども。じゃあ、手か ? 手を出せばいいんか ? 」 男の一人がテーブルの上で手を差し出してきた。壊れはしなくとも、人として暮らせば必ず摩耗していく人形の手。人のように古い皮膚が落ち、新しい皮が張るわけでもない。汗をかく訳でもない。細かい傷が無数については黄ばんでいる。飲食も排泄もする不可解な身体構造。呼吸が止まれば当然苦しい。  な
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10.藤紫のオッドアイ

 涼に手を握られていた最初の男は立ち上がると、大きく手を突き出してギャラリーへ振り向き宣言する。「俺は ! ギャンブルを辞める ! 」『城』一番の賭け事好きのこの男の妄言に、全員が渋い顔で笑う。「おい、気でも狂ったのか ? お前さんが辞めるだなんて」「いいや ! 辞める !   手始めに持ってるこの金、全部今回の報酬だ ! 涼 ! 持ってけ ! 」「え"っ  !!? 」 突然ポケットから思った以上の札束をテーブルへ叩きつけられ涼も可笑しな声が出る。「いや、お金は……」 すると今度は二人目の男が首を縦に振りその金を涼に突き出す。「報酬だからな。金は邪魔にならねぇ。稼げる時は稼ぐんだ。欲しい時に限ってねぇものだからな。  これでいいのさ」 これでは涼に『癒し』を求める者全てが、何らかの報酬を持参するようになってしまう。  涼は大きく手を振り要らないと話すが、男二人は聞き入れない。 そのうち入口から女たちの声が聞こえ始める。  ラベンダーとハゼを持ったサラと女囚達だった。煮詰めるために厨房で湯を貰おうとタライを持って現れたところだった。  サラはすぐに涼の行為に気付くと走りよってきた。「涼くん。こんなとこでやったら食堂のご迷惑になるわ」「あ……そうですね。こんなに人が集まると思ってなくて」「集まるわよ」 サラは涼の前にいる二人の男に向かって笑顔を向けた。「どう ? スッキリするでしょ ? 」「おお」「これはやべぇぞ。もうなんでもねぇ。なにかいつも、モヤモヤっとあるやんか ? 今はなんもあらへん ! 」「俺は賭けの一切を辞める宣言をしたところだ ! 」「それはいいですね。突然は無理でも、気持ちは大事だし」「いいや、俺は本当に辞めたる ! 」 男が意気込んでいるのを見てサラは上機嫌。ギャラリーも興味は既に涼へ向き始める。「サラ、このお金……
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11.正しい凶器の使い方

 京は朝食を終えると涼を待たずにシャワーへ向かっていた。涼は翡翠の部屋へ行っている最中は落ち着かず、更に神経が過敏になりすぎたせいで最近は昼夜逆転しそうだった。  だが、ようやく房へ戻って来ても   未だ涼の姿は無かった。  京は濡れたままの髪を小さな支給品のタオルでパタパタと拭きながら房の中を見渡す。その視線がすぐに涼の枕に止まった。囚人用の枕はペッタンコで頭が疲れるほど薄くて固いというのに、不自然にパンパンに膨れ上がっていた。 涼が房へ戻ってきた痕跡。今朝まではいつものペッタンコだったはずだ。その上、この膨らみ方はどう似ても金だ。「はぁ……何なんだよ……」 格子越しに隣人の中年男性が声をかけてきた。「お、京。お宅んとこの涼くん。いい子だなぁ。さっき食堂で『癒し』? の、力見たよ」「はぁ !? 」「ありゃすげぇな。  エントランスで物が入り用なんだろ ? うちで備品買ってくれるって言ってたんだけど……一緒じゃねぇのかい ? 」「いや、あいつは金なんて……その……」 ある。  今そこに。「はぁ〜〜〜 ……。あいつ何したの ? 」「食堂で成り行きで『癒し』をしたんだ。癒した相手がすげぇ変わりっぷりでよ。持ってた金を全部涼くんに渡して「俺はギャンブル辞める〜」ってな。謝礼金として貰ったはずだぜ。  でも、買い物は京と同伴しなってサラちゃんもキツく言ってたから……。大丈夫かい ? 涼くんは ? 」 京はゴツゴツした枕を指差して見せる。「この通り。あんまりダメだわ」「ははは ! 雑〜 !!   まぁ、愛想いいと言うか、人懐こそうな子だよなぁ」「探してくる」「それがいい。その貴重品、全部持ってけよ。俺ぁ疑われんの嫌だからな。袋やるか ? 」「……商売上手め。涼と合流してから一番にここに買い物に来てやる。ただし……」「わかってらぁ。お隣と揉め事なんて俺もごめんだ」 京はうんざりするほど乾きにくい人形の
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12.『銃』を持つ少年

