جميع فصول : الفصل -الفصل 220

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9 逆プロポーズ

 その後も時間の感覚がわからなくなるまで二人は交わりを続行していた。 シリウスも最初の頃は体があまり動かなかったようで、ナディアが上になって交わったり、お互いの性器を同時に口淫したりしていたが、そのうちにシリウスも本調子に戻って来たようで、現在はシリウスが上になって正常位で繋がっていた。「あああっ…… ふああんっ……」 今日初めて男を受け入れたばかりのナディアを気遣ってか、シリウスの動きは緩慢だった。 男根でナディアの膣内を味わい尽くすようにゆっくりと挿入を果たされ、キスされたり手や唇で乳房を愛撫されたりしながら腹の中を征服されると、ナディアの全身をたまらない快楽の波が襲った。 最奥をズンと突かれてから引き抜かれる際も、快感で視界が霞み、気絶してしまいそうなほどに気持ちがいい。 ナディアの淫穴はシリウスが去るのを嫌がり行かないでと吸いつくが、シリウスはヒクつく膣肉をカリ首で引っ掻くようにしながら、先端部が見えるくらいまで引き抜き、淫らな水音を立ててまた挿入していく。 番になった影響なのか、ナディアの膣はシリウスの巨根を喜んで受け入れて快感を生み出し続けている。長すぎるが一応初体験のはずなのに、ナディアの性器はすっかりシリウスに馴染んでしまった。「ああっ、らめっ! それらめっ!」 緩い動作で深く結合しながら、シリウスが綺麗な指でナディアの淫芽をいじり始めた。過ぎた快楽に体を跳ねさせたナディアは、舌足らずな声で鳴く。「イきそう?」 ナディアは生理的に流れる涙をこぼしながら、こらえきれそうにない快感を伝えようとコクコクうなずいた。「イって」「あっ! あああああっ……!!」 言葉と共にグリッと強めにクリトリスを潰されたナディアは、本日何度目かわからない絶頂を迎えて自分を解放させた。目の前が真っ白になり、訳がわからなくなっているその間にピュッピュッと何度か潮を吹き上げた。「ナディア、愛してる……」(私も、私も愛してる…… シリウス……) 激しく息をしながら、ナディアは美しすぎる愛しい番に手を伸ばした。心の中にはもうシリウスしかいない。「結婚してくらしゃい……」 包容を返されて強く抱き合いながら、ナディアはシリウスに言い忘れていたことを口にしたが、絶頂直後の影響で舌足らずな口調のままだった。「ふふっ…… 可愛い♡ 俺のプロポーズの答えに
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10 永遠に俺のもの

「さっきナディアちゃんが寝てる間に兄さんとも話してきたんだけどね」 ナディアはシリウスに奥まで貫かれた状態で抱きしめられて、ベッドに寝そべっていた。シリウスが挿れたままで眠りたいと言い出したからだが、ナディアもシリウスの求めには応じるつもりだった。 シリウスは先ほどからほとんど動いていないが、ナディアはシリウスと一つになってその温もりを感じられることに、途方もない幸福感を味わっていた。 ジュリアスは覗き防止のための魔法などをかけたままこの家からは離れていたそうだが、ナディアが寝てる間に一度帰ってきて、シリウスと話をしたらしい。「ナディアちゃんの戸籍は『メリッサ・ヘインズ』とは別の全く新しいものを用意するそうだから、準備出来次第結婚しよう。今度は『ナディア』の名前で用意できるみたいだから、『ナディア・ブラッドレイ』になれるよ」 シリウスはニコニコしていて、ナディアとの結婚をとても嬉しそうに語っている。「兄さんも近いうちに結婚するんだって。仕事は転移魔法で通勤するからって、結婚後はお嫁さんの実家がある場所に移り住むらしい。俺たちも一緒に行こうって誘われたんだけど、どうかな?」「一緒に行く」 ナディアは即断即決した。ナディアはシリウスと一緒にいられるのなら、住む場所はどこでも構わなかった。「ありがとう、嬉しい。結婚式も向こうでやろうか。落ち着いてから、関係者だけ呼んで」「うん」 うなずいて了承の返事をすると、シリウスはとても嬉しそうにして、どこの芸術作品だろうかというくらいの美しすぎる顔に満面の笑みを浮かべた。 「愛してるよナディア。俺たちはずっと離れない。君は永遠に、俺だけのものだよ」 深い愛の告白と共に誓いのようなキスが降ってくる。ナディアはそれに応えて幸せを感じながら、シリウスの腕の中でトロトロとまどろみ始めた。  ****** 眠るナディアと繋がりながら彼女を胸の中に抱きしめているシリウスは、ようやく念願叶って最愛の女性を捕まえることができて満足していた。 シリウスは未来永劫ナディアを離さないと決めていた。 兄ジュリアスに結婚相手フィオナの地元へ一緒に行こうと誘われたのは、シリウスにとっては好都合だった。 ナディアの元彼と同じ場所になんて住みたくなかったからだ。 それに同じ街にいたら、ナディアとゼウスがどこかで偶然にでも
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11 ブラッドレイ侯爵

