ホーム / ミステリー / 強制狂葬 狂眼ドール / チャプター 21 - チャプター 30

強制狂葬 狂眼ドール のすべてのチャプター: チャプター 21 - チャプター 30

56 チャプター

【第二章】1.高部紗良の罪状

 2005年。  高部 紗良には悩みがあった。 いつもの黒スーツに着替え、ロングヘアを纏めヘアピンでしっかり固定する。  調理の仕込みをしている黒服の同僚に紛れ、ホールに行くと開店前のチェックに入る。 高部  紗良は女性黒服としてキャバレーに勤務していた。幼い子供を交通事故で亡くし、その後精神を病んだ彼女を夫は簡単に捨てて他の女性の元へ去った。  その傷がやっと上向き出した頃、紗良はこの仕事に流れてきた。「あら、おはよう」 キャスト達が店に流れてくる。「あ、彩果さん。おはようございます」「床置いた縫いぐるみかと思った。踏む寸前だったわ」 そう言って彩果は嗤う。その周囲のドレス達も大きく肩を震わせ声をあげる。「すみません。マットの泥が残ってたので……」 花のような女性たちは客が入り始めるとそれぞれ卓に指名される。「アヤちゃんは今日も面白いなぁ〜 ! 」「え〜 ? そうですかぁ ? 」「なぁ、あれみろよ」 彩果の接客していた男性二人組のうち、一人が紗良を指差す。「あの子は指名出来んの ? 」「いえ。彼女はホールの雑用がメインなので。  わたしとお話じゃつまんないですかぁ ? 良かったらぁ、もう一人付けましょうか ? 」「いや、俺は……いいよ」 その中年男性は照れ臭そうに頭を搔くと顔を真っ赤にしてグラスに口をつける。彩果はとぼけた顔をすると、甘えるように男性に絡みつく。「ああいう方が好みなんですかぁ ? 」 そこへ同伴した男性客が彩果の髪を撫でながら、モジモジする男を笑った。「おめぇは昔からああ言うのが好きだよなぁ。地味っつーか、純朴っつーか」「えー ??? そうなんですか ? 」「いやぁ……。いつも一生懸命働いてるしね。感じもいいし……」「アヤちゃんこいつただのデブ好きなんだよ」「あ〜 ! そうなんですね〜」「太ってると、
続きを読む

2.棲み分け

 食事は朝晩二回。 体感時間で皆、なんとなく食堂へ向かうだけだ。 涼と京は二人向かい合って座る。 食べるものは選べない。 食堂にいるシェフ姿の人形が勝手に囚人のトレイに皿を置く。乱雑で、無言。目も合わない。 実に作業的な流れだ。 しかし、その皿に乗った食事に涼は言葉を失っていた。「食べねぇの ? 」 京が固まったままの涼を不思議そうに見た。「いや……監獄的なイメージがあったから……もっと自由度の少ない飯が出てくるんだとばかり……」 皿の上にはミディアムレアに焼かれた牛肉がリーフにのってソースが添えられていた。空いたトレイのスペースにライスとフルーツジュースが勝手に乗せられたのだった。「あー。そうだったそうだった」 京はケラケラと厨房をフォークで指した。「あのコック帽の男が陳さん。昔、すげぇ賞金荒らしの料理人だったんだってさ」「そんなすごい人が、どうして厨房で働かされてるんだ ? 」「はは。分かってねぇな。 一番、自然に人を殺せる場所ってどこだと思う ? 服を脱がずに、揉み合いにならずに、いつも通り過ごして、かつ……殺レる場所。 それが病院と厨房さ。いつの時代もな。特に腕力の無い女の犯罪史には、毒物は欠かせないスパイスなんだよな」「……」 涼は苦笑いを浮かべて皿の上の肉を見下ろす。「大丈夫だって。あくまでも『俺たちをいつでも殺レるから、感謝して食えよ』ってこと。根っからの支配者タイプの料理人だ」 涼が恐る恐る、一切れを箸で掴み口へ運ぶ。「〜〜〜っ ! 」「美味いだろ」 大きく頷いて見せる。態とらしい身振り手振りは必要ない。ただ美味いと頷けばいい。 それほどに陳の料理はオールジャンルの料理をこなし、何より囚人を一目見ると、差し出すメニューを陳自らが決めて出す。その経
続きを読む

