جميع فصول : الفصل -الفصل 230

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6 口淫

 二人で浴室に向かう。脱衣室に到着すると、キスをしながらすぐにゼウスがナディアの服を脱がしにかかった。 ナディアが着ているのはアンバー公爵家でもらった純白のフリルワンピースだ。 結婚式でまとう衣装にも似たその服を脱がされていると、挙げられなかったが、結婚式の夜に愛する人に全てを捧げる花嫁のような気持ちになれた。 ゼウスは背中のチャックを下ろすと服の中に手を入れて、ブラの留め具も外した。緩んだ下着の隙間から入り込んだゼウスの手がナディアの胸にたどり着き、優しく揉みながら指の腹で敏感な先端を愛撫される。 ナディアはそれだけで、ゼウスとの初めての交わりへの期待で疼いていた下腹部がさらに疼き、じんじんと熱を持ちながら脈打ってきたように感じて、愛液がしたたり落ちそうなほどに膣内が潤んでくるのが自分でわかった。 ゼウスはナディアのワンピースと下着も脱がせると、ふるりと現れた豊かで張りのある彼女の乳房の先端に舌を這わせた。「あっ……! ああ……っ!」 胸を揉まれながら乳首に吸いつかれると、一年前に付き合っていた頃よりも強い快感に襲われて、ナディアは甲高く喘いだ。股間の自分のクリトリスも、胸を愛されただけでピンと勃ってしまう。 ゼウスはナディアの体を支えるように抱きしめて胸を舐めつつ、彼女の裸身を守る最後の砦になったショーツに指を引っかけて下ろしていく。  クロッチの大部分を愛液で湿らせる下着が床にポトリと落ち、顔を出した淫芽をゼウスの指で可愛がられると、そこからゾクゾクっと快感が走り抜けて腰が揺れ、膝から崩れ落ちそうになってしまうが、ゼウスが支えてくれたので持ちこたえた。 ゼウスはクリトリスから指は離したが、今度は代わりに愛液でびちょびちょの秘裂を優しい指遣いで擦り始めた。 ナディアは撫でるだけではなくて、中に指を挿入して激しく掻き回してほしいと思ったし、いっそのこと彼の服の中で張り詰めている凶器を取り出して思いっきり突いてほしいと思ったが、ゼウスは前戯のつもりなのか全然中には触れてくれない。「ゼウスも脱いで…… 恥ずかしい……」 喘ぎの間でそう懇願すると、ゼウスはこんな時でも清涼感漂う品行方正な微笑をこちらに向けながらうなずいた。ナディアは綺麗で大好きなゼウスの笑顔にぼーっと見とれてしまう。 ゼウスは上半身から脱ぎ始めた。相変わらず引き締
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7 匂い酔い

「ぜうしゅ」 ゼウスはナディアを浴室に引き込んだはいいものの、彼女は頬を上気させ、とろんとした目つきをしていて、おまけにいつかのように幼子のような響きでゼウスに呼びかけてきたので、まるで酔っ払いだと思った。「ぜうしゅー、しゅきしゅきー、だいてー」 やはり舌足らずな口調のまま、ナディアがゼウスに抱きついてきた。 ゼウスが、甘えたように首に腕を回してくるナディアを抱きしめ返すと、女性的な美しいくびれを持つ腰の形や、滑らかな肌触りを感じ、何より自分の胸に彼女の二つの膨らみがグッと当たっていて、先程ほども挟まれた心地よすぎる感覚を思い出してしまい、再び下腹部に血がたぎってくる。「……酒でも飲んだの?」「えへへー せーえきのんじゃったー」(駄目だ。知能指数が下がっている) なぜかナディアの様子がおかしくなっているが、ナディアのすべてを受け入れる覚悟のゼウスは、おかしなナディアを浴室の椅子に座らせて、石鹸を泡立てて彼女の体を洗い始めた。 石鹸のついたスポンジでナディアの胸を洗うと、ナディアの大きくて美しくて張りのある二つのおっぱいが、泡にまみれながらプルプルと揺れていた。 ゼウスの視線は、どうしたってナディアの蠱惑的なおっぱいに釘付けになってしまう。さっきのようにそれで挟んでほしくなってしまい、ゼウスの雄がまたググッと硬度を増した。 このままでは床に押し倒して風呂場での初体験になってしまうと思ったゼウスは、パパパパッと手早くナディアの体を洗い終えて彼女をお湯の中に入れると、ゼウス自身はナディアに背を向けて浴室椅子に座り、彼女の魅力的すぎる裸身を視界に入れないようにした。「先に出てるね」「ゼ、ゼウス…… 行かないで……」 ゼウスはシャワーで泡を流し、ナディアと共に浴槽には入らずに、先に寝室で彼女を待っていようと思ったが、間延びしていない悲しそうな声が聞こえてきて、ハッと後ろを振り返った。 体を洗っている最中の先ほどのナディアは、くすぐったそうにしながらもほがらかで楽しそうにしていたのに、目前にいるナディアは、今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ていた。 ******『駄目だよ』(はりゃ? 何が駄目なんだっけ?) ナディアが正気に戻った時には、浴槽に張られたお湯の中に入っていて、体を温めている最中だった。 目前には、浴室に座ってこちらに背を向
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8 ずっと一緒に生きていきたい

