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第111話

Auteur: 相沢美咲
柚葉は大人しく翔平に寄り添い、読み聞かせを待つ。

一冊読み終える。

すると、柚葉がふと言った。「パパ」

翔平は柚葉を見つめ、優しい眼差しで、「どうしたんだ?」と声をかける。

柚葉は翔平を見上げて、「どうして柚葉はママがいないの?」と聞いた。

翔平は柚葉の頬を優しく撫でたが、その瞳の奥には複雑な色が宿っていた。

「友達のみんな、ママがいるよ?今日も病院で、他の子がママに付き添ってもらってるのを見たよ。どうして柚葉にはいないの?」そう言って、柚葉の目がみるみる赤くなった。

幼い頃の柚葉にとって「ママ」という言葉はどこか遠い存在で、大好きなパパと祖父母に囲まれていれば、自分にママがいるかどうかは気にならなかった。

しかし幼稚園に通い、毎日を過ごすうちに「ママ」という存在はどんどん大きな意味を持つようになっていた。

友達が彼らのママに甘える姿を見て、自分の中にもある寂しさが膨らんでいったのだ。どうして自分にはママがいないのか?そう思うと、やりきれない気持ちで胸がいっぱいになる。

今日だって病院で、ママに手を握られている子を見かけたばかりだ。それなのに自分にはパパしかいない。
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