鷹宮家では―――。朝の柔らかな光が、カーテンの隙間から寝室へ差し込んでいた。けれど和真は、そんな朝の気配を感じながらも、なかなかベッドから出ようとはしなかった。昨夜の出来事を思い出しながら、いつまでも布団の中でグズグズしている。頭の中には、昨夜の光景が何度も蘇っていた。雪乃と康太。そして、九条家で明らかになったDNA鑑定の結果。和真自身、昨夜のことを考えると胸の奥が重くなる。雪乃が何を思っていたのか。康太はこれからどうなるのか。そして、自分はこれから何をしなければならないのか。考え始めれば、いくらでも考えられてしまう。だが――。今だけは、そのすべてから逃げるように、布団の中にいたかった。それに、和真にはもう一つ理由があった。いつものように、心春が起こしに来るのを待っていたのだ。心春なら、きっといつもの調子で自分を起こしてくれる。その声を聞けば、重たくなった気持ちも少しだけ軽くなる。そんなことを考えていると――。ドスンッ!!突然、和真が被った布団の上に、心春が笑顔で乗ってくる。「和真!!いつまでも寝てると、遅刻しちゃうよ~」布団越しに伝わる心春の重み。そして、明るく弾んだ声。和真は思わず笑ってしまった。今朝の心春はいつもよりも機嫌がいい。その理由は、和真にも分かっていた。昨夜の出来事で和真の疑惑が晴れた。そのことで、こうしていつもと変わらない朝を迎えられたこと。それだけで、心春は安心しているのかもしれない。そんな心春を見ていると、和真の胸にも温かなものが広がっていく。――やっぱり、この子といると落ち着く。どんなに面倒な問題を抱えていても、心春がそばにいるだけで、自分が自分に戻れる。和真は笑って心春を布団の中に引っ張り込んで抱きしめる。「もう少し優しく起こしてくれよ」心春の頬に軽くキスをする。心春は目を細めて肩をすくめた。「だって、和真ったら寝坊助なんだもん」そう言いながら、心春も和真の腰に巻きついた。二人の距離が近くなる。和真はまた笑って心春を力強く抱きしめた。その瞬間だった。昨夜の雪乃が言った一言が、ふいに思い出された。――「あなたは変わらず若々しいですね」あの言葉。何気ない一言だったのかもしれない。けれど、和真の心には妙に残っていた。雪乃も和真も、そして綾乃も、二十代の
Última actualización : 2026-09-23 Leer más