 ゼウスから漂う芳しい匂いに、発情した雄の獣のような匂いが混ざっていた。 こちらに情欲混じりの視線を向けてくる濡れ髪のゼウスが色っぽくて、ナディアはぽーっとなりながらゼウスだけを見つめた。「うん、抱いて…… 嬉しい…… あっ…… あん……」  ゼウスはナディアの脚を開くと、蜜を垂らしている花弁にキスした。秘裂を舐め上げて舌を挿入し、中をチロチロと責められながら指でクリトリスをいじられると、快感が迫ってきてナディアの腰がガクガクと揺れた。 ゼウスはあふれてきた蜜を舐め取ってからクリに吸いつくと、膣内に挿し込んだ指を折り曲げて巧みに動かし、知り尽くしているナディアの良い所を性急に追い立てた。「あっ、あぁっ! あぁぁ~~っ!」 ナディアは声を荒げながらすぐに達した。絶頂の前後で吹き出していた潮は、ゼウスが口で受け止めて飲み込んでいた。「ナディア、君は俺の唯一無二だよ」 ゼウスがペニスをナディアの体の中心部に当ててきて、挿入の体勢を取りながらそう声をかけてくれた。 人間には「番」というものはないけれど、ゼウスにとってはナディアは番のようなものだからと、そう伝えたかったのだろうと思う。「挿れるよ」 ナディアはコクコクとうなずいた。 出会ってから約一年半。紆余曲折があって、ゼウスとの別れを悲しく思って泣いた時もあったが、ようやく最愛の人と結ばれるのかと思えば、胸に迫るものがあって、ナディアは喜びの涙を流した。 ぬかるんだ膣内にゼウスの熱杭が入ってくる。 圧迫感はすごいが痛みはそれほど感じない。ナディアの性器は番のゼウスの男根を喜ぶように受け入れて、まるで奥へ奥へといざなうようだった。「ううっ…… 持ってかれそう…… すごい」 からみつくナディアの膣肉の感覚が気持ちいいようで、ゼウスは今にも昇天しそうな艶っぽい声を出している。 ヒクつき蠢くナディアの柔らかくて温かなヒダの感触が、童貞のゼウスには脳天を突き上げるほどに心地よいようで、脱衣室で二回出していなかったら、すぐにでも白濁液を放出していたかもしれない。 ゼウスは慎重な動きでゆっくり奥へと到達した後、苦しそうに喘ぎながら涙を流すナディアの両手に自分の手を合わせて握り、膣肉の感触を味わいながら引き抜いて、抽送を始めた。 パチュ、パチュ、パン、パンと肌と肌がぶつかる音を立てながら、切ない表
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9 ラスボス(?)来たる