3.裏切り者の尻尾

「食事が終わったら自由時間。と言っても昼のような作業は禁止。一階のパーツ屋も閉まってるし、畑も駄目。各自なるべく自分の部屋にいるかシャワー浴びるかだな」 房に戻った涼は京から流れを聞いていた。「その後、翡翠が就寝の合図に来る。看守役の人形が房の鍵を締めて就寝だ」「看守役の人形って ? 囚人じゃないのか ? 」「ああ。初代管理人が死んだ時、同じく看守達も姿を消したんだ。だから今は『核』が看守役の人形を創ったってわけ人形ってよりロボットに近いな」「確かにこの房の鍵を翡翠さんだけでしめるなんて無茶だもんな……」 京はベッドに座り込む涼の前にパイプ椅子を引き摺り目の前に座った。「今日一日だけで疲れたろ ? 」「あ、ああ。何も考えられない……。とにかく言われた事は守らないとな……」 眠そうな眼を擦る涼の手を取る。休ませるどころか、思い切り立たせる。「じゃあ、今度はシャワー室の案内な。最初が肝心。使い方教えるぜ」 京が房を出て手招きする。  涼は正直クタクタだったのだが、断る頃もできず、ベッドに別れを告げる。「分かった。行くよ」 二人並んで食堂のある右の塔を目指す。食堂横に階段がある。学校の校舎にあるような折り返し階段だ。「ここな」 食料庫と書かれたドアのある階の下。  感覚としては一、二階がシャワー室だ。  靴を脱ぎシューズロッカーに入れる。未使用のタオルを手に取ったら列に並ぶ。  真ん中に人形がいた。服も着ていない、無性別の人形だ。「あれが看守人形…… ? 」「そう。至る所にいる。あれ自体に意思はないけど、『核』が見ていると思って間違いねぇ」『城』の創り出した看守。  確かに涼から見てもなんの色もない。形状もデッサン人形に近いもので、目鼻口もボンヤリと描かれているだけだ。 出てくる人形を誘導し、今度は並んでいる人形をシャワー室へ誘導する。「……セルフレジみたい」「セルフレジ ? 今そんなの
続きを読む

4.支配者と狂人のマリオネット

「あ〜あ。大変だ」 ゾク…… !  涼の背後で、呟くように小さく笑う京の感情が流れてくる。 非常にまずい流れだ。「ま、そういう事もあるからな。おめぇも気をつけろよ ? 」「う、うん。ソウダネ」 京に恐怖を感じる。 わざわざ、涼は見たくなかった。噂で聞くことはあっても、自分の目で、まるで詮索したみたいではないかと。 次にサラと会った時、顔に出てしまいそうだとハラハラする。 しかし、予想より酷い事態が即刻訪れる。「よう、フェンラン」 京が入浴から戻ってきた女達の中からフェンランに声をかけた。 涼は全てを察した。 どこまでも京は『楽』の人間なのだと。「どうしたんだ ? 二人でわたしを出待ちかい ? 」「たまたまだよ。 それより、サラって人の事。涼にも言っておいたからさ。食事中もそうだけど、色々あるよなぁ。俺たちも今シャワー室に行ったんだよ」 フェンランがまだ半分濡れている涼の銀髪を見下ろす。「わざわざそんな事を報告に来たんじゃないだろ ? 」「まぁね。 あの角のすぐ五列目の房に今サラって奴がいるよ。デカい冥花の塊持ってさ。あの房の奴、そんなに裕福なら、今度のファイトで俺と賭けやらねぇかなと思ってさ」「しょうもない。そんな事を言いに……」 気丈に振る舞うフェンランだが、涼の目が泳ぐのを見て全てを理解する。 事の重大さは冥花の密売ではないのだ。「……フェンラン ? 」 囚人塔の先。 フェンランは猛烈な朱に染まりながら、下駄の音を響かせ角を曲がる。「京、どうして言うんだよ !? 」「だって、フェンランだって知ってた方がいいことだろ ? 」「でも、そっとしておけばいいじゃん」「見て見ぬふりか。時間が経てば、それだけ罪を重ねるじゃねぇか」
続きを読む

