準備が整ったと判断したシリウスは、「冥界の門」を開けるように門番に願い出た。 扉が開いていく。 予想通り、黒い靄が真っ暗な扉の向こうからこちら側に侵蝕してきた。 けれど靄は空中で光り輝くある一定の場所以上には広がらない。ジュリアスが放つ高度な光浄化魔法によって抑えられているからだ。(ナディアの魂を……) シリウスは魔力を通してナディアのイメージを門番に送っていた。 こちら側の者が生き返らせる魂を探そうとして門の中に入っても、即死するだけなので、あちら側の者である門番に探してもらい、「冥界の門」の近くまで連れてきてもらうしかない。「ぐっ…… うぅっ……」 いきなり額に激痛が走って、シリウスはナディアの亡骸を抱えたままその場に膝をついた。額を片手で抑えたその指の先の隙間から、ポタポタと血がしたたり落ちてくる。「シー!」「「シー兄さん!」」 ジュリアスとノエルとカイン――魔力切れによる気絶と眠りの魔法で目を覚まさないセシル以外のこの場にいるブラッドレイ兄弟たち――が声を上げた。「心配ない…… 予定通りだ……」 シリウスが片手を離した額には、「冥界の門」の上部にある巨大な目玉と同じ、縦長の虹彩をもつ「第三の眼」が現れていた。 その眼こそが、次代の門番である証だ。「第三の眼」自体は異形であることを表しているようで不気味だか、眼を閉じてしまえば皮膚に薄い線が一本入っているように見えるだけで、それほど目立たないし、どうしても気になるなら魔法で隠すこともできるから、見た目が多少変わるくらいはシリウスにとっては些細なことだった。「第三の眼」が出現した激痛は一時のみだった。シリウスはこの世由来のものではない特別な眼で、「冥界の門」の入口付近を見つめた。「ナディア……」 シリウスはその姿を見て涙ぐんだ。「第三の眼」か、もしくは「真眼」でなければわからないだろうが、幽霊のように全身が透き通って見えるナディアの魂が、黒い靄の中から浮かび上がるようにして現れた。 シリウスは魔法で「第三の眼」が視ている風景をそのままジュリアスに視せて、ナディアの魂の通り道だけ光魔法の壁を解いてもらった。 ふわふわと漂うようにこちらに向かって降りてくるナディアの姿は、天使そのものだった。『シリウス……』 ナディアの魂がシリウスに呼びかけている声も聞こえた。「ナデ
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