 素晴らしき初体験を終えた、その翌日―― ゼウスと共に、スヤスヤと主寝室で昼近くまで眠りこけていたナディアは、マグノリアの精神感応の声を聞いて、にわかに意識を覚醒させた。『二人とも、起きて。大変、ラスボスが来ちゃったわ』「ラスボス……?」 ナディアは寝ぼけ眼を手でこすりながらつぶやいた。 隣のゼウスも、「来た? 誰が?」と言ってはいたが、まぶたを開けたばかりのようで、未だに夢うつつといった状態だった。『ジュリアスよ』 二人はベッドから飛び起きた。 昨夜たくさん愛し合った二人だが、裸ではなくて寝衣は着ていた。 昨夜は入浴後にまたムラムラしてきて、ゼウス自身が復活してきたこともあり、就寝直前にも中に精を一度受けている。 しかしこの家は高い山の上にあるために夜になるとそれなりに寒く、事後は家に元々置かれていたモコモコな寝衣を着込んで眠った。 二人は最初から避妊をしなかった。ゼウスは「子供が獣人でもいい」と言っていたし、ナディアも、「本当は子供が大好きだから産みたい」と打ち明けて、「出来ているかもしれないね」とお互いにナディアの腹を撫でながら微笑み合った。「でもしばらくは二人きりでもいいかもね」なんて話もしつつ、ナディアは身に余る幸せをひしひしと感じながら眠りに就いた。 ところが、そんな幸せな気持ちもジュリアスの登場で一瞬で吹き飛び、早くも現実と戦わねばならない時が来たか、とナディアは気を引きしめた。『ジュリアスは一階のリビングよ。こちらを攻撃するつもりはないようだけど、ジュリアスは「番解消の魔法」を唯一使える魔法使いだから、一応気をつけて』 獣人の番の絆を壊すことができるというその闇魔法は、現在ジュリアスしか使えないらしい。「ナディアはこの部屋に残って」 ジュリアスが自分たちを無理矢理別れさせる懸念があると思ったらしきゼウスは、一人だけでジュリアスに会いに行くと言った。 ナディアも少し不安に思ったが、『ジュリアスは私の意志を完全に無視するようなことはしないのでは?』という、肌感覚ではあるが、ジュリアスへの妙な信頼感は持っていた。 ジュリアスが「番解消の魔法」を本当に使うつもりならば、リビングで待たずにすぐにここにやって来そうだし、マグノリアの存在があるから機をうかがっている可能性はあるが、首都にいた頃だっ
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10 妙案

 マグノリアに促されて、ナディアとゼウスは彼女の隣に腰を下ろす。向かい側のソファに座るジュリアスとは自然と相対する形になった。『銃騎士を辞める』とナディアに宣言して現在は私服姿であるゼウスと、銃騎士隊の隊服を着ているジュリアスの姿は、どこか対照的だった。 緊張感漂う空気感の中、一番初めに口を開いたのはジュリアスだった。「エヴァンズ、ノエから俺たち一家の秘密は聞いているよね」 話しかけられたゼウスはうなずいた。「……はい」「ノエからも言われたとは思うけど、関係者以外にはそのことは他言無用でお願いしたい」「もちろんです。ノエルの正体が暴かれれば姉の命はありませんから。俺は姉とノエルには本当に幸せになってほしいと思っているんです」 ジュリアスはゼウスの答えを聞いてゆっくりとうなずいた。「俺は今回、君たちの協力者になろうと思ってここに来た。 エヴァンズが『悪魔の花婿』だと断定されてしまえば、当然、身内であるノエたち夫婦にも何か獣人と繋がりがあるのではないかと、疑いの目が向けられるだろうし、そうなると、何かの拍子に獣人だと正体がばれてしまう危険性が高まる。だから、君たちを手助けすることで、それを阻止したい意図はある。 ただ、俺がここに来た一番の理由は、弟のシリウスに、『ナディアたちを助けてやってほしい』と、頼まれたからだ」 シリウスの名を聞いたナディアは、処刑場で最後に見た意識のないシリウスの姿を頭に思い浮かべた。『シリウスは大丈夫か?』なんて、口にする資格は自分にはないように思えて、ナディアは寸前まで出かけた言葉を呑み込んだ。「シーは、自分と同じように『番の呪い』にかかったナディアを苦しめたくないと言っていて、ナディアの幸せを一番に望み、自分は身を引く決意を固めてしまった」「『番の呪い』……?」 知らない単語が出てきて首かし傾げたゼウスに、マグノリアが『番の呪い』についての説明をしていた。「……シリウスの『呪い』は、解けたの?」 ゼウスとマグノリアが会話をしている間、ナディアはジュリアスにたずねた。 ジュリアスは悲しそうな顔で首を横に振った。『本物』だとは聞いていたから、難しいのだろう。 「おそらく自然には解けないと思うから、魔法で何とかするよ。『番の呪い』を解くような魔法と、それから、記憶を消して、君のことを忘れる魔法も同時に使
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11 兄のわがまま