5.嵐の前

 朝。 涼が目を覚ますと、京は隣のベッドにいなかった。 体を起こしてベッドの端に座り、涼は記憶を遡る。 人形の自分の細い膝の上で組んだ手の指先に、傷が付いていた。 昨晩、京の口の中のドールアイに触れようと……その瞬間に牙を向けられた。 一度翡翠に相談してしまいたい。 全て話してしまいたいと願う。 しかしそれは自分の終わりを意味するような気がして出来なかった。何より、囚人二日目にして管理人に泣きつくことは許されないだろう。 一度立ち上がるが、何をしていいか分からなかった。空腹感はあるが食欲が湧かない。 鉄格子の外は騒がしい。「あれ…… ? 」 朝は点呼があるはずだ。何故起こされなかったのかと呆然と考えた。 何気なく開いたままの格子扉から廊下へ出ると、運が悪いことにサラと出会した。「あ……」「あ。そうだった。涼くんここだったね」 他の囚人たちの視線が集まるのを感じた。 サラは今日、自分を利用した男とファイトするようフェンランに言いつけられている。 その元凶が京と自分だ。 申し訳なく思うと同時に、不思議に視えた。 サラは同じドレスを来て、髪を下ろし、昨日と変わらず水の入ったままのジョウロを持っていた。 その感情色が、白色に近しい。 涼を逆恨みしていれば赤く視える傾向が強い『怒』の感情が視えないのだ。「なん……で ? 怒ってないの ? 」 サラは一瞬、驚いた表情を見せると、すぐに手を叩いて大笑いするそして涼の肩をパンパンと叩いた。「どうせ見つけたのは京くんでしょ ? 君はまだ初日だったし。それに、悪いのはわたしだからね」 この瞬間、ようやく出る。『怒』と『哀』の混じりあった赤い帯に混じる藍色。 怒りはある。 しかしそれは涼に向けてのものじゃなかった。「少し、
続きを読む

6.狂気に至る薬

 今まで色々な人を視ては来たが、感情を吸えるようになったのは『核』に願ってからだ。サンプルが三人しかいない。  翡翠、京、フェンランだ。  しかしこの三者は、涼に流れてくる負のエネルギーに『自己嫌悪』が混じっていた。  これは京が昨晩、二回目に触れた際に気付いた事だった。誰もが持つ自己嫌悪や自己肯定感の低さ、コンプレックス。  これが今のサラにはない。「不思議……なんだか……軽くなった気がするわ」 サラが重なった手を見て呟いた。  同時に涼もサラを不思議だと感じていた。「はぁ……少し、壁に寄りかかっていい ? 」「あ、うん。……なんだか、大丈夫 ? 使いこなせてないみたい」「へへ……実はそうなんだ。  サラは自分に……」『自信があるタイプなの ? 』 そう聞きそうになり、ギリギリのところで喉を鳴らして言葉を飲み込む。  感情の話はしてはいけない。  あくまで負のエネルギーを吸うだけ、という設定なのだ。「なんか言った ? 」「ううん。なんでもない」「ならいいけど。本当に……凄い。頭の中がスッキリしてるこんな感覚初めて」「効果があるといいんだけど……」「うん。あったよ。効果。  涼くん、すごいね。ありがとう」「早く慣れないとですね。俺、みんなも癒しを使いたいと思ってるから」「お互い頑張ろ !   でもさぁ……涼くん、その……」「はい ? 」「君は人に尽くす事で幸せなの ? この監獄の中で……なんの報酬も無しに」「生まれつきの力なのであまり気にはしてないですけど……」「……。君は皆の薬になれるわね」「だといいけど」 サラは立ち上がると、来た時よりご機嫌な身振り手振りで房を出た。 その房の廊下の死角に、朝食から戻った京が壁に寄りかかっていた。サラがいるのを知り、人払いをしていたのだった。「京くん
続きを読む