 シドの処刑後ほどなく、危機的な状況に陥りながらも獣人王シドを屠り、人々の生命を守りきったことを讃えられたマクドナルド・オーキット三番隊長と、ジュリアス・ブラッドレイ二番隊長代行には、国からの栄誉が与えられることになった。  元々伯爵位を持っていたマクドナルドは陞爵され侯爵位が決まり、叙爵されることになったジュリアスには、慣例により当初伯爵位が妥当とされた。  しかし、首を刎ねて止めを刺したのはマクドナルドではあるものの、まるで勇者のようにたった一人でシドと戦い続けて獣人王を追い込み、シドを討ち取れたのはジュリアスがいたからこそだった。  シドの遺体の検証結果から、ジュリアスの剣がシドの心臓を完全に刺し貫いていたことも明らかになり、マクドナルドが首を刎ねずともシドは絶命していたはずだとされた。 「最強の男に勝った真の最強の男に最大の誉れを」という国民感情や、マグドナルドよりもジュリアスの功績が大きいのに爵位が下なのはおかしいという議会での指摘や、国民のジュリアス人気にあやかりたかった宰相がジュリアスに侯爵位を授けることで自分の株も上げたかった等々の大人の事情も絡み、結果的には平民からいきなり侯爵になるという、あまり例のない大栄誉がジュリアスに与えられることになった。  それから、本人に直接ではないにしろ、ジュリアスを持ち上げることで、ジュリアスの専属副官であり、婚約者の兄という立場でもある男を追悼する意味も込められていた。  シドの処刑時の騒動で死亡した民間人はゼロだが、殉職した銃騎士隊員が一名だけいる、とされている。  ジュリアスの専属副官だったフィリップ・キャンベル伯爵令息だ。  フィリップは隙あらばジュリアスに近づいてどうにかなろうと画策する令嬢たちを、常日頃から虫がたかるのを阻止するがごとく冷たく追い払い続けていたが、死亡の一報が流れてからは、「あの性悪眼鏡も人々のために命を懸けて戦っていたのね……」とその死を悼む声が敵対していた令嬢勢力からも上がるようになり、彼を惜しむ声が国中に広まった。  首都での葬儀の後、フィリップの遺体は彼の故郷である伯爵領まで運ばれることになり、銃騎士隊の仲間たちに出棺を見送られた。  フィリップは故郷の地にて、涙するキャンベル伯爵家の者たちにより手厚く葬
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12 さよなら