「兄さん……」 隠れ家での話し合いを終え、実家であるブラッドレイ家に戻ってきたジュリアスを、青白い顔のままで涙を流し、生気もないシリウスが出迎えた。 シリウスのそばには、心配したセシルがぴったりと付き添っている。 セシルはシリウスにずっと付きっきりで、シリウスが魔法でナディアとゼウスのところへ行ったり、彼らの様子を『視て』しまって心が壊れないようにと、シリウスの魔法の発動を妨害しているようだった。「彼らのこれからの行き先が決まった。ナディアの故郷の里へ行って、二人で暮らすそうだ」「そう……」 シリウスは返事をしつつも、最愛の女と他の男が番になった現状に改めて直面し、ふらついて倒れそうになっていた。 セシルが支えていて大丈夫だったが、シリウスはそのままフッと気絶して、心臓も呼吸も止まってしまいそうに思える。(このままではシーが死んでしまう) 番との別れと言っても、死別とはまた違う。自分の番が他の男と身も心も愛し合って結ばれているということは、獣人にとっては耐え難いことだ。 シリウスは、ナディアが『番の呪い』にかかってから、ずっと泣き通しだった。 弟の苦しむ様子を見ていられなくて、ジュリアスは闇魔法「番解消の魔法」をシリウスに使うことを提案した。 本当は、もしもシリウスが自分ではなくてナディアに「番解消の魔法」を使って欲しいと請えば、ジュリアスは誰を不幸にしようとも断行しただろうが、シリウスがそれを望まなかった。 過去の事象を知っているセシルが、「『番解消の魔法』だけではなくて、『記憶改変の魔法』も同時に使って相手の記憶も消さなければ、再び『番の呪い』にかかって苦しむ」と指摘したことで、二つの魔法をシリウスに使うことが決まった。 しかし、「せめてナディアの幸せを見届けてからにしたい」というシリウスの強い希望があって、ずっと苦しみを取ってやれないままだった。 けれど、見届けたいというのは口実で、本当はナディアへの愛を失くすことが嫌なのだろうと思った。 ジュリアスはシリウスに近づき、涙を流し続けているシリウスを抱きしめた。「シー、もういいだろう。俺はこれ以上お前が苦しんでいるのを見ていたくない」「うん、兄さん…… ごめんね…… わかった……」 ****** シリウスの私室にいるのは、ジュリアスとシリウスと、禁断魔法「記憶改変の魔法」
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12 ナディアの計画

 その後も何度かジュリアスが隠れ家に来てくれて、「ゼウスが獣人の里の住人になる」という大筋は変わらないまま、二人が里に移住する計画が練られた。 まずはナディアが人間の『メリッサ』であると証明(嘘の)をしなければならず、早急に首都に戻るのだろうと思っていたが、そのあたりはブラッドレイ家の兄弟たちが、ゼウス役とナディア役に分かれて魔法で姿を替え、サクッと証明してきたそうで、ナディアたちが慌てて首都に行かなくても大丈夫だった。 それから、ナディアが「人間」だと証明されたことで、あの新聞記者は大層悔しがっていたそうだ。 その後すぐ、ゼウスは三番隊の任務として、首都からの地方への赴任を命じられた。 そして婚約者の「メリッサ」と共に、馬車に乗り赴任地に向かっていた途中で、獣人の襲撃に遭って二人とも殺された――ということにした。 遺体を魔法で作り出すなどしてかなり血生臭い案件になってしまったが、無傷で助かった御者の証言もあるので、死の偽装はバッチリだ。 首都ではゼウスと、身寄りのなかった「メリッサ」の葬儀が、アテナたち夫妻の手によって執り行われた。 若く美しい銃騎士の「死」に、葬儀には嘆き悲しむ女性の姿が数多くあったそうだ。 多くの人々に嘘をついてしまったのは心苦しいが、しかし、ゼウスを狙っていたかもしれない女性たちが、これで諦めてくれたんじゃないかと思えば、ホッとする部分もある。 しかしゼウスを死者扱いすることに、作戦を実行した後になってもナディアは葛藤があった。 他の方法はないのかと話し合ったが、「首都に残されるノエたち夫婦のことを守るためには、こうしておくしかない」というジュリアスの言葉を受けて、ナディアが折れた流れだ。 だからナディアは、「里に行ってからは『ゼウス』の名前を変えた方がいい」というジュリアスの提案には、最後まで折れなかった。 この国では「ゼウス」という名は、神話に出てくるとても強い神様にちなんだ名前だそうで、強い男になるようにという願いを込めて、男の子によく名付けられるありふれた名前だ。 人間社会では死んだことにされて、その上で名前まで変わってしまったら、ゼウスの心理的負担が多くなるんじゃないかと考えたナディアは、改名しても構わないと言っていたゼウスの意見を跳ね除け、これからもゼウスはゼウスの名前で生きていくという
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13 俺のすべては君のもの