『女子供は荷台に乗せろ ! 』 『サミール ! 男は皆殺しだ ! 』(戦争……の、記憶の断片……)『子供だけは。お願いします ! 』 『ガキはすぐ敵兵になる。今なら苦しまずに死ねるのさ』(酷い……一方的な虐殺……。今の姿からは想像もつかないけど……) 後悔の色は二色が絡み合うようにして根を張るように、ブレードの体から染み出て滲んでいる。  二色のうち一色は、生前の軍人としての罪悪感なのではないだろうか ?  しかし、もう一色はどうも今の会話から視ようとしても、軍人である話とは違った筋のもののようだと感じた。「でも、戦争なら軍人が敵地に行くのは仕方がないですよね ? 」「確かに。だが、銃は一度使うと感覚が鈍る。一回だけ、この任務だけ、今の戦争だけ……そうして各地を巡る人生になる。  そのお前の瞳も。それはこの『城』で言う『銃』だ」「 ? いえ……そんな物騒って言うか、オオゴトではないんですけど。  あ、フェンランが……貴方に聞けば何か分かるかもって。最近、左眼が変色しちゃって。視力に問題は無いんですけど。  てっきり同じ力を持ってたりするのかと……」「俺には何の能力も才もない。  ……『フェンラン』か……。あれこそ才だ。この『城』で生きる為に賢く立ち回った者の第一人者と言っても過言ではない」「仲良いんですか ? 」 ブレードは奇妙な表情をすると、首を傾げる。「いや ? 話さんな。『城』へ来た頃……一度あいつを助けたことが……」 ブレードの話がピタリと止まる。相変わらず塀を見たまま。そこには何も無いコンクリートだと言うのに、ブレードは前を向いたまま再び立ち続ける。「助けた ? フェンランを ? 」 尚も会話を続ける涼に一言だけ呟いた。「迎えが来たようだ」「え ? 」 何の脈絡もなく言われ、涼はアタフタと周囲を見る。『城』の出入り口から、京がこちらを眺めていた。「なんだ……京か。びっくりした」「戻った方がいい。  ……涼。『銃』を持ってる軍人は強いが……『銃』がなくなったら民間人と何ら変わらない。『銃』だっていつかは壊れる。物である以上はいつか……」「はい……」 この時、涼は『銃』が自分の『癒し』の事を言っているなら飛んだお門違いだと思っていた。涼の『癒し』は能力であり、『銃』のような物体ではないのだからと。
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13.『癒し』の洗礼

「よっ ! 待ってたぜぇ〜」 あと一歩で自分達の房という所で、隣人の道具屋が涼の肩を叩いた。「あ、そうだった ! 」 なんの警戒心も無く涼は道具屋へついて行く。ゴツゴツの枕を抱えた京はもう言葉が出なかった。「場所はエントランスなんだって ? 広いし、綺麗だもんなぁ。名案だ〜」 道具屋の親父は涼を招くと椅子に座らせる。「おい、着席料とか取らねぇだろうな ? 」「京〜。他の連中にも言ったが、俺ァお前と揉めんのは勘弁だ。勿論この子にもそんなことしねぇよ、安心しな」「どうだか。涼、他の連中の『店』でそれやったらマジでボラれる」「それ、って……ただ座るのが ? 」 困惑する涼に親父が難しい顔で笑う。「まぁ、それも売り物だからなぁ。でも俺はそう金にがめつくねぇほうだから。賭けもしねぇし」「…… ? じゃあ、何で払えばいいの ? 」「いや、そのギャンブル用の金でいいよ」「 ??? 」「涼、金が要らねぇ奴はギャンブル好きな奴から金を使って物を買う」 京の補足に益々悩みこんでしまう。「じゃあ、結局お金はあるんじゃん ? ギャンブル用のお金っておかしくない ? 」 ギャンブルにしか使えない紙幣。手作りで金を造る囚人は気まぐれに刷り放題。何故そこにギャンブル以外の価値が付くのか理解が出来ないのも無理はない。「欲しい物があったら、ここでは金は意味がねぇ。ギャンブルで金が欲しい奴は造幣してる囚人に貰う。常に金は飽和してる」「そうだよね ? だから一階のお店は物々交換って言ってたよね ? 」「あそこは特に、扱うのがパーツだからな。現物は強い。 こう考えろ。これは『金』じゃなくて『犬』」「犬…… ? 」「お前は今、ペットの犬をこいつに預けて、物と交換しようとしてる。自分の犬をこいつに預けても危険はないか ?  他
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14.変色する瞳

「全部入ったか ? 」 食堂に行く前、涼は慣れないウェストポーチに苦戦していた。「ナイフもポーチも……腰だけごちゃごちゃしててやだ……」 左腰には護身用のナイフ。右腰には大金を詰め込んだポーチ。「盗む奴もいるから……」「そうだ ! 京のベッドに隠せば良くない ? 絶対誰もこの部屋は入らないし、京のベッドなんて誰も……」「やめろ ! 漁るな ! 」「いいじゃん、別に今更何も驚かな……あれ ? 」 涼の視線が廊下に移る。  一人の大男がひょっこりと覗き、京を手招きしていた。「来んな ! どっか行け ! 」「嫌だ〜。今日も怖い♡」 そう言い残すとひょこひょこ逃げて行く。「い……命知らずもいるんだね」「……マジで勘弁。まぁ、あいつは別に強制的に何かしてきたりはしねぇから……」 京が怠そうに頭を搔くが、涼は大男の消えた方を見て「え ? 」と声を上げた。「そうなの ? あの人って性犯罪絡みの……人だよね ? 」「……」「……ま、看守さんもいるし、あの世だし……流石に今はしないのかなぁ……」 涼は最終的に独り言にしていく言葉の切れ端に、京の感情が激しく揺れた。「……お前、原罪が視えるのか ? 」「あ……そうだった。あのね……」 遅い。  京の知りたいのは能力の発端の話ではない。「俺のも視えてんのか ? 」 獣のようにギラついた瞳と、炎のように噴き出す赤色。  突然、涼の意思に関係なくそれは立ち上り、二人の間でゆらゆら揺れる。「今は……視える。でも断片的に今朝から始まったんだ」「なんで今まで黙ってた ? 」「本当 ! 本当に今朝からなんだって ! 」「別にいいけど……何でここにぶち込まれたかなんて。俺なんか、秘密にしてる訳じゃねぇからな」「京。本当に京に内緒にしようとなんかしてないよ。京に対して俺がそ
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