 ゼウスは三番隊の任務にてブラッドレイ侯爵領に赴いていた。 隊の任務自体は終わり翌朝には帰途に就くゼウスは、活気づく街の様子を眺めつつ、もしかしたら彼女に会えるのではと期待しながら街を歩いた。 貴族になってしまったジュリアスには、当然それを支えるための人材が必要になる。 ジュリアスは他国で病気療養中――そんなものは嘘っぱちだが――のすぐ下の弟シリウスの病状が回復傾向にあるとして、帰国させて自分の元に呼び寄せた。 シリウス自身は貴族籍ではないが、ブラッドレイ家の家令になるらしい。 ノエルから聞いた裏事情によれば、「シド処刑時の騒動による後遺症」で銃騎士隊の活動に制限が出るようになったシリウスは、隊の仕事からは完全に手を引き、これからはずっと兄を支えていくことにしたそうだ。 嫁と共に。 シリウスは療養中に現地の娘と恋仲になっていたとされ、帰国後に「ナディア」という名のその女性と結婚してしまった。 ゼウスは、既に人妻となってしまった女性に手を出す考えはない。 彼らの結婚式だって、ノエルと姉のアテナは招待されていたが、ゼウスは呼ばれなかった。 まあ、一応親戚とはいえ普通に考えたら呼ぶわけないよな、とは思っていたが。 ゼウスは後から花嫁衣装を着ているナディアの写真を見て、号泣した。 処刑場からナディアがシリウスと共に消えた、あの時…… ゼウスはナディアに対する途方もない罪の意識を抱えていた。 しかし、ナディアに対する申し訳なさは消えずにずっとゼウスの中に存在しているというのに、一体どうしてナディアがシリウスに連れ去られる流れになったのか、不思議と思い出せない。 何か重大なことがあった気がするのに、そこだけ記憶が抜かれているような感覚だった。 気づいた時には、ゼウスはアスターの剣を握りしめて泣いていた。ゼウスは、ナディアが自分の元にはもう戻ってこないと確信していて、喪失感を感じていた。 少なくともその時はゼウスはその重大なことを覚えていた気がする。なのに時間と共に記憶は薄れ、罪の意識だけが残った。 ゼウスはナディアが無事なのか確認したくて、彼女を必死で探した。 数日間行方不明になっていたノエルがアテナの元に戻ってきたので、ナディアを知らないかたずねたところ、ノエルは珍しくしどろもどろになっていた。 半分脅すようにして聞き出
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13 来世で待ってる

 カラカラと音がして車輪が回る。 車椅子に乗っていたシリウスが後ろを振り返ると、こちらには背を向けて号泣しながら歩み去るゼウスの姿があった。「どうしたの?」 進行方向とは逆を見ているシリウスに、ナディアもつられて後を振り向くが、ナディアにゼウスの姿は見えていない。 シリウスが、ナディアにはゼウスの姿も声も匂いも認識できないように、この場で魔法を使い細工をしたからだ。 ナディアの中からは、ゼウスに一度は心臓を撃ち抜かれて殺された時の記憶も消えている。「過去干渉の魔法」発動直後はまだその記憶もあったが、時間が経ちシリウスの魔力が安定的に供給できるようになると、世界は「ナディアが死ななかった」という方向により強く固定されるようになり、個々の人々の記憶からもあの悲劇は消えていった。(殺されてしまった苦しい記憶なんて覚えていなくていい) それはゼウスにも言えた。「何でもないよ」 シリウスは前に向き直った。 二人を会わせるつもりはないというシリウスの考えに変わりはない。 今回ニアミスが発生し、ゼウスはナディアの姿を見たが、ナディアはゼウスを認識していないのだから、厳密には「会った」とは言えない。 ゼウスが仕事にかこつけてナディアを探しに来たと知った時は、ちょっとムッとしたが、接近を完全回避させなかったのは、奴に現状を知らしめたかったのと、「ナディアは元気だし幸せだから俺に任せとけ」ということを伝えたかったからだ。  ナディアと番になった後、シリウスは一時期ゼウスを呪い殺してやろうかと思ったこともあったが、どうやら来世では親友になってしまうようだし、そのよしみで命までは取らないことにした。 それにゼウスが死んだらノエルが泣いてしまう。 シリウスはゼウスの悲しみに同調している部分もあった。何かが違っていたら、自分たちの立場は逆転していて、ナディアを失った悲しみに涙していたのは自分だったかもしれないのだから。 ゼウスの心には未だにナディアがいるようだが、彼は獣人ではない。ナディア以外の伴侶を見つけて幸せになることも可能だ。 今世ではもう会わせるつもりはないが、どうせ来世では幼馴染として出会ってしまうし、自分たちはまた恋のライバルだ。(次も必ず勝つ!) そう思いながら、シリウスは愛と幸せをくれる彼の唯一の伴侶と共に家路に就いた。 ******
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《ゼウストゥルーエンド 『悪魔の花婿』》1 目撃 ※話の最後に補足あり

