それからの1週間、純一は血眼になって優里を探し回った。そして優里が行きそうな場所はすべて訪れた。よく行っていた本屋や美術館, 彼女の両親が遺した古い家, そして二人が恋人時代によく通った小さなカフェも……しかし、どこにも優里の姿はなかった。彼女はまるで、忽然と姿を消したかのように、何の手がかりも残されていなかった。会社では、優里のオフィスはすでに空っぽになっていた。彼女の秘書の葵が辞表を提出しに来たとき、その目には隠そうともしない軽蔑の色が浮かんでいた。「社長から、葛城社長と野口さんが末永くお幸せになるようにとのことです」そう言う葵の声は氷のように冷たかった。「それから、社長は保有する株式をすべて原田社長に譲渡されました。これが譲渡契約書です。サインをお願いします」原田社長は、優里の会社のもう一人の創業者であり、彼女の長年の友人でもあった。純一は株式譲渡契約書を見つめながら、息が詰まるような感覚に襲われた。優里は、自分との関係をすべて断ち切るつもりなのだ。会社という最後の繋がりさえも残さずに。「いつ原田社長に連絡を?」彼はかすれた声で尋ねた。「先週、社長が退院された日です」葵は少し間を置いて付け加えた。「サインをされたのは、病院の病室でした。手術を終えたばかりで、顔を真っ青にして、手が震えてペンもろくに握れないご様子でした」そう言われ純一は胸を鷲掴みにされたような感覚に襲われた。あの日、優里を退院させようと迎えに行った時のことを思い出す。彼女は自分に笑いかけ、体を支えてくれと頼んだのに……まさか、そのすべてが演技だったなんて。優里はとっくに全てを計画していて、自分の前で最後の芝居を演じきったのだ。「葛城社長、ご用がなければこれで失礼します」葵はそう言って踵を返した。「待ってくれ」純一は彼女を呼び止めた。「安藤さん、優里は……何か言っていなかったか?俺のこととか、何か……」葵は振り返り、複雑な表情で純一を見つめた。「社長は、『一度割れてしまったものは、もう二度と元には戻らない』と一言だけ言いました」それから、彼女が出て行くとドアが静かに閉まった。葵は行ってしまった。そして純一は、だだっ広いオフィスに一人だけ取り残されてしまったのだ。すると彼は今までに感じたことのない、がらんとし
Read more