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3 蘇生

 準備が整ったと判断したシリウスは、「冥界の門」を開けるように門番に願い出た。 扉が開いていく。 予想通り、黒い靄が真っ暗な扉の向こうからこちら側に侵蝕してきた。 けれど靄は空中で光り輝くある一定の場所以上には広がらない。ジュリアスが放つ高度な光浄化魔法によって抑えられているからだ。(ナディアの魂を……) シリウスは魔力を通してナディアのイメージを門番に送っていた。 こちら側の者が生き返らせる魂を探そうとして門の中に入っても、即死するだけなので、あちら側の者である門番に探してもらい、「冥界の門」の近くまで連れてきてもらうしかない。「ぐっ…… うぅっ……」 いきなり額に激痛が走って、シリウスはナディアの亡骸を抱えたままその場に膝をついた。額を片手で抑えたその指の先の隙間から、ポタポタと血がしたたり落ちてくる。「シー!」「「シー兄さん!」」 ジュリアスとノエルとカイン――魔力切れによる気絶と眠りの魔法で目を覚まさないセシル以外のこの場にいるブラッドレイ兄弟たち――が声を上げた。「心配ない…… 予定通りだ……」 シリウスが片手を離した額には、「冥界の門」の上部にある巨大な目玉と同じ、縦長の虹彩をもつ「第三の眼」が現れていた。 その眼こそが、次代の門番である証だ。「第三の眼」自体は異形であることを表しているようで不気味だか、眼を閉じてしまえば皮膚に薄い線が一本入っているように見えるだけで、それほど目立たないし、どうしても気になるなら魔法で隠すこともできるから、見た目が多少変わるくらいはシリウスにとっては些細なことだった。「第三の眼」が出現した激痛は一時のみだった。シリウスはこの世由来のものではない特別な眼で、「冥界の門」の入口付近を見つめた。「ナディア……」 シリウスはその姿を見て涙ぐんだ。「第三の眼」か、もしくは「真眼」でなければわからないだろうが、幽霊のように全身が透き通って見えるナディアの魂が、黒い靄の中から浮かび上がるようにして現れた。 シリウスは魔法で「第三の眼」が視ている風景をそのままジュリアスに視せて、ナディアの魂の通り道だけ光魔法の壁を解いてもらった。 ふわふわと漂うようにこちらに向かって降りてくるナディアの姿は、天使そのものだった。『シリウス……』 ナディアの魂がシリウスに呼びかけている声も聞こえた。「ナデ
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4 俺は君を殺せない

 歓喜するシリウスはしかし、すぐに真顔になった。「駄目だったか……」 シリウスは「第三の眼」を通して、門の内側――あの世側――の揉め事がこの世側まで波及してきたことを知った。 死んでからまだそれほど時間が経っていなかったせいか、「冥界の門」近くにいたシドの魂は、門番に因縁をふっかけていて、彼らの間で戦いが始まっていた。(死んでも厄介なオヤジだな全く!) 幽体になっても鬼のように強すぎるシドの方が優勢で、門番は応戦しながらシリウスの「死者蘇生の魔法」に応えて、ナディアの魂を門の外まて出してくれたが、門番はかなり追い詰められていて、とうとう彼自身も「冥界の門」の外側――こちら側――まで出てきてしまった。 現れた門番は長い黒髪をなびかせた二十代半ばほどの男で、額にシリウスと同じく「第三の眼」を宿し、手には先端が鍵状になった長い杖を持っていた。 その鍵状の杖は、「冥界の門」を開け締めするのに必要な唯一のアイテムであり、常に門番が管理している。「第三の眼」か「真眼」でしかわからない光景を、シリウスは魔法でジュリアスの脳内にも送った。ジュリアスはシリウスの意を汲み、門番だけを現世に引き戻すように光魔法の壁を一部崩した。 シドの魂だけはこちら側には絶対に戻してはいけない。「冥界の門」を逆走した魂が受胎直後の女の胎に宿ると、その魂は新しい肉体を得てこの世に再び誕生する――つまり、正規の道程をたどらずに「転生」してしまうのだ。 