 処刑場でヴィクトリアのところまで走っていたナディアは、銃撃音とほぼ同時に、空中に突然出現した「謎の手」によって体を押された。 その手は肘あたりから先しかなく、見る人が見れば怪奇現象さながらの恐ろしすぎる光景ではあったが、その綺麗すぎる女の腕に、ナディアは見覚えがあった。(なぜヴィクトリア姉様の腕だけが空中に?) ナディアは倒れかけながら、進行方向に変わらずいるはずのヴィクトリアの無事を確認しようとして―― その瞬間、血飛沫と共に腕に激痛が走って、ナディアはうめき声を上げた。「ナディアァァァァァぁぁぁっ!」 地面に倒れたナディアの元にシリウスが瞬間移動で現れると、銃弾がかすったナディアの腕にすぐさま治癒魔法をかけてくれた。 腕の痛みが嘘のように消えていき、ナディアは安堵感と共に息を吐いた。 ナディアは自分を抱きしめているシリウスに、助けてくれたお礼を言おうと顔を上げた。その時……「ナディア!」 自分の名を呼ぶその声にハッと衝撃を受けたナディアは、シリウスではなくて、こちらに向かって泣きそうな顔で走ってくるゼウスの姿に、目が釘付けになった。 ******「ナディア!」 憎き恋敵ゼウスがこちらに向かって走ってくるが、シリウスはナディアを狙撃したような危険な男にナディアを渡してなるものかと思っていた。 空中に突然現れた「ヴィクトリアの腕」――嗅覚から誰の腕かわかった――については検証が必要だが、あの腕が現れてナディアを押さなければ、銃弾の当たりどころが悪くてナディアは死んでいたかもしれない。 愛情の歪みからとはいえ、ゼウスがナディアに銃を向けたことは許し難きことであり、シリウスは腕の中のナディアをゼウスに渡すつもりは微塵もなかった。 ところが……「嘘だ…… 嫌だ…… こっち向いて…… ナディア、ナディア……」 シリウスは、六年間自身の番であったナディアの身の上に起こった現象を、正確に理解できてしまった。  ナディアがゼウスへの『番の呪い』にかかった。 しかも、『本物』だ。 シリウスは、ナディアの頭の中で、番を得た時に聞こえる音が鳴ったらしきことに気がついてしまった。 発動の条件はおそらく、「ゼウスに本当の名前で呼ばれたこと」だ。 その条件はゼウス限定のようだった。 これまでシリウス
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2 復活愛

 ナディアはかつてゼウスに恋をした時のように、ゼウスからまばゆい後光が差し、彼自身がキラキラと輝いたように見えていた。 ナディアにはゼウスしか見えていなかったし、ゼウスの声しか届いていなかった。「ナディア、牢屋で冷たくしてごめん…… 愛してる…… 愛してる……」 ナディアはゼウスの愛の告白を聞き、ゼウスからの思いの込もったハグとキスを受けながら、この世にこれほどの幸せがあったのかと、これまでの人世で感じたことのない強い高揚感と多幸感に包まれていた。 もう二度と手に入らないだろうと、半分諦めかけていた愛が戻ってきた。 愛する人が自分を愛してくれて、互いに思いを伝い合えるということが、常にあるものではなくて、奇跡のように素晴らしく尊い時間なのだということを、ナディアは身を持って知った。 ゼウスに拒絶されて、ナディアは生きる意味を見い出せなくなった時もあったが、ゼウスが共にいてくれるなら、何があってもこれからも生きていけると思った。 ゼウスには――本人の意志ではなかったとしても――南西列島で起こった事件で殺されかかっているし、今日も銃で腕を撃たれてしまったし、牢屋での求愛も拒まれたりと、辛い思いは何度かしているが、思いを通じ合わせたことで、何倍にも膨れ上がっていくゼウスとの愛によって、ナディアはゼウスに関する苦しみの全てを昇華して許した。 そして、ナディアと同じように涙を流しているゼウスも、自分と同じ気持ちであることがナディアにはわかった。 ゼウスは昨日牢屋で、南西列島から行方をくらましてゼウスに会いに来なかったナディアを責めていたが、正体を偽っていたことも含めて、ゼウスはナディアの何もかもを許している様子だった。「ゼウス、生きる時も死ぬ時も一緒よ。もう離れないから」「俺もナディアから離れないし離さない。何があってもそばにいる」 獣人と人間の垣根を超えた愛を二人は誓い合った。それは、かつて二人が約束したものの、挙げることのできなかった結婚式で行われる宣誓にも似た言葉だった。 抱き合いながらナディアはゼウスだけを見つめていたが、不意にゼウスの視線がナディアではなくて、その後ろに投げられた。 険しいものとも違う、少し気遣わし気なゼウスのその視線の先をたどれば、顔色も悪くぐったりとした様子で目を閉じているシリウスと、地面の上に座りながらシリウスを抱
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3 ゼウスの出奔

