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第10話

作者: 南のさかな
一方、その頃江見市の、鏡湖のほとりにある本屋では、優里は入荷したばかりの美術書を、優雅な手つきで丁寧に整理していた。

シンプルなベージュのニットにリネンのパンツ姿。長い髪は後ろでゆるくお団子にまとめられ、すっきりとした横顔をのぞかせているのだった。

純一のもとを去って1ヶ月。優里は4キロも痩せてしまったけれど、その瞳はこれまでになく澄んでいた。

「優里ちゃん、ちょっと休んだら?」

オーナーの石川文恵(いしかわ ふみえ)が温かいお茶を持ってきてくれた。「午前中、ずっと働きづめだったでしょ」

優里はお茶を受け取ると、にっこり笑ってお礼を言った。

この本屋は、優里が偶然見つけた場所だった。

あの日、鏡湖のあたりを散歩していたら急な雨に降られて、このお店に駆け込んだのがきっかけだ。

文恵はとても気さくな人で、仕事を探していると話すと、ちょうど人手が足りていないからと誘ってくれたのだ。

「うち、お給料はあまり高くないけど、静かでいいわよ」

その時、文恵はこう言った。「本が好きで、静かな場所がいいなら、一度やってみない?」

優里はここの雰囲気が気に入り、働くことにした。

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