その際に前世の記憶を忘れていないことが多く、やっとシドを処刑できたにも関わらず、下手をしたら残虐で残忍な資質を持った獣人王シドが再びこの世に誕生しかねない。 痛めつけられた門番は幽体が薄くなっていてかなり弱っていた。この状態でシドのいるあの世側に行かせたら、魂が消滅してしまうかもしれない。 門番は「死者蘇生の魔法」に応えていなければ、劣勢になることもなかっただろう。 シリウスはナディアの蘇りに際し、シドの攻撃を受けながらも身を挺して協力してくれた門番を、守りたい気持ちがあった。「冥界の門」の向こう側へ行って門の鍵をかけるのは、「死者蘇生の魔法」を発動させた張本人であるシリウスしかいない。(結局、『未来視』での危惧が現実になったな……) シリウスは「賭け」に負けた。 門番がシドに敗北しなければ、誰かが中に入って「冥界の門」を
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5 『未来視』の盲点

 シリウスは覚悟を決めた。「ごめんね、ナディア……」(君を残していくことがとても心苦しいけど、向こうで待ってるから……) シリウスは門番の鍵を手に入れるために動き出した。「わ、わあっ!」 シリウスが全速力で動き出したのと同時に、驚きの声を上げたのは弟のカインだ。 ジュリアスは婚約者フィオナの腰をずっと抱いたままだし、「第三の眼」から視た光景を送っていなかったノエルは、この時避難誘導のために処刑場の外へ出ている。 必然的に十歳の弟カインにナディアの身を預けることになり、カインはシリウスの転移魔法でいきなりナディアの体が目前に現れたことに驚きながらも、兄の代わりにナディアを受け止めていた。「シー!」 シリウスの考えに気づいたジュリアスが顔を青ざめさせて名を叫んでいるが、シリウスが『未来視』で視た通り、この咄嗟の場面で兄は動けずにいる。 転移魔法は同時に発動できないため、ナディアをカインに託すために魔法を使ったシリウスは、鍵を持つ門番の元へは持ち前の身体能力で移動していた。 しかし、シリウスが手を伸ばして鍵――「第三の眼」を持つシリウスは常人では触れられない鍵に触れることができる――を掴む直前、別の者が魔法の力で門番の手から鍵を浮かせてシリウスから遠ざけ、高速で自分の元まで引き寄せた。 鍵が飛んで行った先を見たシリウスは驚く。「父さん!」 オニキスに気絶させられた後、そのオニキスによって処刑場外に運び出されていたはずの父アークが、広場の一角に立っていた。 アークは、魔力切れで気絶したままのマグノリアを小脇に抱えていた。 マグノリアはノエルによってアテナの家に預けられていたが、アークが攫ってきたらしい。 現存する魔法使いの中で一番の手練れであるアークは、触れている間だけではあるが、対象の魔法使いの力を行使できるという特異な魔法を会得していた。 アークはマグノリアの「真眼」の能力を通して、「第三の眼」を持つシリウスと同じものが視えているようで、こちら側にやってきた門番が持つ鍵をシリウスが手に入れるのを、阻止してきた。 シリウスはアークの思惑を悟って青くなった。「まさか! 待って父さん! 父さん!」 シリウスを見つめる父は、マグノリアから手を放してドサリとその場に彼女を落とすと、いつも通りの無表情で、何も言わないまま、鍵と共に転移魔法
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6 囲い込まれてた女 1

 ナディアが目を覚ました時、部屋の中は薄暗くなり始めていた。カーテンの隙間からわかる日暮れ時独特の黄昏色の空模様を見て、今は夕方から夜に変わろうとしている時間帯なのだろうと思った。 ナディアはベッドに寝ていたが、彼女の隣にはナディアの手を握ったまま眠っているシリウスがいた。 ナディアはシリウスがそばにいることに安心感を覚え、彼の手を握り返した。 ここはブラッドレイ家のシリウスの私室のようだと気づいたところで、ナディアは眠る前の光景をハッと思い出した。 ナディアはベッドから上体を起こし、シリウスと繋いでいる手とは反対側の手で胸の付近に触れてみたが、痛みもないし血も出ていなかった。