「ゼ、ゼウス! ゼウスが生きてた!」 里に来て季節が巡り春になった頃、ゼウスはなぜか獣人の里の内部で、アーヴァインと再会した。 ゼウスは、シドが死んだあの日に首都を出たきり、以降はナディアの故郷に来るまでずっと隠れ家に住んでいたので、アーヴァインと会う機会もなかった。「死の偽装」以降は話をしに行くこともためらわれてしまい、このまま一生会わずに終わってしまうかと思いきや、アーヴァインは学校用品の納品のために、キャンベル伯爵家の紹介ではるばる首都からやって来ていて、偶然にもゼウスと出会えた瞬間に号泣していた。 友情にもろいアーヴァインは、メリッサことナディアも実は生きていて、ゼウスと一緒に暮らしていると知ると、「本当によかったなぁ」と言って、やっぱり泣いてくれた。「そんなイケメンさらしてたらすぐに『ゼウス様』ってばれちゃうだろ! この仮面タダでやるから、よそ者が来た時は必ずつけとけ! 絶対に死ぬなよ、生き延びろ!」 ゼウスはアーヴァインから、顔の全面を覆う仮面、顔の下半分を覆う仮面、目元だけを隠して覆う仮面、の三種類を譲り受けた。 貴族が仮面舞踏会にでもつけていそうな趣味のよい品だったので、これからはアーヴァインの言う通り、商人や里からすぐ帰るよそ者がいる場面では、素顔を隠していこうと思った。「今回はたまたま縁があって訪れたけど、たぶんこの先も、何かの折には商品を売りつけにここまで来るよ」 アーヴァインはそう言って笑っていて、彼とは再会を誓い合って別れた。 里の生活は、獣人たちに因縁をつけられることを除けば、それなりに楽しい。 当初、獣人社会の中に入っていくことに不安はあったが、いざ暮らしてみれば、ナディアの異母弟リュージュはどことなく気質が異母姉に似ているようで、一緒にいると清々しい気持ちになれたし、姉に顔つきが似ている、ナディアの義姉ヴィクトリアと話していると、まるで家族といるような安堵感があり、里の居心地は想定していたほど悪くない。 姉のアテナとはノエルの魔法で手紙のやり取りをしている。 極たまにこっそりと直接会うこともあったが、姉が無事に出産を果たした後は、育児にてんてこ舞いで時間が取れないらしく、やり取りはもっぱら手紙ばかりだ。 それからノエルは、あの処刑場の出来事の後に色々と考えることがあったらしく、モデル
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《シリウスアナザーエンド 生と死と》1 未来を知る男 1

