とりあえずバスローブを身に着け、髪をタオルで拭いながらバスルームを出る。 そして、窓際の簡素なテーブルの前の椅子に、ゆったりと腰かける氷室さんを目にして、ドキッとして足を止めた。彼もバスローブ姿のまま、長い足を組み上げている。 裾が割れ、引き締まったヒラメ筋を惜しみなく披露する彼が、ちらりと私に視線を流してきた。「なんだよ」一瞬私が怯んだのを見逃さず、むっと口をヘの字に曲げて、腕組みをする。「い、いえ。一度帰るって言ってたから、まだいると思わなくて」タオルを口元に当て、モゴモゴと言い訳をする私に、ハッと短い息を吐く。「置いて帰ったかって? いくらなんでも、薄情だろ」「えっと……ありがとうございます……?」正直なところ、朝を迎えたら昨夜のテンションが気まずいし、こっそり帰ってくれてた方がありがたかった気もする。 私はサッと室内を見回し、ベッドの足元にちょこんと腰を下ろした。 彼がまだ私に視線を流しているから、意味もなく肩に力を込める。……こうなったら、とにかく言わなきゃ。 昨夜のことをちゃんと謝って、酔ってたからとか、言い訳でも弁解でもいい。あんな風に男の人を連れ込んだのは、昨夜、氷室さんが初めて。 もちろん、この先二度とない、人生最初で最後の大失態だ。 とにかく、酔っ払ったら誰とでも簡単に寝る女だなんて、思わないでほしい。だけど、説明がしどろもどろになっては、元も子もない。 どんな言葉を選ぶのが正解なのか。 失敗して、かえって軽蔑されたら堪らない……!私は焦燥感に駆られながらも、心の中でジレンマと闘い、結局なにも言えないまま、膝の上に置いた両手に目を落とした。 すると。「……なにがいい?」思いがけず、氷室さんの方が先に口を開いた。「え?」反射的に顔を上げると、まっすぐこちらを見ていた彼とバチッと目が合う。「対価、もらったから」氷室さんは素っ気なく言って、おもむろに足を組み替えた。「あんた、交換条件のつもりで、俺とヤったんだろ?」眉根を寄せて言われて、私は無意識にゴクッと喉を鳴らした。「氷室さん、昨夜のことは、その……」「一つだけ、言うこと聞いてやる。常識的な範囲で」むしろ、ここがチャンスとばかり、『昨夜のことは忘れてください』と言いかけた私を遮って、どこか不服そうに顔を歪める。「……え?」問われ
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