服の中に手を突っ込んで直に肌に触ってみても、傷痕らしきものもなかった。 自分は処刑場でゼウスに撃たれてしまったが、きっとシリウスが助けてくれたのだろうと思った。 ナディアは処刑場で倒れる直前に、ゼウスの泣きそうな表情を見ている。そこには自分に対する殺意は微塵もなかった。「ゼウスはきっと何かの間違いで発砲してしまっただけ」と思ったナディアに、ゼウスを恨む気持ちはなかった。 ナディアが身じろぎしたことでシリウスも起きたらしく、彼がまぶたを開けた。 ナディアは寝起きでさえも惚れ惚れするほどに整いすぎているシリウスの美麗な顔を見つめた。「ナディアちゃん……」 シリウスはいつも明るくて陽気な男だが、なぜか思い詰めて塞ぎ込んでいるように見えたので、ナディアは急に心配になった。 シリウスがあまりにも深刻そうに見えたので、寝起きだからという理由で気分が落ちてるわけでもなさそうだった。「シリウス…… どうしたの……?」 シリウスもナディアと同様にベッドの上で上体を起こすと、ナディアの問いかけには何も答えずに、無言のままでギューッと抱きついてきた。「ナディアちゃんが生きてる……」 シリウスはナディアをベッドに押し倒し、彼女の心臓の音を聞きながら、そんなことを言っている。「うん、生きてるよ」 ナディアもシリウスの手触りのよい白金髪を撫でながら、そう返した。「ナディアちゃん、俺のこと好き?」「うん、好き」「本当に?」「大好きよ」 ナディアがそう答えた途端、キスが降ってきた。急すぎてびっくりしたが、シリウスの自分への愛情を感じられて嬉しくなった。 ちゅぷちゅぷと、自分たち
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7 囲い込まれてた女 2

『勝手なことしてごめんね、シー兄……』 ――シリウスは戯れのつもりなのか、それとも愛液をペニスにまとわせるつもりだったのか、挿入するのではなくて、ナディアの割れ目に巨根を擦りつけてきた。「あっ、あんっ…… らめっ…… いっちゃうぅ……」 敏感になっているクリトリスを擦り立てられると、それだけでまた果ててしまいそうになって、ナディアは舌足らずな口調で喘いだ。 そんなナディアを愛欲混じりの優しい瞳でシリウスが見つめているが、なぜだかナディアはそこで少し違和感を覚えた。 優しい瞳に見守られながらクリトリスを責められて達するのは、ナディアがゼウスによくされていた行為だ。(ゼウス……) 思い出して悲しくなってしまったのは、心の中にはまだゼウスへの思いがあるからだと思った。 ゼウスへの未練を残したままシリウスのプロポーズを受け入れたことで、ゼウスに対する恋心の残滓のようなモヤモヤは、解消されることなく今でも心の中に留まっている。『ナディアちゃん、結婚してください。俺だけ見てください。必ず幸せにします』『――はい、結婚します』 アンバー公爵邸でお茶をしていた時、ヴィネットの話がまだ途中という状況で、部屋にシリウスが現れた。 号泣しながらナディアにすがりついて、なりふり構わず愛を叫ぶシリウスの姿に、ナディアの心は強く動かされた。 前日に牢屋でゼウスに拒絶されて傷ついていた影響もあり、ナディアはシリウスの愛とプロポーズを受け入れて、シリウスと恋人になった。 ナディアはゼウスと付き合っていた時、名前や正体すらも偽って、その結果、ゼウスを傷つけてしまった。 ゼウスを大切にすることができなかった。 だから今度こそ、ナディアはシリウスとの愛を大切にしていこうと思っている。シリウスとの愛を死ぬまで貫くつもりだ。「ナディア」 イってしまって呼吸を乱していると、真剣な顔をしたシリウスが、仰向けで脱力しているナディアの上に覆いかぶさるような体勢で、顔を覗き込んてきた。「……ごめんね」『なんで謝るんだろう?』とナディアが首をひねりかけたところで、文字通り「身を引き裂く痛み」が体の中心部を襲った。「い…… いたっ……」 反射的に痛みにうめく声しか出なかった。ナディアの無防備な性器の中に、シリウスが巨根を