「エヴァンズ」 連れ立ってやって来た銃騎士のうちの一人が、ナディアの腰に手を回したまま離さないゼウスに声をかけた。「その人は処刑予定だった獣人王シドの娘ナディアではないのか?」 単刀直入に聞かれてナディアは焦った。昨日は捕まって牢屋に入れられていて、自分の身に危険が迫っている自覚はあったが、今朝からはアンバー公爵家でお姫様のような待遇を受けていて、自身に処刑の危機があったことなどすっかり忘れていた。(自分から処刑場にやって来てしまうなんて、考えが浅いにもほどがある……) 愛する人と相思相愛になれた幸せから一転、下手をしたら父のようにこの場で首を刎ねられるのかもしれないと、ナディアの顔からは一気に血の毛が失せていた。 そんなナディアの体を支え、もう片方の手でナディアと手を繋いでいたゼウスの手に、ギュッと力が込もった。 必ず守ると言われているように感じて、ナディアはゼウスを頼もしく感じた。「違います。彼女は長らく行方不明だった俺の恋人のメリッサです。先ほど奇跡的に再会を果せて、その喜びを分かち合っていたところです」 ゼウスは否定で返した。「メリッサ」の戸籍はまだ生きているはずで、ナディアの身分の証明になるとゼウスは踏んだのだろう。「メリッサ」であれば人間としてゼウスと一緒になれる。結婚して人間社会で共に生きていくことがゼウスの希望のようだ。「エヴァンズ、正直に話せ。俺は昨日、獣人ナディアを捕縛する場面に同行していたが、間違いなく、その子は昨日捕まえた獣人のナディアだ」 ナディアはそう告げてきた銃騎士に視線をやった。(そういえば、レイン・グランフェルが恐ろしい顔で列車の座席に剣を突き立てて私を捕まえた時、目の前のこの人も現場にいた気がする) 確信を持って証言する人物がこの場にいるとなると、「人間のメリッサです」説は通用しない気がした。「収監中の獣人が逃げ出した上、銃騎士と懇意になっていたなんて大問題だ」 集団の中の別の銃騎士が発言する。「まあ待て。ナディアの処刑は直前で中止になったんだ。その事情は何となく察せるじゃないか」 発言したのはユリシーズだ。ユリシーズは「ナディアは既にゼウスの獣人奴隷だった」と、全く認可も何も下りていないが、副総隊長ロレンツォに口裏を合わせてもらうように願い出ていた。 しかし話が終わる前に怪しむ銃騎士たち
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4 エヴァンズ邸での出来事