 ――必ず、蘇らせてみせる…… シリウスがナディアの遺体に愛撫を続けながら、魔力が回復する時を待っていると、頭の中に視界に入るのとは別の光景が浮かび始めた。『未来視』だ。 それは、現在ゼウスを殺そうと氷魔法を展開させているヴィクトリアが、「三人の男とそれぞれ別々に番になって幸せそうに生活している」という、パターンが三つある『未来視』だった。 やはり未来視は「可能性」を示唆するもののようで、一つだけではなくて複数出てくることがあるようだ。(レインとリュージュはともかく、姫さんがアルベールを受け入れる可能性があるとは驚きだな) シリウスは獣人の里に潜入していたので、ヴィクトリアの幼馴染アルベールのことも知っている。向こうは知らないが。 シリウスは魔力が回復してきたことで意図せず『未来視』を発動させたが、それまでシリウスが視た『未来視』は、すべて、人の生死に関わる重要なものばかりだった。 幸せな未来というのはそれはそれでよいが、人の生き死にと比べたら、それほど重要なものではないようにも思えたが……(もしくは、姫さんが誰と番になるのかが、この先の未来にとっては特別に重要なことなのかもしれない……) 現在、父アークとレインは妙な動きをし始めていた。アークの考えが読めてしまうシリウスは、アークがレインを使ってヴィクトリアを殺そうとしていると気づいていた。 現在のヴィクトリアはレインを愛している。それなのにナディアと同じように好きな男に命を脅かされるのかと思うと、悲しくなったが、三つも『未来視』がある様子では、ヴィクトリアはやはり処刑場では死なないのだろうとシリウスは思った。 ナディアの「死」の衝撃から落ち着きを取り戻したシリウスは、ヴィクトリアの攻撃を防ぐノエルのことも気がかりだった。 正直ゼウスはどうでもいいが、可愛い可愛い弟のノエルが死ぬのは絶対に嫌なので、彼らの命が脅かされる場面では介入するつもりでいたが、危機的な場面はあったものの、今のところノエルは持ちこたえられていた。 シリウスの魔力が段々と満ちて来ると、やがて、ノエルが妻のアテナと、ノエルの小さい頃にそっくりな幼い子供と幸せそうに過ごしている『未来視』が視えた。 ノエルに関して視えた未来はその一つだけだ。ノエルもヴィクトリアと同様にここでは死なないと確信したシリウスは、魔力
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2 未来を知る男 2

 大暴れするオニキスによって、レインと、そして厄介な存在だった父アークが気絶した。同時に、アークによって身体強化の魔法をかけられていた銃騎士たちも全員昏倒した。 既に魔力の溜まっていたシリウスは、アークに邪魔されないこの好機に、「死者蘇生の魔法」を発動させ始めた。 すべては予定通りだ。 アルベールたちが現れたことで未来の方向性が定まり、あとは『未来視』で視た通りに、「死者蘇生の魔法」が成功するように動けばいいだけだ。 最後にシリウスが死ぬかもしれないが、それはまだ確定していないし、ナディアが生き返る可能性があるのなら、やってみる価値はあるはずだ。「過去改変の魔法」を使う方法もあるが、「過去改変の魔法」は術者が死ぬと魔法の効力が失われるという大きな問題点があり、「過去改変の魔法」を使うのは最終手段だと思っている。 やがて「死者蘇生の魔法」の発動によって、死した魂の通り道である「冥界の門」が空に出現した。 両開きの扉の上部には縦長の虹彩を持つ目玉があり、扉の周囲には無数の骸骨が磔にされている。「冥界の門」はあの世とこの世を繋ぐ冥界の入口だ。普段は見えないその扉を、シリウスは魔法の力で顕現させた。 門の扉は常に閉じていているが、肉体を持たない死者の魂だけは閉じた状態の扉を通過できる。しかし一度中に入ればこちら側には戻れないので、魂をこの世に呼び戻すためには門を開ける必要がある。「死者蘇生の魔法」とは、「冥界の門」を守る「門番」と取り引きをして扉を開けてもらい、蘇らせたい魂をこちら側に持ってきてもらう魔法だ。「冥界の門」の鍵は内側――あの世側――だけにあり、鍵を扱うには魔力が要るため、魂レベルで魔力を持つ死者が代々門番を務めている。 門番の交代は魂同士の交渉によるが、状況によってはあまりにも長く「冥界の門」に囚われる事態も発生するため、門番になることを了承する魂も少ない。「門番との取り引き」とは、「死者蘇生の魔法」を使用した術者の寿命が尽きて死者となった時に、次の門番になることを確約することだ。 処刑場にいる者たちが「冥界の門」に気づいてざわつき始めた。シリウスはナディアを抱えたまま「冥界の門」を見つめて立ち上がった。『シー兄さん! すぐに「死者蘇生の魔法」を解除してください!』 地面に座り込んて項垂れ、号泣しているゼ
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