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8 ブラッドレイ兄弟、本気出す ※少し時間が戻っています

 空にあった「冥界の門」が消えたことに気づいたノエルは、急ぎ広場の中へ戻った。 最初に、「父を殺した」と叫びながら号泣する次兄シリウスと、同じく泣きながらシリウスを抱きしめている長兄ジュリアスの姿が視界に入った。 離れた場所にはアテナの家に預けたはずのマグノリアが気絶したまま倒れていて、別の方向にいるカインは、腕にナディア――生きているナディア――を抱えていて、とても不安そうにしながら、兄たちと現れたノエルを交互に見ていた。 ノエルはジュリアスの元へ走り、何が起こったのかをたずね、衝撃を受けた。 父アークを助けたいと思ったノエルは、強い『過去視』の力を持つセシルならば、この状況を挽回できる術を、「過去の事象」から何か知らないかと思い、セシルを起こすために残っていた魔力を半分ほどセシルに譲渡した。 シリウスがセシルに「眠りの魔法」をかけていたようなのでそれも解いてもらい、同時に、「真眼」持ちのマグノリアも目覚めさせて協力を仰ごうと、彼女の服に仕込まれていた札を使ってマグノリアの魔力を回復させた。 目覚めたセシルはアークの死を知り、見てわかるほどにうろたえ、愕然としていた。 セシルいわく、「父さんを蘇らせるには、消滅してしまった肉体の代わりになる受け皿を用意することと、父さんの魂を『あの世』から持ってくること」が必要らしい。 肉体を一から作り出すのもまたとんでもない禁断魔法だが、受け皿は短い間なら人形でも何でもよいらしいので、それは一旦置いておいて、兄二人はアークの魂を取り戻すべく、再度「死者蘇生の魔法」を発動させ始めた。 けれど、「あの世」で門番になっているのだろうアークが妨害しているらしく、「死者蘇生の魔法」は全く発動せず、成す術もない兄弟たちは一度解散となり、ノエルは憔悴しながらアテナのいる自宅に帰ってきた。 アテナに処刑場での出来事を話したのちに、失った魔力を回復させるべくノエルが休んでいると、「夫と娘が心配だから」と、目覚めた後に処刑場から離れていたマグノリアが、突然ノエルとアテナの前に転移魔法で現れた。「もう、完全に手遅れなんだけどね……」 時刻は夕方で、仕事上がりで帰宅した家政婦マチルダの代わりに、アテナが淹れてくれたお茶を前にしながら、マグノリアが語り出した。 マグノリアが「真眼」の能力で知り得た内容を聞き終えたノエ
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9 転生前 1

 元「門番」の男は焦っていた。 こちらの世界では存在してはならない彼は、「あの世」に引っ張られる力を常に感じていた。 しかし「冥界の門」を通ってそれまでいた世界に戻れば、自分はあの男に滅ぼされてしまう確信があった。 助かる方法は一つ。 子を授かりそうな――つまり、女の方が排卵日相当であり、かつ、性交をこれから行うか、または既に性交中の――男女を見つけて、新たな別の魂が「あの世」から出現する前に、女の腹に宿って転生するしかない。「次の門番」が彼の代わりに「冥界の門」を閉じて鍵をかけてくれたので、役目は終わった。 彼は自分たちのために残った魔力を使うことにした。「あの世」に引き戻そうとする力に魔力で抵抗しながら、目的地に向かって移動する。「第三の眼」は、鍵の保管を円滑に遂行するために、「あの世」の光景をすべて見渡せる千里眼的な能力があるが、それは「この世」に対しても有効だった。 門番の交代が叶ったので、彼の額にあった「第三の眼」は抜け落ちている。しかし、彼はその直前まで「第三の眼」を通して視ていた、とても大事な娘――ヴィクトリア――の元へと急いだ。 たどり着いた先では、ちょうど金髪の男――アルベール――が、意識のないヴィクトリアを抱えて御者のいない馬車に乗り込もうとしているところだった。 アルベールの局所は服の上からでもわかりすぎるほどにモッコリしている。 元門番もとい、前世がヴィクトリアの実父だった男は、この後ヴィクトリアがどんな目にあってしまうのか、わかりすぎるほどにわかっていた。 