 ナディアとゼウスがノエルの転移魔法によって移動させられた先は、アテナがモデルで稼いだ資金で建てたエヴァンズ邸だった。 銃騎士たちから逃げている最中、ナディアは『この方が早いかも』とゼウスをお姫様抱っこして全力疾走していたが、処刑場広場の建物に入った瞬間に周りの景色が突如フッと変わり、気づけば室内にいた。 びっくりしたナディアはそのまま壁に激突しそうになったが、直前で目に見えない柔らかい空気の塊ようなものに包まれて、壁には当たらずに怪我はなかった。『驚かせてしまってすみません。私の転移魔法で二人をアテナの家まで飛ばしました』 ノエルの精神感応の声が聞こえてくる。室内にはノエルの依り代である黒い鳥が飛んでいて、その鳥はナディアとゼウスと共に転移魔法で処刑場から移動してきたらしい。「あれ? ノエル? と、ゼウスと…… ナディアちゃん……?」 ゼウスの姉アテナの声が聞こえてきて、振り返れば、匂いで妊娠していることがわかるアテナと、それから、客室のベッドに寝かされて目を閉じているマグノリアの姿があった。  アテナは突然現れたナディアと、その腕にお姫様抱っこされている弟ゼウスの姿を見て、驚いているようだった。 そんなアテナの目が黒い鳥に固定される。「ノエル! またろくな説明もしないでいなくなったわね! 『マグナは寝かせておけば大丈夫です』って言われても、心配だから、今マチルダさんに往診を頼みに行ってもらってるのよ!」 怒られたノエルの黒い鳥は、しゅん、とうなだれた様子だったが、アテナの近くまで飛んでいって肩に止まり、羽を休めた。「……いいわ。緊急事態だったのね。私も怒りすぎてごめんね」 しばしの間が空いてから、鳥に向かってアテナが落ち着きを取り戻した口調でそう言葉をかけていた。たぶん二人にしかわからない何がしかのやり取りがあったのだろう。「ゼウスとナディアちゃんが現れたのはノエルの魔法?」『そうです』 今度はノエルは精神感応で部屋にいる全員に言葉を返した。 それからノエルはまた魔法を使い、マグノリアの服の間から、依り代にも変化できる魔法使いの札をススッと動かして取り出した。 札は勝手に動き、マグノリアの頬や腕などの素肌をさらしている部分に、ピタッと張りついた。「何してるの……?」『マグナの魔力を回復させています』 ア
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5 据え膳にストップ

 また一瞬で目の前の光景が変わる。心配そうな表情でこちらを見ていたアテナと、アテナの肩に乗ったノエルの黒い鳥の姿が消えて、ナディアたちはそれまでいた部屋よりも広々とした、明らかに別の部屋に立っていた。 ここは隠れ家のリビングらしい。隠れ家は国の北部にある険しい山脈の奥深くに位置する、切り立った崖ばかりの場所だそうで、標高もかなり高いらしく、部屋の中はひんやりとしていて少し肌寒い。 森林限界も突破しているために隠れ家の周囲に緑はない。そのせいで目隠しになるようなものは何もなく、剥き出しのドデカい家が山の中にドーンと建っているわけだが、付近に断崖絶壁が多すぎるせいで、地表からここにたどり着ける者がいる可能性は限りなくゼロに近く、動物もほぼ訪れない場所と聞いている。 ゼウスは、国内にあるアークが知らない隠れ家の二択のうち、見つからない可能性がより高い方を選択していたが、アテナたちいわく、「この場所に家を建ててみたのはいいけれど、冬は暖炉の火が消えれば凍死する可能性もありそうで、冬が来る前に別の場所へ移る必要があるかも」とのことだった。 ここは空気が薄いので高山病になる可能性も高いようで、マグノリアが魔法で空気の成分を調整して、この環境に徐々に慣れるようにしてくれるそうだ。 エヴァンズ邸から持ってきた荷物を整理している間、マグノリアは鳥を使って夫のロータスと娘のカナリアに接触を図っていた。 マグノリアたちは処刑が発表されていたナディアを助けに処刑場に訪れていたらしい。 マグノリアはロータスとカナリアを自宅まで転移させると、そこに鳥を置き、この隠れ家と同様に結界を張って万一の襲撃に備えた後、処刑場からいなくなったというヴィクトリアの行方を追っていた。 集中して探したいからと、マグノリアは隠れ家の一室に籠もると言い出した。「二人とも、追われる立場になっていつ命を落とすかもわからないんだから、後悔しないように生きてね。 一階のお風呂を魔法で沸かしておいたから、初体験前に必要だったら使って。大丈夫よ、二人の愛の営みを覗いたりなんてしないから」 マグノリアは重い言葉と軽い言葉を残して、二階に行ってしまった。「……ナディア」 階段を上るマグノリアの背中を見つめながら考えていると、ゼウスに名前を呼ばれた。 振り返ると、少し頬を朱に染めたゼウスがすぐ近くにいた
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