一条櫻羅を連れ出した叶翔たちは、そのまま足早に会場を後にし、自分たちが宿泊しているホテルへと戻ってきた。夜の街は煌びやかだったが、誰一人としてその景色を楽しむ余裕はなかった。エレベーターに乗り込み、最上階へと向かう間も、言葉は少なく、それぞれが胸の内に様々な思いを抱えていた。やがてスイートルームに到着すると、重厚な扉が静かに閉まり、外の喧騒が完全に遮断される。広々とした室内には落ち着いた照明が灯り、柔らかなソファや大きな窓から見える夜景が、ようやく彼らに一息つく時間を与えた。櫻羅は部屋の中央で立ち止まり、しばらく動けずにいた。そんな彼女を気遣うように、叶翔は軽くソファを指し示し、颯真は無言で水の入ったグラスを差し出す。英士は既にテーブルの上を片付け、何か準備を始めていた。それからしばらくして、また扉が再び開いた。戻ってきたのは神楽坂悠臣だった。どこか余裕を感じさせる表情のまま、手にはグラスを持っている。「悠臣、やったのか!?」南條颯真が声を上げ、勢いよく悠臣に近づく。悠臣はその反応に満足げに口角を上げると、手にしていたグラスを軽く掲げた。「一条竜星のグラス、ゲット!!」その言葉に、部屋の空気が一気に動く。英士はすぐに反応し、あらかじめ用意していたビニール袋を取り出した。慎重な手つきでそのグラスを受け取り、指紋が残らないよう丁寧に袋へと入れる。そして、ペンを取り出し、袋の表面に『一条竜星』としっかり書き記した。その一連の動作には一切の無駄がなく、まるで最初からこうなることを見越していたかのようだった。英士は次に、叶翔と櫻羅へと視線を向けると、それぞれにビニール袋を手渡す。「髪の毛を引っこ抜け」淡々とした口調だったが、その言葉の意味は重い。「毛根が残ってないとダメだぞ」颯真も真剣な顔で付け加える。櫻羅は一瞬だけ戸惑いを見せたが、すぐに覚悟を決めたように自分の髪に手を伸ばした。そして、躊躇なく毛根から一本を引き抜く。その小さな痛みに顔をしかめることもなく、静かにビニール袋へと入れた。英士はそれを受け取ると、同じように名前を書き加える。その様子を見ていた叶翔は、どこか気まずそうに頭をかき、しばらく躊躇していた。だが、意を決したように自分の髪を掴み、ぐっと引っ張る。「痛って~!!」思わず大きな声が出た。しかし短く整えられた髪は、途中
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