本当はアルベールに魔法攻撃をお見舞いして成敗したいところだが、死者である彼の魔法は生者には効かない。効くのは同じ死者や、「あの世」由来の事象に対してのみだ。 彼は歯がゆく思いながらも、ヴィクトリアの腹部から、まるでその場所へ導くような眩く温かな光が放たれているのを見た。 その光は、「もうすぐ新しい命が宿る場所」を示す印のようなものだ。 光は新しい魂が迷わないようにするための道しるべのようなもので、現世の者には見えず、「あの世」の者にしかわからない。 男がヤる気満々なこんな状況でその光が出ているということは、はなはだ遺憾ではあるが、娘はこの意地悪幼馴染に頂かれて孕
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10 転生前 2

 とにかく人がたくさんいる場所に行けば何とかなるだろうと思った元門番の男は、首都がある方向へ向かった。 ところが、彼の予想に反し、シドが暴れ出した情報が独り歩きした結果、「暴れ出したシドによって大量殺戮が始まってる」とか、「シド率いる大勢の獣人たちが現れて首都一部壊滅状態」とか、首都では正しくない情報であふれていて、シドの処刑は既に執行されたにも関わらず、偽情報に踊らされた人々は大混乱に陥っていた。 デマではあっても命の危機が迫る情報によって、逃げようとしたり、家に閉じ篭もって恐怖する人々が大多数で、愛の営みをしている者たちが全く見つからない。(こんな状態で、真っ昼間から悠長にセックスしとる奴らなんて、おるわけないか……) 彼は絶望的な気分に襲われながらフラフラと空中をさまよっていたが、ふと、「あの世」に引っ張られる力とは別方向の力がグッと自分にかかったのを感じて、ハッとその方向を見た。「もうすぐ新しい命が宿る場所」を示す、例の光が発生している場合、魂をそこに引き込む力も同時に発生する。(最中の奴らがおる! 天の導きや!) 彼は歓喜しながら、導かれる方向へと急ぎ向かった。 ******「孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕めえぇぇぇッ……っ!」「あぁっ! あ゙っ! おんぐっ! お゙ん゙っ! ぉんおお゙お゙っ! おゴォっ! ほごぉおおお゙ッっ……!♡」 たどり着いた先では、黒髪に、銀色という珍しい瞳の色をした筋肉質で大柄な男と、二十歳前後ほどの黒髪の女が部屋の中で交わっていた。 が、男は吐精直前の激すぎる突き上げの最中でも女の首を掴んで締めているし、女の方も足先をバタつかせてはいるものの、今にも白目を剥いて気絶しそうなその表情には、隠し切れない恍惚の色が浮かんでいた。 二人は完全に出来上がっているが、いきなりそんなハードプレイ場面に出くわしてしまった元門番の男は、ドン引きしていた。 彼は引っ張られる力に従い、首都の一角にある大豪邸にやって来ていた。商人をしていた前世の記憶を頼りに、そこがアンバー公爵邸であることには気づいたが……(ここ、公爵家? ホンマに公爵家? 凌辱の館とかじゃなくて?) 由緒正しき公爵家の一室で繰り広げられている、殺人現場もかくやという光景には唖然とする
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11 虹

 門番から鍵を奪い、「冥界の門」の内側に入ったアークの視界は、何もない、一面の暗黒に覆われていた。 しかし暗闇に包まれていたのは、一瞬にも満たないようなわずかな時間だけで、あっという間に肉体が侵食されて崩壊し、苦しみも感じずに死んだ後は、一転、周囲からの温かな光を感じた。 肉体が滅び、幽体だけの状態となってまぶたを開ければ、見渡せる限りの地面には草原と花畑が茂り、上を見れば澄んだ青い空がどこまでも広がっていて、彩りに満ちた常春の世界にアークは立っていた。 死者となり冥界の住人になったことで、生きたままでは見えなかったものが見えるようになったようだ。 幽体の彼は死んだ時の年齢ではなくて、大好きすぎる長男ジュリアスの年齢に近い、二十代前半頃の若い容姿に戻っていて、銃騎士隊の隊服を着たままだった。 