2005年。 高部 紗良には悩みがあった。 いつもの黒スーツに着替え、ロングヘアを纏めヘアピンでしっかり固定する。 調理の仕込みをしている黒服の同僚に紛れ、ホールに行くと開店前のチェックに入る。 高部 紗良は女性黒服としてキャバレーに勤務していた。幼い子供を交通事故で亡くし、その後精神を病んだ彼女を夫は簡単に捨てて他の女性の元へ去った。 その傷がやっと上向き出した頃、紗良はこの仕事に流れてきた。「あら、おはよう」 キャスト達が店に流れてくる。「あ、彩果さん。おはようございます」「床置いた縫いぐるみかと思った。踏む寸前だったわ」 そう言って彩果は嗤う。その周囲のドレス達も大きく肩を震わせ声をあげる。「すみません。マットの泥が残ってたので……」 花のような女性たちは客が入り始めるとそれぞれ卓に指名される。「アヤちゃんは今日も面白いなぁ〜 ! 」「え〜 ? そうですかぁ ? 」「なぁ、あれみろよ」 彩果の接客していた男性二人組のうち、一人が紗良を指差す。「あの子は指名出来んの ? 」「いえ。彼女はホールの雑用がメインなので。 わたしとお話じゃつまんないですかぁ ? 良かったらぁ、もう一人付けましょうか ? 」「いや、俺は……いいよ」 その中年男性は照れ臭そうに頭を搔くと顔を真っ赤にしてグラスに口をつける。彩果はとぼけた顔をすると、甘えるように男性に絡みつく。「ああいう方が好みなんですかぁ ? 」 そこへ同伴した男性客が彩果の髪を撫でながら、モジモジする男を笑った。「おめぇは昔からああ言うのが好きだよなぁ。地味っつーか、純朴っつーか」「えー ??? そうなんですか ? 」「いやぁ……。いつも一生懸命働いてるしね。感じもいいし……」「アヤちゃんこいつただのデブ好きなんだよ」「あ〜 ! そうなんですね〜」「太ってると、
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