7. サラVS恋人のファイト

 ファイト目前。 涼と京は一階まで階段を降りる。 他の囚人は我先にと集まり、既にフェンスにギシギシとしがみついていた。 その階下の様子を見ながら涼は焦燥感に見舞われる。「よぉ……こっちゃ来ぉー……。こっちゃ来ぉー……」「良ーいナイフだなぁ……。〜〜〜♪」 ファイトに興味のない者もいる。ベッドから出ない者。通りかかる涼を見て、房の最奥の暗がりの便座に座り、手招きをしてみたりだ。「絶対行くなよ。めんどくせぇから」 見向きもせず京が言い、涼はも頷くとその背を追う。 ふと三階まで来た時、手摺りに寄りかかり下の様子を眺める男がいた。 褐色肌の大柄の人形で剛毛な髪を小綺麗に編んだ四十代後半程の男だ。その体は筋肉質で美馬のような半裸姿だった。 その男は涼に気付くと、振り返った拍子に左足を下げる。 ガギン……。 昔、テレビで見たタップダンス用のチップでも靴底に付いているのかと視線を向ける。 無意識下、その左足に釘付けになる。 人形の足では無いのだ。緩やかに、しなやかにカーブを描き、まるで俊敏な猫足のような脛。そしてその球体関節は人形の涼より余程精密で少しの軋みもなく動く。 義足だ──恐らく生前に義足だった。 それはこの世界に反映されている。涼の能力や染髪した銀髪のように。「……」 浮かぶ疑問。 この『城』には歪みがあるこの義足は明らかに人形の足より優れている。もし一律に人形でいなければならないとしたら、義足は必要がない。 何故、既に死した自分の魂が人形という物体に入っているのか。 この時──初めて涼は、京が『幻のドールアイ』や脱獄より、執拗に『城』の事を呟くのか察しが付いた。 京は初めて来た涼に言った。『ここは罪人が来る場所。生前に罪を精算しなかった者が選ばれる』 だが
続きを読む

8.観覧される癒し

「これだよ……」 「こりゃあ、一方的に男が謝っちまえば済んじまうよなぁ ? 」 「その場合は冥花は手に入んねぇだろ ? 」 「それで帳消しなら安いもんだろ」 「ああ。フェンランとは揉めたくねぇ」 しかし男は一度下ろした拳をもう一度振り上げ、サラに放った。「そんな ! 」 涼も驚き声を上げた。  観衆の言う通り、男の方は謝ってしまえば済むことだ。余程冥花が欲しいのか……と言うより、引くに引けないところまで来てしまったというのが正しいかもしれない。 ゴッと鈍い音を立ててサラが仰け反り、尻餅をつく。相当な反動だ。痛みも一入なはず。  しかしサラはドレスに付いた埃を払うと無言で立ち上がった。「サラ……」 サラの感情色には邪念という邪念がなかった。一つの翳りもない『喜』の桜色のに似た白光が漂っている。  何も抵抗の無いサラに、今度は男が突き飛ばし、倒れた体に馬乗りになった。「俺は嵌められた !! 俺に後はねぇんだ ! 」 自暴自棄。  今回、冥花を手に入れたところで男は永遠に目を付けられるだろう。それはフェンランからだけではない。他の囚人も、争いや秩序が乱れることを望まない罪人もいるのだ。この終わりのない監獄の中で、『女を誑かし冥花をくすねた男』と永遠に言われ続ける事になる。「サラ ! 立って ! 」 涼の声は届かない。観衆の響めきが、無抵抗のサラの様子を見て釈然としない騒めきに変わる。 男が不信げにサラの目をジッと見つめた。  その瞳はまっすぐ男の姿を写し、微笑んでさえいるのだ。「き、気味わりぃ。なんで何もしねぇ ? 」「うん……」 サラは上半身を起こすと、フェンス越しに立ったフェンランを見た。「ごめんね。フェンラン。わたし、貴女の所へは戻らない」 一瞬の静寂。  涼はフェンランから出た猛烈な真っ赤な爆発を視ていた。「わたし。冥花を盗んだのは本当に申し訳ないと思う。  許してください」
続きを読む