巨大な「冥界の門」はすぐ近くにあって、自分のそばには鍵もある。 アークは魔法を使って、扉の外に出てしまった「こちら側」由来のものをできる限り中に引き込むと、扉を動かして門を閉じ、鍵を鍵穴に差し込んでガチャリと施錠した。 扉を閉じている最中も、今も、「あちら側」で死んだ魂が次々と扉を通って、「こちら側」へやって来ていた。 死んで「冥界の門」をくぐると、彼らは輪廻の仕組みを思い出すようで、この世界に迷いなく降り立つと、「あの世」の端に位置する「冥界の門」から離れ、先へと進んで行く。 アークもそうだったが、幽体だった時の記憶は幽体になることでしか思い出せないようで、いずれ「この世」に転生すればまた忘れてしまうのだろう。 アークは巨大な「冥界の門」が建つ、苔生した石造りの土台に腰を下ろした。 通りすぎる死者たちがちらちらと彼の持つ門の鍵を見ている。 鍵で門を開き現世に戻れば生き返れる場合もあって、未練を残す者たちに鍵を奪われる可能性もあったが、そもそも魔力がなければこの鍵は扱えない。 それに精神の世界とも呼べる「あの世」では、魔法使いは最強であり、やろうと思えば対象の魂を滅して二度と存在できないようにすることも可能だ。魔法使いを脅して門を開けさせようとする不届き者も、あまりいない。 アークから少し離れたところにはシドの魂がいて、しばらくこちらを凝視していたが、どうやらアークには勝てないと悟ったらしく、他の魂と同様に、奥へ向かう人々に混じり去っていっ
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12 俺の子供を生んでほしい 1

 ヴィクトリア姉様が子供を生んだそうなので、ナディアは番であり、義父アークの喪が明けてから婚姻届を提出して夫にもなったシリウスと共に、かつてお世話になった異母兄ロータスたちの家にお邪魔した。 どうしてこうなったのか、ナディアは死んでいた時があったので経緯はよくわからないが、ヴィクトリアは故郷の里の元住人で幼馴染のアルベールと番になっていた。 二人が番になったと聞いた時は、「なんでリュージュじゃないのーっ!」と、ナディアは驚いて叫んでしまっていた。 アークの葬儀や、人間の「ナディア」として擬態するための様々なことなどが一区切りついた頃に、彼らの元へ向かった時には、それなりにアルベールと幸せそうに暮らしているヴィクトリアがいて、ナディアは心配が杞憂に終わったようだと知って安堵した。 ナディアが故郷にいた頃の記憶では、アルベールは里にいるその他大勢のろくでなし連中と同じく、傲岸不遜で暴力的で意地が悪くて、あまり仲よくしたくない類の男だった。 けれど数年ぶりに再会してみると、「ヴィクトリアは俺のもの」的オーラを振りまきつつ独占欲は垣間見えながらも、アルベールは産後で体調が優れないヴィクトリアを常に気にかけるような優しさを発揮していて、始終笑顔全開のデレッデレな状態にもなっていて、とても幸せそうだった。 正直、こんなによく笑顔を見せる男だっただろうかと、印象はかなり様変わりした。 その後に、ナディアはヴィクトリアが生んだ、彼女によく似た綺麗な顔立ちの赤子と対面した。ヴィクトリア譲りの神秘的な銀の髪も持つ、アンジェと名付けられた生まれたばかりのその女児は、とても小さくて、有り得ないくらい可愛かった。 アンジェ抱っこさせてもらうと、自分の子供でもないのに、ナディアは体の奥から愛しさがこみ上げくるのを自覚した。 アンジェの瞳の色はアルベールと同じ金色で、『二人の愛の結晶なんだなぁ』ということもしみじみと感じた。 ナディアはその後、現在暮らしているブラッドレイ邸に帰宅してから、「私も赤ちゃんが欲しいな……」と思わずつぶやいてしまったが、「じゃあ作ろうか」とシリウスにさらりと言われて、少し戸惑った。「でも、レオもジークもまだ赤ちゃんだし、もう少し先でもいいかな」 番を失った義母のロゼは体調が優れない日もあって、ナディアがシリウスの下の弟たちの母親代わりを務める
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