神山雪乃も、康太を学校へ送り出してから、ずっと落ち着かなかった。朝食の後片付けをしても、洗濯物を畳んでも、時計の針ばかりが気になってしまう。何度もスマートフォンに目を向けては、まだ何も連絡が来ていないことを確認する。今日という日が来ることは、わかっていた。それなのに――。いざ、その日になってみると、胸の奥が押し潰されるように苦しかった。康太は確かに壮真の子である。それだけは、雪乃自身が誰よりもよくわかっている。十年前のあの日。康太をこの腕に抱いたときのことを、雪乃は今でも鮮明に覚えている。だからこそ、信じたい。いや、信じるしかない。しかし、例え今の技術を以てしても、壮真の子か和真の子か判明しなかったら―――。そう考えるだけで、心臓が早鐘のように鳴った。もし、結果が「和真の父親である可能性を否定できない」というものだったら。自分は、どうすればいいのだろう。その瞬間、雪乃の脳裏に先日の心春の怯えたような瞳が浮かんだ。あの、蒼白な顔。必死に感情を押し殺そうとしていた瞳。自分を見つめていた、傷ついた眼差し。思い出しただけで、また胸が痛んだ。例え玲子に焚きつけられたとしても、あんなに若い女性を傷つけてしまった。ただ、その時の雪乃は、自分にも味方が欲しかった。一人で康太を育て続けることに疲れていた。玲子に「養育費を渡せなくなる」そう言われて追いつめられていた。だから――。自分と康太を守るために、和真という後ろ盾を得ようとした。けれど、それは自分にとって都合のいい言い訳にすぎない。雪乃が壮真に「本当に俺の子なのか?」そう言われたときと同じくらい、心春にとってはツライ思いをさせてしまった。雪乃は両手を握りしめた。もし、自分が心春の立場だったら。夫に突然、自分の知らない子供が現れて、その子供の母親から「あなたの夫の子供です」と言われたら――。きっと、平静ではいられない。自分なら、心春のように耐えられただろうか。そう考えると、胸がさらに苦しくなった。雪乃は綾乃の姿を思い出していた。自分が康太のことで彼女の娘を傷つけたというのに、綾乃は雪乃を責めなかった。むしろ、自分の話を最後まで聞いてくれた。パフェまで一緒に食べてくれた。そして、雪乃と康太の将来を心配してくれた。自分なら、康太が同じ目にあったとしたら、そ
Última actualización : 2026-09-13 Leer más