9. 幕開け

 サラも男の初めての本音に唖然とした。「そう……。そういえばいいじゃない。喋れない訳でもない、共通言語で会話のできるこの『城』で。そんなに皆んな違わない。  気軽に話してくれれば良かっただけよ……」 サラが受け入れる言葉を聞いて京が眉を寄せた。「アンタも涼に触ってるからじゃねぇの ? そもそも女たちは男と一線引いて暮らしてる。話してくれればいい、じゃねぇよ」「うん。確かにね。でも、話したいっていうのはわたしも同じ気持ち。さっき言った言葉に嘘はないの。  それに、わたしは自分の罪を受け入れるわ。  なんかねぇ。人に執着しちゃうの。良くないって分かってるから、ちゃんと考えて今は行動してるけど……悪い癖が出ちゃったね。  でも色んな人と関わりたいって言葉。本当なの。  涼くんの『癒し』も、勉強になったわ。人と話して癒すじゃなくて……癒される側の気持ちがね……」「……」 全てが済んだ。  男はサラに謝罪をし、サラはフェンランから離れたが拒絶ではなく自分の根本の理解。そして『城』へ来た原因にもなった彼女の原罪へ向き合ったこと。  涼は昏睡してしまった。  京はどうしたものかと、袖を何とか伸ばして涼を掴もうとするが、脱力している他人を持ち上げるのは難しい。上手く力が入らず四苦八苦。 突然だった。 ボー…………ン。ボーーー……ン。 全員が天井を見上げた。  その場にいた者だけじゃない。  房の中にいた者も、シャワー室にいた者も、厨房の陳の仲間たちも全員だ。  妖しく光る藤紫の時計が唸りを上げ、一本の針がゆっくり動くのを見た。「と、時計が動いた !!? 」 「あれ飾りじゃなかったんか !! 」 「なんで急に ? 」 「さぁ、あの新入りのせいじゃないか ? 」 「そういや、翡翠様が気にしてたよなぁ ? 」「あの女も男も、結局丸く収まっちまったよな」 「『癒しの力』がどうってなんの事だ ? 触れば時計が動くんか ? 」
続きを読む

10.藤色のドールアイ

 翡翠は真っ白な手袋を外すと、そっと涼に触れる。「うぅ……」 昏睡した上に無理に入り込んでくる翡翠の負の感情。深い『哀』の色。苦しそうに寝返りをうつ。「不思議だ」 その翡翠と涼の姿を、修理を終えた京が鋭い眼光で伺っていた。 今しがた感情を吸いすぎた涼に触れる翡翠に腹を立てたのだ。それも京の前では手袋を初めて外した瞬間でもあった。 これは自白でもある。 自分が最初のドール群で、幻のドールアイを加工した側の者であると言う事だ。「あんた鬼畜だな。涼も消耗品か ? 」「本人に了承は得ている」「囚人の修理が終わったらさっさと房に戻す癖に、今日は俺をここに入れるんだな」「涼の目が覚めたら、連れて帰ってくれればいい」「それだけか ? 」 翡翠も気付いているはずだ。 涼は『城』にとって危険因子過ぎる。「修理中、『核』に話しかけても、うんともつんとも喋らねぇ。『城』は何の為に存在する ? 」「『核』言う通り、罪を背負う為なんだろう。皆がそう説明されたはずだ」「あんたもか ? 」 京が翡翠の手を指差し返答を待つ。球体関節の付いた人形の手。その無機質な指を涼の手に絡める。「そうだ。俺も同じ事を初代管理人に聞いたな」「あんたはなんでここに来た ? 罪状は ? いつから管理人になった ? 」「……答えられんな。 お前こそ、俺の失せ物を知らないか ? 」「……いいや ? どんな物だ ? 」「……。鍵だ。大事な物でね」「鍵ねぇ。知らねぇな。無くしたなら、錠前を付け替えればいいじゃねぇか」「そうはいかなくてね」「……だろうな」 京は窓越しに写る翡翠と目を合わせる。 互いに何の確証も無いのに繋がってしまう状況。証
続きを読む
前へ
123456
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status